第3章 ひとりで散歩 294話

「さんぽでも行こか。なんもないし。
 よしろうはん、遅くなる言うし」

川沿いを歩く、不二子。

いつも川ばっかり見て、何を見てはんのやろ。よしろうはん。
田んぼなんて、ぱっと見て終わりやのに。

「よし。見てみよか。川を……」

ほう。魚がおる。
そんで……カワニナやろ。あ、タニシもおるわ。

「へぇ……こんなん見てはるんか?」

あれ? クレソン生えとる。

「うん? なんやろ、あれ……」

川底できらきら光っとる。魚?

「ちょっと川上、歩いてみよか」

コンクリートの川。
せやけど、両岸には草が生えとる。

「へぇ……」

うん? なんやろ、あれ。
川が……赤いでぇ。

「あれ? 砂が光っとる。金か?
 ……そんなわけないか」

ふーん。
こんなん、見とるんやな。よしろうはん。

「あっ。きれいな鳥……なんやろ?」

え、まだ鷺おるし。
鴨? ……なんやろ。

「おもろいわ。よしろうはん。
 こんなん見てんのやなぁ……」

うふふ。

少し、分かった気がするえ。

「ふーん……帰ろ」

――わっ!!

夕日が、きれいや。

「なんて、すてきなの……」

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