第3章 ぎおん齋藤 295話

「不二子はん、ちょっと京都行こか」

「へぇ。ええどすな。何か目的あるんどすか?」

「そら、あるに決まっとるやろ。
 白無垢、色打掛、引き振袖――選びに行こ思て」

「あらま」

「京都祇園の、ぎをん齋藤さんとこがええ言うて聞いたさかい、見に行こ」

「へぇ。そらもう喜んで」

「自家製仕上げの“京染織”らしいで。唯一無二やて(笑)」

「……そやけど、お金は大丈夫どすか?」

「うーん、だいじょばないから、
 軒下の隠し金庫から持ってきた(笑)」

「あらま。そないなん、ありましたんか?」

「まだあるで。山の大杉が三本あってな、
 その真ん中は、えらいことザクザク埋まっとるらしいわ」

「……分かり申した。
 そら五百万では済ましまへんえ」

「うちもまだ着物、ようけ持っとるさかい、それでええ。
 白無垢は借りたらよろし」

「そうか」

「ほな、色打掛と引き振袖、見に行こか」

「土曜の便、予約お願いできるか?
 そろそろ仕事の準備やし」

「へぇ。二人揃っては、久しぶりの京都。楽しみどす」

「式は、隣りの慈雲寺さんで決めとるさかい(笑)」

「そら安うて、よろしいこと(笑)」

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