第3章 AM4:41 287話
ローライが来た。1954年のモデル。シャッターに少し問題がある。これはオーバーホールが必要だ。機械式カメラはこの繰り返しで100年以上使う事が可能になる。電気式は通常20年で修理も不可能。僕のカメラで一番古いのは1890年代だ。今でも動く。買った時と同じ金額がかかるが、これがめぐり合わせ。僕が業者に依頼すれば必ずいい写真が撮れるカメラに生まれ変わる.........
「おはようござんす。よしろうはん... コーヒー淹れますさかい」
「うん。ありがとう」
「そのカメラええな。クラシックやな。どうや調子は?」
「とうぜんだけど、2か所異常があるわ」
「買ったばかりやのにな」
「いやいや、この年式でこのコンディション奇跡やで、レンズも傷ひとつない」
「そういうもんか? はいこーひー」
「不二子はんもいっしょに飲もうや、おいしいわ」
「へー。こたつあったけぇー」
「このカメラ、不二子思うに..直感やけど、よしろうはんがええ写真撮れそうな気がするえ。小さくてかわいい事」
「これは昔、写真家はローライ使わんと写真家やないと言われたほどのカメラや」
「ほー。そうそうたる写真家ばかりやなぁ、よしろうはん...あんさんもなまえ書いとき(笑)」
「興味あらへん」
あはは!えへへ!
ローライフレックスを愛用した写真家
リチャード・アヴェドン(Richard Avedon) ポートレートにローライフレックスを多用。腰位置ファインダーによる正面性と被写体の心理的解放が特徴。
ダイアン・アーバス(Diane Arbus) 初期〜中期にローライを使用。被写体と対峙しながらも視線が衝突しない距離感が、彼女の倫理と直結。
ロベール・ドアノー(Robert Doisneau) パリの市井を撮った人道主義写真。静かに人の中に溶け込む道具としてローライを愛用。
ヴィヴィアン・マイヤー(Vivian Maier) ストリート+セルフポートレート。ローライだからこそ成立した鏡像・反射・距離の美学。
ヘルムート・ニュートン(Helmut Newton) ファッション/ヌード。ローライのスクエアを大胆な構図に転用した異色例。
デイヴィッド・シーモア(Chim) マグナム創設メンバー。子どもや市民を撮る際の威圧感のなさが決定的。
カール・マイダンス(Carl Mydans) Life誌フォトジャーナリスト。戦場でもローライを使用した数少ない例。
ヴェルナー・ビショフ(Werner Bischof) 人道主義と構成美の両立。ローライの幾何学性と静謐さを最大限に活用。
細江英公 人物・舞踏・三島由紀夫。スクエア構図が生む密度の高い身体表現。
奈良原一高 「人間の土地」「王国」など初期に使用。ローライ的視点が、のちの思想的写真へ。
東松照明(初期) 後年は35mm中心だが、初期作品で中判を経験。見る位置と思考の距離に影響。
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