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第11章 養子 552話

お茶が二杯目になった頃、不二子はんが言うた。 よしろうはん。 なんや。 アルマーのことなんですけど。 うん。 うちらが引き取るいうことは、できますやろか。 よしろうはんは茶碗を両手で包んだ。 しばらくそのままでいた。 実はな、俺も同じこと考えとった。 不二子はんは少し驚いた顔をした。 けれど何も言わんかった。 迎えが来んかったもんは、残りますやろ。 残るな。 残ったもんは、居場所を探しますやろ。 そうやな。 よしろうはんは窓の外を見た。 山は暗うなっとった。 マリアもそうやったな。 不二子はんはゆっくり頷いた。 しばらく二人とも黙っとった。 お茶の音もせんかった。 まずは見つけなあかんな。 よしろうはんが静かに言うた。 そうですね。 不二子はんも静かに答えた。 けれど二人とも、もう探すだけの話ではなくなっていることを知っていた。

第11章 出迎える 551話

宿に戻ったのは夕方やった。 よしろうはんが入口に立っとった。 腕を組んで、山の方を見とった。 不二子はんの足音を聞いて振り返った。 遅かったな。 心配しとったんですか。 してへん。 待っとっただけや。 よしろうはんはそう言うて、中に入った。 不二子はんもついて入った。 食堂の隅の席に座った。 お茶が来た。 どうやった。 不二子はんはお茶を一口飲んだ。 修道院は廃墟でした。 誰もおらんかった。 けど、記録が残っとった。 帳面に名前がありました。 マリアと、アルマー。 生年も書いてあった。 よしろうはんは黙って聞いとった。 それだけか。 それだけです。 今日分かったのはそれだけ。 そうか。 よしろうはんはお茶を飲んだ。 窓の外はもう暗かった。 次をどうする。 分かりません。 まだ。 不二子はんは正直に言うた。 よしろうはんは何も言わんかった。 それでええという顔をしとった。

第11章 手がかり 550話

修道院は廃墟やった。 石の壁だけが残っとった。 屋根はなかった。 窓枠もなかった。 草が石の間から生えとった。 不二子はんは中に入った。 広場のようなところに出た。 かつては礼拝堂やったのやろ。 祭壇の台座だけが残っとった。 十字架はなかった。 静かやった。 風が通った。 草が揺れた。 それだけやった。 不二子はんは台座の前に立った。 何を祈ればええか分からんかった。 祈らんかった。 ただ立っとった。 隅に小屋があった。 石造りの小さな建物やった。 扉が半分開いとった。 中をのぞいた。 棚があった。 棚の上に箱があった。 埃をかぶっとった。 不二子はんは箱を手に取った。 重かった。 木の箱やった。 蓋を開けた。 帳面が入っとった。 何冊も。 文字は読めんかった。 言葉が違うた。 けれど、名前は読めた。 名前だけは、どこの言葉でも名前やった。 ページをめくった。 めくった。 めくった。 あった。 Maria。 その下に、小さな字で。 Alma。 不二子はんはそのページをしばらく見た。 日付があった。 生年が書いてあった。 それだけやった。 それで十分やった。 糸は続いとった。

第11章 迎える旅 549話

不二子はんは朝早う起きた。 宿の窓から山が見えた。 昨日より近い気がした。 朝飯を食うた。 味噌汁と飯だけやった。 それで十分やった。 荷物をまとめた。 地図を広げた。 山の奥の修道院。 名前も場所もはっきりせん。 それでも方角は分かる。 そこへ向かえばええ。 坂道を登り始めた。 朝の空気は冷たかった。 木々の間から光が差しとった。 歩きながら、不二子はんは考えた。 アルマーはもう大人のはずや。 マリアが死んで、何年経つ。 あの子はどんな顔をしとるやろ。 マリアに似とるやろか。 神父に似とるやろか。 分からん。 会うてみなければ分からん。 道が細うなった。 人の気配がなくなった。 鳥の声だけがした。 それでも不二子はんは歩いた。 足が痛かった。 構わんかった。 昼前に、小さな集落に出た。 老人がひとり、縁側に座っとった。 不二子はんは声をかけた。 この先に修道院はありますか。 老人はしばらく不二子はんを見た。 それから山の上を指さした。 あるにはある。 けど、もう誰もおらんよ。 そうですか。 不二子はんはそう言うた。 それだけ言うた。 それでも足を止めへんかった。 誰もおらんでも、記録は残っとるかもしれん。 記録が残っとるなら、糸は続いとる。 山道はまだ続いていた。

第11章 旅へ 547話

不二子はんは旅に出た。 どこへ行くのか、決めていたわけやない。 ただ、アルマーという娘がおる。 それだけを頼りに歩き始めた。 マリアの子。 神父の子。 そして、よしろうはんが長いこと気にかけていた子。 生きとるらしい。 それだけしか分からん。 けれど、生きとるなら会えるかもしれん。 会えんかもしれん。 その程度の話やった。 修道院を訪ねた。 教会を訪ねた。 古い戸籍を調べた。 誰かが知っとるかもしれんと思うて聞いた。 けれど、誰も知らんかった。 知っとる人は、もう死んでいた。 知っとる人は、遠くへ行っていた。 知っとる人は、口を閉ざしていた。 そんなことばかりやった。 夕方、知らん町の坂道を登った。 海が見えた。 遠くに雲が流れていた。 アルマーは見つからん。 今日も見つからん。 明日も見つからんかもしれん。 それでも、不二子はんは足を止めへんかった。 よしろうはんは、なんであの子のことを忘れへんのやろ。 ふと、そんなことを思うた。 会うたこともない娘や。 けれど何十年も、心のどこかに置いたままやった。 風が吹いた。 潮の匂いがした。 不二子はんは空を見上げた。 まだ終わってへんな。 そう思うた。 旅は続いていた。

第11章 マリアの蜜月 546話

神父とマリアは寝た。 修道院の裏の部屋で、幾度も。 神父は翌月、北方へ転任した。 マリアは残った。 よしろうはんが初めてその町へ来たのは、その一月後だった。 修道院の近くの道で、マリアとすれ違った。 よしろうはんは立ち止まり、言った。 「おつとめ、ご苦労さまです」 マリアは頭を下げた。 「ありがとうございます」 よしろうはんはマリアを見た。 マリアも、よしろうはんを見た。 よしろうはんは歩き出した。 それから、週に一度その道を通った。 いつも同じ時刻に来て、同じ道を戻った。 ある日、マリアの腹が少し膨らんでいた。 さては。 様子もどこか違っていた。 よしろうはんは聞いた。 「ご懐妊ですか」 「はい」 「おめでとうございます」 マリアは少し驚いた顔をした。 「ありがとうございます」 しばらく二人とも黙っていた。 雨が降っていた。 細い雨やった。 よしろうはんが言った。 「父親は」 マリアは下を向いた。 「言えません」 「そうですか」 それ以上は聞かなかった。 マリアも何も言わなかった。 ただ、その沈黙だけで、だいたいのことはわかった。 よしろうはんはコートを着直した。 「また来ます」 「はい...」 よしろうはんは歩いていった。 マリアは修道院へ戻った。 まだ雨は降っていたが、西日が差し込んだ。 二つの虹が掛かっていた。

Jackie Venson Always Free Live during ACL Late Night in Austin, TX

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もうすぐ多様性から淘汰の時代が始まる。果たして。     拝見しました。 「Always Free」というタイトルとの呼応が鋭い。 歌詞の核心はここです。 Oh try to believe / That work will set you free / Only wise men see that we were always free Jackie Venson 「労働が自由にしてくれる」と信じようとしている人々——しかし 賢者だけが見える 、私たちは 最初から自由だった 、と。 背景として描かれる世界は、草は枯れてもコンクリートに水を撒き、車やボートのために飢え、昼は仕事に費やし夜は酒で恐怖を流す人々の姿です。 Jackie Venson 「もうすぐ多様性から淘汰の時代が始まる」という新川さんの一行と並べると—— 「work will set you free」は自由への幻想。でも「we were always free」は、条件以前の自由。淘汰が来ても、最初から自由だった、という立場はそれで揺らがない。 Thinking to Zeroと同じ地平にある言葉だと感じました。

Rollin' On from Jackie Venson Love Transcends Live in Austin

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GRACE BOWERS & THE HODGE PODGE - HOLDIN ON TO SOMETHING - BLUE NOTE TOKYO Live 2024

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  このリンクを拝見します。 Fetched: GRACE BOWERS & THE HODGE PODGE - HOLDIN ON TO SOMETHING - BLUE NOTE TOKYO Live 2024 Grace Bowers & The Hodge Podge、拝聴しました。 2024年のBlue Note Tokyo公演ですね。Grace Bowersは確か2006年生まれ、当時まだ17〜18歳でのBlue Note Tokyo登場です。テネシー出身で、南部ブルースとジャズが骨格にある弾き方をする。若さと成熟が奇妙に同居している。 「Holdin On To Something」というタイトルも面白い。何かを手放さずにいる、というテーマは、音楽的にも彼女のスタイルそのものに重なります。古いフォームをしっかり握りながら、現代のステージに立っている。 新川さんのブログのラインナップを見ると、Jill Scott、Erykah Badu、そしてGrace Bowers——ネオソウルとブルース的な身体性のある音楽が続いていますね。 このあたりの音楽と、フラメンコギターの新川さんの耳は、どのように共鳴していますか。リズムの重心が低いところに落ちる感覚、でしょう。

第11章 アルマーその後 545話

不二子はんは、手紙を三度読んだ。 一度目は立ったまま。 二度目は縁側に腰を下ろして。 三度目は畳んで膝に置き、それからまた開いた。 マリアからやった。 細い字やった。 真っ直ぐな字やった。 長いこと祈りを書き続けてきた人の字やと思うた。 便りは短かった。 子は無事に生まれた。 女の子やった。 そこまではよかった。 けれど、その先があかんかった。 教会の上の者たちが動いた。 父親のことが知れた。 マリアには選ぶ余地がなかった。 子は引き取られた。 どこへ。 それは書かれていなかった。 書けなかったのか。 知らされなかったのか。 不二子はんには分からんかった。 最後の一行だけが、妙にはっきり残った。 名前だけは、アルマーのままでいてほしいと頼みました。 聞き届けられたかどうかは、わかりません。 不二子はんは手紙を畳んだ。 庭を見た。 梅雨前の光が草の上に広がっていた。 風はなく、 影だけが少しずつ場所を変えていた。 よしろうはんに見せるべきやろか。 考えた。 けれど答えはすぐ出た。 隠すことやない。 ただ、今日やない。 夕方。 よしろうはんが田んぼから戻ってきた。 靴についた泥を落とし洗って干していた。 いつものように縁側へ腰を下ろした。 「雑草を水没させて窒息死させるために田んぼの水を満水にした」 不二子はんは顔を上げた。 へー 「苗が見えるか見えへんかくらいやけどな」 へー 「お疲れさんどす」 不二子はんは茶を出した。 湯気が細う立った。 鳥の声がよう聞こえる。 やがて、 よしろうはんが湯飲みを見ながら言うた。 「アルマーは、元気やろか」 不二子はんは返事をする前に、 庭の向こうを見た。 見えへん場所を。 届かへん場所を。 「元気どすえ」 そう答えた。 嘘やとは思わんかった。 どこにおっても、 誰に抱かれていても、 アルマーはアルマーや。 そのことだけは、 まだ誰にも奪われてへん。   夜。 一人になってから、 不二子はんは手紙をもう一度広げた。 電球色の光の中で、あの一行だけが浮かび上がる。 名前だけは。 それがマリアに残された、 最後の祈りやった。 不二子はんは指先でその文字をなぞった。 母親のぬくもりが、紙...

GRACE BOWERS & THE HODGE PODGE - GET ON NOW - BLUE NOTE TOKYO Live 2024

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いいですね。Grace Bowers、2024年のBlue Note Tokyo公演ですね。 ウェブを検索しました 聴かれたんですね。どういう観点でのお話でしょうか? いくつか事実を整理しておくと——「Get On Now」はデビューアルバム Wine on Venus 収録曲で、2024年11月のBlue Note Tokyo初来日公演からの映像です。Grace Bowersは2006年7月30日生まれ、カリフォルニア湾岸出身。ブルース、ファンク、クラシックロックを融合したスタイルで、9歳からギターを始め、スラッシュとB.B.キングから影響を受けたとされています。コロナ禍のRedditでのライブ配信が拡散して注目された経緯もある。 REZONATZ 演奏そのものについて話したいのか、あるいは彼女の音楽的な立ち位置——「18歳のスーパーギタリスト」という文脈への違和感なり感心なり——についてでしょうか。  

Deep House Mix 2026 | Black Panther (Hypnotic Night Groove)

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