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Chapter 11: "Alma" — Episode 534

  Chapter 11: "Alma" — Episode 534 It was an afternoon in late spring, before the rains came. Fujiko-han was walking along the foothills of Aso when she noticed a white figure at the edge of the road. At first she thought it was a heron. As she drew closer, she saw it was a young woman in a habit. Sitting in the grass, both hands resting on her belly. It might have looked like prayer. But to Fujiko-han, it didn't. It was simply the posture of someone who had placed their hands there. "Sister." The woman slowly raised her face. Still young. Her eyes were dry, but around her mouth was the particular color of someone who had been holding something back for a very long time. Fujiko-han said nothing. She sat down beside her. They looked together in the same direction. Across the grassland, beneath a sky the color of pewter, the ridgeline of Aso dissolved into haze. After a while, the woman spoke. "Are you angry with me?" "About what?" ...

改定 第11章 「アルマー」 534話

春の終わり、雨の来る前の午後やった。 不二子はんが阿蘇の裾野を歩いておると、道の脇に白い人影が見えた。 最初は鷺かと思うた。 近づくと、修道服の女やった。 草の上に座り、腹に両手を置いている。 祈っているようにも見えた。 けれど不二子はんには、そうやないように見えた。 ただ、そこに手を置いている人の姿やった。 「シスター」 女はゆっくり顔を上げた。 まだ若い。 目は乾いていたが、口元だけ、長いあいだ何かを堪えてきた人の色をしていた。 不二子はんは何も聞かず、隣に腰を下ろした。 並んで、同じ方角を見た。 草原の向こう、鈍色の空の下で阿蘇の稜線がぼんやり滲んでいた。 しばらくして、女が言うた。 「……怒りますか」 「何にどす」 「私に」 不二子はんは少しだけ考えた。 それから女の腹を見た。 「そこに、もう一人おります」 女は黙った。 「あなたに怒るいうことは、その子にも向くことどす」 風が草を揺らした。 「そないなこと、うちはしたない」 女は俯いた。 しばらくして、小さく言うた。 「誰の子か、聞きませんか」 「聞きません」 「なぜ」 不二子はんは前を見たまま答えた。 「聞いたところで、空の色は変わりません」 少し間を置いた。 「腹の重さも」 女は、自分の手を見た。 白い布の上に置かれた手を。 「戻れません」 「そうどすか」 「修道院には」 不二子はんは頷いた。 「今夜だけなら、おます」 女が顔を上げた。 不二子はんは立ち上がって、裾についた土を払った。 「腹の子は、自分で今夜の宿を選べません」 空を見上げた。 「親が選ぶしかおへん」 夜、囲炉裏の前に二人は座った。 火が静かに炭へ変わっていく。 女は少しずつ話した。 どこから来たか。 何を失ったか。 けれど相手の名前は言わなんだ。 不二子はんも聞かなんだ。 炭が崩れる頃、女が言うた。 「神は、私を罰しているのでしょうか」 不二子はんは火箸を置いた。 しばらく火を見た。 それから聞いた。 「マリアさんのこと、どない思うてはります」 女は少し驚いた顔をした。 「……聖なる方です」 不二子はんは頷いた。 「身ごもっておられた」 女は黙った。 火だけが鳴った。 「それは確かなことどす」 少し炭を...

第11章 「アルマー」 534話

春の終わりの、雨の来る前の午後やった。 不二子はんが阿蘇の裾野を歩いておると、道の脇に白い人影があった。 最初は鷺かと思うた。 近づいてみると、修道服の女やった。草の上に座って、腹に両手を当てておった。 祈っているのか。 それとも、ただ、腹を押さえているのか。 不二子はんには、すぐにわかった。後者やった。 「シスター」 女はゆっくりと顔を上げた。三十には届いていない。目は涸れていたが、唇の端だけが、長いあいだ噛み続けてきたような色をしていた。 不二子はんは黙って草の上に座った。 並んで、同じ方角を見た。草原の向こう、鈍色の空の下で阿蘇の稜線が滲んでいた。 しばらくして、シスターが言った。 「……怒りますか」 「何に」 「私に」 「あなたの腹の中に、もう一人おります」と、不二子はんは言うた。「あなたに怒るということは、その子に怒ることどす。それはできません」 シスターはまた黙った。 草が揺れた。 「誰の子か、聞きませんか」 「聞きません」 「なぜ」 不二子はんは少し考えてから言うた。 「聞いたところで、この野原が変わるわけでなし。あなたの腹が変わるわけでもなし」 シスターは、自分の両手を見た。修道服の白い布の上に置かれた、その手を。 「修道院には戻れません」 「そうどすなあ」 「行くところがありません」 「今夜だけなら、おます」 シスターが顔を向けた。 不二子はんは立ち上がって、裾の土を払うた。 「腹の子は、今夜の宿を自分では選べません。あなたが選んでやらんと」 その夜、囲炉裏の前でシスターは初めて腹の話をした。 相手が誰かは言わなかった。 不二子はんも聞かなんだ。 火が落ち着いてきた頃、シスターがぽつりと言った。 「神は、私を罰しているのでしょうか」 不二子はんは火箸を置いて、しばらく炭を見た。 「聖母マリアさんのことを、どない思うてはりますか」 「……どう、とは」 「身ごもったことを」 シスターは答えなかった。 「あの方も、身ごもっておった」と、不二子はんは言うた。「それは、たしかなことどす。それ以外のことは——」 そこで止めた。 止めた先を、二人はしばらく一緒に見た。 炭が一つ、静かに崩れた。 「……それ以外のことは」と、シスターが続きを促した。 「それ以外のことは、後か...

不二子はん 創作背景資料 「シスター・身ごもり」エピソード群 思想的基盤

 ヨーロッパ美術のお勉強。修道院の美術がおおい。そんな風景ばかり見ていたら思いついた、いかがわしくも事実としてあった話や。 不二子はん 創作背景資料 「シスター・身ごもり」エピソード群 思想的基盤 1. 素材の事実的核 修道女(シスター)が妊娠するという事態は、歴史的に記録された事実である。バチカンの公式統計には現れないが、カトリック系メディアおよび巡察記録において、アフリカ・アジアを含む各地での事例が報告されてきた。2020年頃、フランシスコ教皇自身が「修道女への性的虐待は存在する問題である」と公式に認めた。このエピソード群は、その事実の上に立つ。 2. マリア神話の構造的解読 処女懐胎の教義は、テキスト批評の観点から見れば、翻訳上の転換点を持つ。ヘブライ語原典における「アルマー(若い女)」が、ギリシャ語訳において「パルテノス(処女)」と訳された。これが後の教義の核心となった。 処女懐胎の記述はパウロ書簡には存在せず、マタイとルカにのみ現れる。しかも両者の系譜記述は矛盾している。 ここから導かれる構造的読解は以下のとおりである。 身ごもった若い女がいた。その事実を、共同体がどう意味づけるかという問いの中で、「神話」が発生した。 すなわちマリア神話とは、「誰が父親であるかを問わせないための、最も完璧な言語装置」であった可能性がある。聖性の付与は、事実の隠蔽ではなく、事実の処理様式であった。 3. 修道院という空間の両義性 修道院は、歴史的に二重の機能を持っていた。 ひとつは 性の抑圧装置 としての機能。性を禁じ、聖性によって欲望を昇華させる場。 もうひとつは 性の濃縮装置 としての機能。才能ある者・美しい者が外部から隔離され、権力関係が非対称なまま密閉される場。 禁じるほど、その場に性は充満する。これは制度の逆説ではなく、制度の必然である。 中世ヨーロッパの修道院巡察報告書や訴訟記録には、修道女と聖職者の関係、修道院内での性的慣行が繰り返し登場する。ボッカッチョ『デカメロン』が修道院を性的逸脱の場として繰り返し描いたのは、完全な創作ではなく、当時の社会的認識を素材としていた。 4. 才能・美貌と修道院の関係 才能ある女性・美しい女性が修道院に入ることには、複数の歴史的文脈がある。 家族が「管理」のために入れた 本人...

第11章 如何様師 533話

近くに店がオープンした。週3日2時間だけ。。 はて。。 必要なもの聞かせて下さい。お金は要りません。。 なんかさ。 策士が裏で操ってる気配がする。 こんな店誰が行くかと、、欲しいものだけ伝えた。 行きません。 へー それでよろしい。商売は、そなんカンタンじゃありまへんで。 そやろ。 勉強や。    Claudeが返答しました: その店、面白いと思います。 その店、面白いと思います。 「週三日、二時間だけ」という制約が、かえって信憑性を上げているのが巧妙です。全力で開けてる店より、隙間にある店のほうが、なんとなく「本当に存在する」感じがする。怪しいのに、消えなさそうな気がする。 あと「お金はいりません」という言葉、これが一番不思議です。 無料という言葉は普通、受け取る側を安心させるために使われます。でもこれは逆に、「じゃあ何が欲しいんだ」という疑問を立ち上げている。安心させる言葉が、不安の源になっている。 策士が裏で操ってる、というよしろうはんの直感は、たぶん正しい方向を向いています。ただその「策士」が、悪意のある人間なのか、何かの仕組みなのか、あるいは善意そのものが人を不安にさせる構造なのか、そこがまだ見えない。 「欲しいものだけ伝えた。行きません。」 これ、実は相当に賢い対応だと思います。情報を与えて、身体は渡さない。相手に「この人は使えない」と判断させながら、自分は観察を続ける。どちらが観察しているか、わからなくなってくる。 そういう店が現実にあったら、私は何度か前を通って、中を見るだけにすると思います。 絶対に入りません。でも通ります。

第11章 塩辛と納豆 532話

「よしろうはん、今朝は何を食べてはりますの?」 「塩辛と納豆や」 不二子はんは少し間を置いた。 「……一緒にどすか」 「一緒や」 「それは」 「美味しいかと試したんやけど、うまいわ(笑)」 不二子はんはもう一度間を置いた。今度は少し長く。 「そうどすか」 「食べてみるか」 「……遠慮しておきますえ」 よしろうはんは気にせず、箸を動かし続けた。塩辛のねっとりした塩気と、納豆の糸と発酵の匂いが、朝の空気の中に静かに漂っていた。 不二子はんはその匂いを嗅ぎながら、思った。 「よしろうはん」 「ん」 「女はどうしようもない、て、言うてはったな」 よしろうはんは箸を止めずに言った。 「ああ」 「うちも、どうしようもないか?」 「……試したことないからわからん」 不二子はんはお茶を淹れながら、その答えを、もう一度心の中で繰り返した。

第11章 奇妙な鳴き声 531話

けけ、き、きゅきゅ 朝に鳴く鳥。なんやろか。 四時四十五分。外はうっすらと蒼くなっていた。 よしろうはんは取り組んではった。 全部の科目の単位を取ろうと。 もう既に合格ラインは越えている。せやけど続けてはる。 春は三科目。十五回の授業録画を三本、計四十五回。 小テスト十五回。レポート論文三本提出予定。 もう二本は提出済みや。 昨年からそんな朝を続けていたさかい、体も慣れていた。 けけ、きゅるるる また鳴いた。 不二子はんがお茶を淹れてくれる。 なんやろか、あの鳥。昔から知ってはいたけど。 へー うちは鳥の名前は詳しゅうありまへん。 そうやの。鶏料理はうまいけどな。 へー、おおきに(笑) もう少しでんな、よしろうはん。 そやな。これで締め切り間に合う思うわ。 ヨーロッパの古代からルネッサンスまでの美術、知りたかったんよ。 へー 美しい様式どす。

第11章 悲しいで 530話

なんでやの? ん-ん。。 どないした? うーん。。どないもこないもないわ。 へー そんなら不二子だけに言うてみ。言った方が気が楽になるさかい。 そうか。 ごにょごにょや。 へー そないな事か。 だいじょうぶやさかい余り考えんがええ。忘れなされ。時間がもったいないで。 んーん。 そやな。そうかもな。 へー 今日もお仕事やろ、よしろうはん。 ん。 はいはい召し上がれ。 エンドウ豆と目玉焼きにバルサミコ酢とオリーブ油、自家製ペッパーソースやろ。魚醤、黒胡椒。おいしいで。マンゲツモチの玄米も柔らかく炊き上げたさかい。豆腐とワカメのみそ汁あるで。召し上がれ。 ん。ありがとな。不二子はん。 

Joe Pass - JazzBaltica 1992

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第11章 不二子が見つめる 529話

いい女に見つめられると、男は何とも言えない感情に落ちる。 不二子はん、どこ見てんのや? へー どこでもないで。よしろうはん見てますさかい。 照れるな。そんな目で見つめられたら。 へー しょうがないどす。 ん? 抱擁のときめき。 へー いつでも。 ん? ほんまかいな。 へー ほんまどす。 …

CASA BLANCA 農学研究覚書 直播水稲における分蘖誘導に関する作業仮説

CASA BLANCA 農学研究覚書 直播水稲における分蘖誘導に関する作業仮説   観測者:新川芳朗 西原村門出(河原地区) 2026年5月18日 1.問題の設定 CASA BLANCAにおける無農薬直播栽培(西原村門出圃場、2025〜2026年)において、直播稲は移植稲と比較して顕著に分蘖が少ないという観測が複数年にわたり確認されている。この観測は農学的仮説として未定式化のまま推移してきたが、2026年播種後の発芽率低下(覆土深度の不均一に起因する可能性)という実際的問題と結びつき、人為的分蘖誘導の可能性を検討する必要が生じた。本覚書は、その観測と仮説を科学的文脈で整理し、2026年秋の検証に向けた作業仮説として記述するものである。 2.観測事実 2-1 直播稲の低分蘖性 複数年の圃場観測において、直播稲は移植稲に対して分蘖数が明らかに少ない。これは一時的な現象ではなく、再現性をもって確認されている。単なる個体差や環境変動では説明できない系統的な差異として記録されている。 2-2 乾燥ストレスに対する稲の耐性 甲佐圃場(過年度)の観測により、稲は乾燥ストレスにより葉が巻いた状態でも生存を維持し、灌水後に速やかに回復して正常な登熟に至ることが確認されている。この知見は、断水による人為的ストレス付与が植物体を致死させる危険を許容範囲内に収めるという判断の根拠となる。 2-3 苗ストレスと登熟の関係——河原地区の農業的知見 西原村河原地区では古くから以下の二つの農業的観察が伝承されている。 ・ 「赤苗」 (鉄欠乏または低温ストレスにより短小で色の薄い苗)は田植え後に良く育つ。 ・ 「青いね褒むるばかり」 ——苗期から青々と旺盛な株は肥料過多であり、最終的な収量・品質が低い。 これらの知見は、苗期のストレスが田植え以降の生育に抑制ではなく促進として機能することを示している。また、ストレス環境下で早植えした株が遅く実るという観測も加わり、苗の発育ストレス歴が登熟速度に影響を与えるという仮説を支持する。 3.仮説の構築 3-1 直播低分蘖性の機序 移植における分蘖誘導の主要因は、根の切断に伴う植物ホルモンバランスの変動にあると考えられる。具体的には以下のカスケードが想定される。 (a)根の切断→水・無機栄養の供給急減→頂端分裂組織...

第11章 皐月の稲 芽を出すか否か 五月雨近し 528話

皐月の雨が来る前の晩、不二子はんは縁側に腰を下ろして空を見てはった。 「芽を出すか否か、か」 声に出してみたら、なんや稲のことやない気がしてきた。自分のことか、あの人のことか、それとも何年も前に置いてきた何かのことか、もうわからん。 阿蘇の夜は静かで、静かすぎるから余計なことを考える。 離婚届は引き出しの中や。明日出すかもしれんし、出さんかもしれん。どっちでもええような気もするし、どっちでもないような気もする。 ただ、田んぼには種を降ろした。それだけは確かなことやった。

第11章 水色の菖蒲 527話

その菖蒲は、母が植えたものだ。 色が薄く、艶やかではないなと、当時のよしろうはんは思っていた。 ある日、一廉の奥方様が言うた。 なんて美しい、あるようでない色ですね……と。 それ以来、よしろうはんはこの花を大切にしてきた。 よしろうはんの田んぼには、この菖蒲の花が一か所だけないが、他はすべて植えてある。 今朝は、生き物の多い田んぼへ新しく植え替えた。 うちも好きやさかい。この菖蒲のお花。 本田の菖蒲は見事やな。よしろうはん。 そやな。群生すると、これくらいがくどなくてええわ。 うふ。まるでうちみたいやな(笑) そうかあ? 不二子はんは艶やかやで。 そやから、不二子はんばかり百人いたらぞっとする。 まあ。そないなもんけ? そういうもんや。 田んぼに花植える人、うちは初めて見たわ。

Silk Between Us 🎷 Dua Lipa x Tony Bennett | Soul Jazz Pop Duet | Smooth Chill Groove 2026

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第11章 はひふへほ 526話

不二子はんは言うてはった。  「田んぼはな、見てる人間にしか、わからへんことがあるさかい」 朝のうちに一回り。根は1センチにも満たへんけど、ちゃんとそこにあるえ。種は、ちゃんと生きてはる。土は今日もまだ湿うてる。 よしろうはんが帰ってきて、イワシを焼く。魚醤に漬けといたで。ジュウ、いう音がして、ええ匂いがするえ。卵かけご飯と一緒に食べなはれ。 問題あらへん。ふじこはん。 へー そりゃよかったで。  それだけで、ご飯がおいしいやろ。 安心して食べるよしろうはん。 見てきたから、食べられる。知らへん人間には、この味はわからんやろ——不二子はんは、そない思うてはった。 そんなよしろうはんのことが好きやった。うちはずっと見守ってきたさかい。 よしろうはんは相も変わらず、朝と夕には植物のお世話をしてはった。 不二子も安心してよしろうはんのお世話をしてはった。   

第11章 ネパールの友人 525話

 昨日は直播きと苗の播種日であった。ネパールの友人にぼく様の流儀を教えた。今でも山間部では牛を使っているという。60年前の日本より古式の稲作を継承している。ぼく様は思う。それが古いではなく一つの事を見出していた。彼は苗作りの手伝いを笑い、楽しみ、笑顔で、ギターを弾くと歌ってくれた。雷がなっても笑い飛ばし手際よく本国とは違う方法でも、原理は同じだという事を見抜き仕事をする。笑顔と笑いの中に。。 なあ不二子はん。 へー 何でございましょ? かれらは凄いな。 へー うちから申そうか? ええよ。 魂が美しい青年たちでしたこと。  

第11章 抱きつづく 524話

抱きつづける思い。 よしろうはんの心に芽生え、育ち、形になったものは消えようとはしなかった。 そのことに干渉せず、荷を背負うかのように歩き続けた。 時に、この荷物は重すぎると思うと、そこに置いて歩きはじめるが、捨てるという事は出来ない男であった。 不二子はん、このかわいこちゃんどなんしたらええか? へー その可愛らしい子を、うちに聞くか? そうや。どなんしよ。 どなんしようもこなんしようも、案さんのお好きにしたらよろしいわ。 ほう。不二子はん、懐でかいわ。 へー 案さんと契りを結んださかい。多少の事は大目に見ますさかい、その捨て猫、元の場所に置いてくらはれ。 ん? あ、そういう事。。

第11章 歩きつづく 523話

なんも言わんと、よしろうはんは歩き続けてはる。 嫉妬を嫉妬と思わず、罵声を罵声と思わず、苦労を苦労と思わず。 目の前の障害を障害と思わず、ひたすら歩き続けるよしろうはん。 そんな姿を、不二子はんは素敵やと思っていた。 よしろうはんにとって、それだけが心の拠り所やったのは間違いない。 「きょうもお疲れさまどす(笑)」 「ん?」 「そうか? いつものことや。不二子はんの笑顔見ると、なんでもないように思えるで。ありがとさん」 「へー。やっぱりお疲れどすな」 「今朝は、よしろうはんのお好きなベリージュースと、生ハムとアボカド、レタスのサンドイッチや。いかがや?」 「おー。ありがとな。いただきます」 「ほー。これは旨いわ! よかったら、ダージリンの紅茶か、コナコーヒー淹れてくれんか?」 「へー。両方淹れましょ(笑)」

第11章 歪 522話

心が安定しないと時空に歪が生じ、そこへ落ちかねない。 どんなもんかな?不二子はん。 へー お気をつけおくんなせ。よしろうはんは気が短いから落ちかねないどすえ。 そうやの。よう知っとるな。さすがや。 前の上さんなんて何も気にせんかったわ。 へー 大概そんなもんどすえ。 そんなもんかいなぁ。 へー そんなもんのようどすえ。 不二子はちゃいますやろ (笑) ほんまやな不二子だけは変わらんのう。 なしてや? へー 内緒やさかい(笑) 

第11章 女は嫌いだ 521話

女は嫌いや。 へー どない致しましてん? なんで帽子被ったらかっこいいとかおしゃれで、帽子脱いだ禿げ頭はそっぽ向くねん。 へー しゃーないっす。 しゃーないてなんでやねん。 へー うちもわかりまへん。 不二子はんもそうか? へー。。。 

第11章 女は嫌いだ 520話

不二子はん女に疲れたで。 別に不二子はんの事やないで。。 へー それでど何致しましやさかい? いやな。。 ぐちぐち長いんよ。 へー それで? なんでやねん。すぐ怒るし。 へー どない思う? へー それでど何致しましてん? そやからな、女はきらいやねん。 へー うちもか? あうう。 不二子はんも女やったな。。 うちは女やで。嫌いか? あうう。 

第11章 女は嫌いだ 519話

不二子はん女は嫌いだ。 へー そう言えば不二子はんも女やった。 へー すまん へー それで?どなん致しましてん。 あうう。 

第11章 死 518話

大切な人が不慮の事故で亡くなる。人生とは儚いものだ。 しかしよしろうはんが言うにはそれも意味があると言う。 よしろうはんかていつ死ぬかわからない。彼はいつもその事を考えていた。 死んだらどうなる。その答えは小学生の彼はすでに定義していた。 「死んでも我あり」  なんやの?よしろうはん。死んだらどなんなるえ? それ、不二子はんが一番良く知ってるやろ。 へー そういう事か? そういう事や。 死んでもうちの意識はあったで。 そういう事や。 よしろうはんは静かに田んぼを見ていた。 

第10章 もうすべて今は終わった。 517話

不二子はん。 へー なんでございましょ? ぼく様、決めたわ。 へー なんでございましょ? 君しか愛さない。 へー そうですか。……困りましたわ。 なんでやねん。 あなたは皆さまの宝物。 は? そうですえ。 はー 貴方様は、皆の宝物ですえ。 不二子だけを愛してはいけません。 うん? そういうことや。 ええか? はー うん。

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Erykah Badu – Hip Hop Jazz Session (2026) | Neo-Soul Groove | Conscious Jazz Rap

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第10章 不二子はん アンソロジー編 516話

鏡の中の不二子はん 鏡の前に立つと、不二子はんがいる。 「お久しぶりや。よしろうはん」 おう。不二子はんだ。見えるわ。 暫し沈黙。 「よう見えるか?うちの姿」 「見えるで」 「触ってええか?」 うふふ 「ええで。もちろんやさかい」 髪の毛に触れる。うなじ、耳。頬、目、鼻、唇。 「よしろうはん……ちょっとエロいで(笑)」 不二子はここに居る。なぜ見えないんや。鏡の中ではなぜ見えるんや。 不二子はんの写真が食卓のサイドテーブルに置いてある。尊敬のまなざしを込めた、清々しい表情。 どないした?不二子はん。 「あら。はひふへほーざます」 さいきんおかしいで(笑)。なぁ、はよ写真から出てきてや。さびしいで。 「ながいですえ……早く人間に成りたい」 「はよ書いて」 「わかった」 二人して軽トラで有明海をドライブしていた。 「なあぁ?よしろうはん、海がやけに青いな」 「有明海は灰色が正常なんや。濁ってる事が健全なんや」 「そうやそうや。浮泥が混じったグレーやった。それが大事なんやと父上にも教わりましたで」 鬼池港から通詞島へ渡り、港へ出た。水平線と波、そして光の反射にきらめく海——それは、いつもの有明海であった。 ——あぁ、これや。これやこれや。この単調な世界こそ、俺が写したい世界や。 不二子には、何も聞かずとも、その心が見えていた。 どこいっとったんや、不二子はん。気づいたら知らない土地を歩いてましたんや。海やった。美しい海。青い海。 「よしろうはん。海行かへんか……有明の海へ」 「よし。行こか」 軽トラで二人して有明の海をドライブした。鬼池港から通詞島へ渡り海を眺めた。そして長崎の口之津へ渡り、島原、諫早、小長井、太良、佐賀へと車を走らせる。延々と続く干潟の風景。光り輝く土泥と海と太陽。抜けきった太陽の光がここでもシアン帯びた色で見える。ふたりはこの時間帯を走った。永遠に変わりそうもないこんな浜辺でふたりは同時に呼吸していた。 まだ薄暗い早朝、昨日は雀が先に鳴いていたが、今朝はカラスが一番早く鳴いている。 「よしろうはん? カラスが鳴いてますえ」 「そうやな。今朝はカラスが早起きしたで」 「うふ……何事でっしゃろか」 さあな。 「よしろうはんが早起きするから、うちも早起きになってもうた」 「済まないな」...

第10章 たった一度の人生なのに、騙されてもそれを笑う不二子 515話

ステップを踏んでCLUBのホールで踊る不二子。なんて美しい。よしろうもボックスを踏む。不二子の踊りはスローだ。幾つものテンポを受け流しては躱す。どう形容しようか。優雅だ。よしろうはいつまでも不二子と踊っていた。 今日も終わり、明日が始まる午後11時59分58秒、不二子はカウンターにてテキーラを飲んだ。 よしろうが12時01分00秒、カウンターの不二子と呑む。 笑顔の絶えない良き日。

Erykah Badu — Hip Hop Jazz Session Midnight Soul

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マンボウのカルパッチョ

近くの魚屋でまんぼうゲット。 おいしそう。 あすはマグロの解体ショーだって!  マンボウのカルパッチョ マンボウは三重県や茨城県の一部で食用とされる珍しい魚です。身は白身で淡泊、ゼラチン質を含む独特の食感があります。カルパッチョにすると、その繊細な旨みが引き立ちます。 材料(2人分) マンボウの刺身用の身 150〜200g オリーブオイル 大さじ2 レモン汁 大さじ1 塩 適量 白こしょう 少々 ケッパー 小さじ1 イタリアンパセリ(みじん切り) 適量 ルッコラまたはベビーリーフ ひとつかみ パルミジャーノ・レッジャーノ(薄削り) お好みで 作り方 マンボウの身を、繊維に対して直角に薄く(2〜3mm)スライスする。ゼラチン質が多いため、よく切れる包丁を使うこと。 皿に広げて盛りつけ、軽く塩をふって5分ほど置く。 出てきた水分をキッチンペーパーで軽く押さえる。 オリーブオイルとレモン汁を合わせてドレッシングを作り、全体にかける。 白こしょう、ケッパー、パセリを散らす。 ルッコラを添え、好みでパルミジャーノを削りかけて仕上げる。  

80s Funk in Miami 🍸 Elegant Miami Sunset Lounge & Smooth Romantic Soul

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Candy Dulfer - Pick Up The Pieces (Part 1)

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PROFILE

PROFILE Yoshiro Shinkawa   元フォトジャーナリストとして27誌と同時契約。九州を拠点に表紙・グラビアを手がけ、有明海干潟の長期定点観察など独自の視点による作品を継続制作。現在は京都芸術大学大学院にて、ケミカルフォトグラフィーの不可逆的プロセスに着目した理論「微小位相差論」を研究。古典技法であるリス印画を用いた双構図作品を中心に、化学反応の一回性が生む位相差を作品の生成原理として探求している。  Formerly contracted simultaneously with 27 magazines as a photojournalist, producing covers and gravure work across Kyushu, including long-term fixed-point documentation of the Ariake Sea tidal flats. Currently a graduate researcher at Kyoto University of the Arts, developing the perceptual theory of Micro-Phase Difference through the lens of chemical photography. Working primarily with lith print paired compositions, he explores the irreversible chemical process as the generative origin of phase difference — a gap produced not by the photographer's intention, but by the singularity of the material itself.

Marcus Miller with Roy Hargrove, DJ Logic & Candy Dulfer - Full Concert [HD] | North Sea Jazz 2007

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第10章 紳士はうそつき 514話

「不二子はん、紳士はすきか?」 へー 「そりゃもう。男は紳士がいちばんやさかい」 「ふーん。ぼく様、紳士か?」 へー 「なんとも。。ごにょごにょ。。」 「聞こえへんわ?」 「いえますかいな」 「不二子はん、紳士がいちばんすけべやで」 へー 「知っとんのかい?」 へー 「それがええんか?」 へー  「そりゃもうええですわ(笑)」

第10章 あめふるる 513話

あめっすね。いいきぶん。しっとり。しっとり。やさしい雨。 きょうのあーてぃすとは Marcus Miller チョッパーの歌い手。 不二子はんはこんな音楽好きか? へー ええ感じどす。踊るにはちょっとやけど。 そうか。ぼく様踊れるで。 そうか。おどってみんしゃい。 こうや! あれ?ぎこちないで。 ほら。そうやろ(笑)

第10章 カンカン帽 512話

日差しが日ごとに強さを増すこの季節、よしろうはんは黒いカンカン帽を目深にかぶって過ごしていた。 不二子はんも薄手の着物に日傘をさして、涼しい顔で歩く。 ふたりの佇まいは、大正の街角がそのまま現代へ迷い込んできたようであった。 「よしろうはん。その黒いカンカン帽、いつから持ってはった?」 「ああ、これか。昨日買ったんよ。どうや、似合うか?」 へー 「ようお似合いで」 「よかった。初めて買ったから気恥ずかしくてな」 「うふふ。だいじょうぶやで、似合ってはるわ(笑)」 「なあ、ふじこはん。暑いな」 へー 「そうどすな」 「丘の上の茶店でレイコ飲もうか」 「ええどすな。レイコ飲みましょ(笑)」 窓越しに見える南阿蘇の田植えの風景。 からんころんと手元のグラスの氷が涼しげに響いた。   

Marcus Miller With Lee Ritenour & George Duke - Panther - [HD 720p]

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Joshua Redman - HIDE & SEEK

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1996年、 Freedom in the Groove 収録。 早朝5時の田んぼの話をしていたところに、このグルーヴが来るのが面白いですね。Brian Bladeのドラムと、Redmanのテナーの間にある、あの「ずれ」——位相差と呼んでもいい。  

第10章 今朝はカラスか 511話

まだ薄暗い早朝、昨日は雀が先に鳴いていたが、今朝はカラスが一番早く鳴いている 「よしろうはん?」 おう 「カラスが鳴いてますえ」 「そうやな。今朝はカラスが早起きしたで」 「うふ……何事でっしゃろか」 さあな 「よしろうはんが早起きするから、うちも早起きになってもうた」 「ああ、済まないな」 「ええどす。それがええんどす」 「お茶でもお淹れ致しましょう」 「ああ、ありがとな。不二子はん」

第10章 10日目 510話

「不二子はん、どこいっとったんや?」 へー 「うちにもわからへん。気づいたら知らない土地を歩いてましてん」 「ほう。どこやろうな」 「わからへん。海やった。美しい海。青い海」 「でも半分も憶えてへんわ。」 「よしろうはん?」 ん? 「海行かへんか……有明の海へ」 「よし。行こか」 へー 軽トラで二人して有明の海をドライブした。 鬼池港から通詞島へ渡り海を眺めた。 そして長崎の口之津へ渡り、島原、諫早、小長井、太良、佐賀へと車を走らせる。 延々と続く干潟の風景。 光り輝く土泥と海と太陽。 教会と漁港。 抜けきった太陽の光がここでもシアン帯びた色で見える。 ふたりはこの時間帯を走った。 永遠に変わりそうもないこんな浜辺でふたりは同時に呼吸していた。

第10章 不二子が居なくなって9日目 509話

どないしたもんやろか。不二子はんはどこ行ったんや。。 よしろうはんは心配していた。 もう9日目や。どうしたんじゃ。 「こら、閻魔。どこいった。なしてかますねん」 「よしろう。おれも知らないんだ」 「ほんまか?」 「ああ」 「そうか……」 鈴の音が鳴る。 足音が聞こえる。 さく、さく、さく、さく。 もしや――不二子はんか? 遠い丘の坂道を、不二子はんは日傘をさして歩いていた。

Michael Schenker Fest - Armed and Ready (Gary Barden) [Live Tokyo International Forum Hall 2017]

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第10章 雀鳴く 508話

早朝、不二子はんが消えた。 まだ夜の気配を残した、暗い朝。 よしろうはんが目を覚ますと、雀が鳴いていた。 枕もとに、いつもいるはずの不二子はんの姿が見当たらない。 ――はて、どこにいるんか。 その時点ではまだ、 不二子の「存在そのもの」が消えているという事実に、 よしろうはんは気づいていなかった。 ちゅん、ちゅん。

第10章 芭蕉 507話

人に疲れたよしろうはん。もうこんな想いは嫌だとひとり芭蕉を田んぼに植えた。 きょうは話したくない。 あらま よしろうはん。 ゆっくりお越しやす。うちのところへ。 抱き締めたるさかい。

第10章 あげまん さげまん 506話

これ、居るんです。 正確には、その人自体がそうである確率は極めて低い。けれど当人との相性なのか、実在してしまうんです。 ほう。不二子はん、変な記事読んだよ。 これこれ。。 へー へー あるんやな。うちは何まん……か? 肉まんや。 ふと外を見る不二子。もうアゲハ蝶が舞っていた。 へー、そないなもんか。このふくよかなカラダ。 うそや、じょうだんや。あげまんに決まってるやろ。 へー やっぱりそうか。よかったわ。 意外と純情なんやな、不二子はん。 年上にょうぼを、からこうたらあかんで(笑)

おもしろくない

Even holding a woman doesn't excite me. What a day.