動かないと道はひらけない。当然だ。 よしろうはん。少し身軽になろうと、踊りのステップや肩と腰の動き、手の使い方をチェックする。Funk & Soulの曲を流しながら鏡の前で身体を動かす。 静かな動きのようでいて、身体の中では少しずつ何かが変わっていく。考えているだけでは進まない。動けば、身体も心も、次の一歩を見つけてくれる。 不二子はんは、湯呑みを両手で包みながら、その背中を見ていた。 へー 「案さん、かなり踊れるやん」 よしろうはんの身体は、音を追いかけない。 音が来る前に、もうそこへいる。 肩がほどけ、腰が流れ、指先まで音楽が通り抜けていく。 若いころに覚えた技やない。 何度も人生をくぐり抜けた身体だけが知っている、余白のリズムや。 不二子はんは、そっと笑う。 「人は動けんようになるんやない。動かんようになるだけなんやで」 踊りは見せるためやない。 心にたまった重みを、一歩ずつ床へ返していくこと。 「案さんええ感じやで」 その姿を見ながら、不二子はんは小さくつぶやいた。 「やっぱり案さんは、動いてるときが一番、案さんらしいわ」 ふふ 「飽きひんおとこやこと。案さんは。 また人生、変えはるわ。きっと」