10年間続けた冬季湛水を見直す。
冬季湛水考 冬季湛水の主たる目的は、地下水の保全である。 したがって、稲作における肥料効果などのメリットは、それほど大きくない。 挙げられるのは、藁の分解が進むこと、雑草の発生を抑えられること、そして春先にシアノバクテリアによる窒素固定がわずかながら期待できることくらいである。 土壌は長期間にわたって還元状態に置かれる。そのため、かつて「寒田馬耕」として伝えられてきたように、落水して土を酸化させ、藁を鋤き込むことで土中に養分を生み出すという過程はない。 そこで、この冬は冬季湛水の期間を短くすることにした。 水中の藁は、土中の藁よりも分解が早いのではないか。そう考える一方で、水を流し続ければ、分解によって生じた養分も水とともに流出してしまうのではないかという疑問も湧いた。 実際、三か月も経てば、藁はかなり分解している。 ならば、その後は落水して土を乾かし、耕起する。 水生生物の保護については、アカガエルとヒキガエルを対象としている。昨年から、卵を別の棚田に移して繁殖を試み、無事に成功した。 広い田んぼで繁殖する、圧倒的な数のアカガエルには申し訳ない。しかし、別の棚田で繁殖が続いている以上、少なくとも種が途絶えることは避けられている。 冬季湛水も、ただ続ければよいというものではない。地下水の保全と水生生物の保護を前提に、田んぼの土と稲作にとって何が適切なのか、今年はその方法を見直す。