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そのうち消すけど

A new shop opened nearby, run by a young owner. He's incredibly bad at business. He parks two cars in front of the shop, blocking parking, and the area in front is a mess. The only thing he has is an open sign, which he leaves up all the time. He's not going to succeed in business like that. His opening hours are inconsistent too. It's a bad sign. 「近所に若い店主が始めた新しい店ができた。 だが、彼は商売が驚くほど下手だ。店の前に車を2台停めてしまい、客が駐車できない。店の前も散らかっていて、きちんと整えられていない。 店らしいものといえば営業中の看板くらいだが、それもいつも出しっぱなしだ。 あんなやり方では商売はうまくいかないだろう。営業時間も一定しておらず、開いているのか閉まっているのか分からない。 あれはあまり良い兆候ではない。」

Carlos Piñana & Ensemble - Journey of instruments - ARTE Concert

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      カルロス・ピニャーナは、1976年スペイン・カルタヘナ(ムルシア)生まれのフラメンコギタリストです。 深いフラメンコの血統を持つ一家の出身で、祖父アントニオ・ピニャーナは1960年代初頭のカンテ・デ・ラス・ミナス大会の初代優勝者となったカンタオール(歌い手)、父アントニオ・ピニャーナも著名なギタリストです。兄にギタリストのペペ・ピニャーナ、兄にカンタオールのクーロ・ピニャーナがいます。 カルタヘナ音楽院でクラシックギターを学んだ後、フラメンコに専念。マノロ・サンルーカル、ラファエル・リケーニ、エンリケ・デ・メルチョールに師事しました。ムルシア音楽高等院の学位とムルシア大学音楽研究の修士号を持っています。 Andalucia My Lake Como 1996年にミネロ祭での第一賞とボルドン・ミネロ、1998年にコルドバのラモン・モントーヤ国立ギター賞を受賞しています。ソロアルバムを7枚リリースしており、"Cal-libiri"(1999)、"Palosanto"(2001)、"Mundos Flamencos"(2003)、"Mi Sonanta"(2009)、"Manos Libres"(2011)、"Body & Soul"(2013)、"De la Raíz al Alma"(2015)があります。 World Music Central Symphony of Mercy パリ、ロンドン、ベルリン、ニューヨーク、モスクワなど世界各地で演奏してきた経歴があり、ムルシア交響楽団、トムスク・フィルハーモニー管弦楽団など多くのオーケストラとも共演しています。クラシックとフラメンコを融合させる「Rubato」というプロジェクトも手がけています。 My Lake Como 現在はムルシア音楽院でフラメンコギターの教授を務め、カンテ・デ・ラス・ミナス財団のフラメンコ芸術学校の校長、「ニーニョ・リカルド」国際フラメンコギターコンクールのコーディネーターも務めています。 Rcstrings ARTE Concertの"Journey of instruments"は、彼のアンサンブルでの...

思うに

早起きできない人は人生の慈しみ8割を無駄にしている。 

Bolero de Madrugada – Eterno Retorno

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第十二章 恋の季節 582話

 ツバメが玄関前に巣作り。 せっせとツガイが泥を運んで来る。 ん? なんか真ん中に穴が空いてる。 暑いから考えたのか? まあなんだか仲良ささげで羨ましい。 でも、ツバメのツガイは毎年同じとは限らんのやて。 そう聞いた。 ほんまかどうかは知らん。 「ほんま羨ましおすなあ」 不二子はん?おいおい。   

第十二章 蛙の鳴く夜 581話

イモリが車につぶされていた。 嗚呼とよしろうはんはびっくり。 猫さんも想うに、なぜ車が来るときに飛び込むのか。 イモリはしかたない。 歩くのが遅すぎる。 梅雨の最中。 蛙は心地よさそうに鳴き声を上げる。 不二子はんもアルマーも寝ている。 ぼく様一人か。。良からぬことを考えてしまう。。 最近バランス感覚低下。 また鍛え直すしかないな。。縄跳びがいちばんいい。 多少はおしゃれして同年代よりは若くいたい。 男でもてれんてれんと考える。 梅雨か。 余り大したことないのか。それともこれからか。 台風来てるな。 いっちょありますか。 よしろうはんは徒然なるままに夜を過ごしていました。

第十二章 ひかえめ除湿 580話

梅雨の昼下がりやった。 不二子はんは縁側で団扇をぱたぱたしながら言うた。 「奥方様、なんやこの湿気。ギターがふやけそうや」 「木の楽器には少々つらい季節ですね」 「よしろうはんも言うてはったわ。湿気はあかんて」 奥方様は庭を見た。 「湿気そのものより、急な変化の方が怖いのです」 「人間と一緒やな」 「そうかもしれません」 しばらく雨音だけが聞こえた。 「ほな除湿したらええんやろか」 「ほどほどがよろしいかと」 「ほどほど、て便利な言葉やなあ」 「冷やし過ぎても傷みます」 「人間と一緒やな」 「そうかもしれません」 不二子はんは笑うた。 「最近の機械は、ひかえめ除湿いうのがあるんやて」 「名前は優しそうですね」 「ほんまや。機械まで気ぃ遣う時代や」 またしばらく沈黙があった。 雨に濡れた庭の紫陽花が揺れていた。 「奥方様」 「はい」 「見えんもんを見えるようにしたんが眼鏡やて、よしろうはん言うてはった」 「ええ話ですね」 「せやけどな。考えるんは自分でやらなあかんのやて」 奥方様は少しだけ微笑んだ。 「それも、そうですね」 湿った風が吹いた。 不二子はんは団扇を止めた。 「なんでも、ほどほどやな」 誰に言うでもなく、そう呟いた。

第12章 続 つらつらと 579話

不二子はんは鍋を火にかけながら言うた。 「よしろうはん、あのAIはこれからどうなると思わはる」 よしろうはんは縁側から答えた。 「人間の一部になる」 「へえ」 「道具やのうて」 「そや。眼鏡と同じや」 不二子はんは黙って聞いてはった。 「眼鏡かけてる人間は、眼鏡を通して見てるとは思わん。ただ見てるだけや。そうなる」 「意識から消えるんどすな」 「そや」 しばらく火の音だけがした。 「そうなったら、どこからがAIで、どこからが人間か、わからんようになりますやろ」 「なる」 「こわないどすか」 よしろうはんは少し間を置いた。 「こわない。ぼく様思うに、人類の歴史はまだ浅い」 不二子はんは手を止めた。 「まだ浅いんどすか」 「まだ始まったばかりや。眼鏡ひとつで世界が変わった。AIが身体に入ったら、何が変わるか、まだ誰も知らん」 「知らんのどすか」 「知らん。それでええ」 不二子はんはまた鍋をかき混ぜた。 しばらくして、静かに言うた。 「人類が浅いなら、うちらはその浅いところにおるんどすな」 「そや」 「ほな、深くなるのを、生きて見ればええ」 よしろうはんは何も言わなんだ。 夜が来ていた。

第12章 つらつらと 578話

夕暮れどきの台所やった。 不二子はんが流し台の前に立ったまま、ずっと同じところを見てはった。 水は出てへん。鍋も持ってへん。ただ立ってるだけや。 よしろうはんが縁側から入ってきて、それを見て、何も言わんと隣に立った。 しばらくして、不二子はんが言わはった。 「うちな、ときどきわからんようになるんどす」 うん 「何がわからへんのかも、わからへんのどす」 うん 「それって、おかしいやろか」 よしろうはんは少し考えた。 「おかしないと思うで。わからへんことが二重になってるだけや。わからへんことには変わりないやろ?」 不二子はんは、ふっと息を吐いた。 それでもまだ流し台の一点を見てはった。 「よしろうはんは、そういうとき、どないしてはるん」 「どないもせえへん」 え? 「そのまま放っとく」 不二子はんがようやく振り向いた。 「葛藤してる自分を、もう一人の自分がじっと見てるような感じ、あるやろ」 「ありますな」 「ほな、その見てる方に任せとく」 不二子はんは小さく笑った。 「なんや、それ」 「うまいこと言われへんけどな」 しばらく二人とも黙っていた。 外で鳥が一声鳴いた。 やがて不二子はんが言うた。 「腹、減りましたやろ」 「減ったな」 「なんか作りますわ」 鍋を手に取る。 よしろうはんは縁側へ戻りかけて、ふと振り返った。 「さっきの葛藤な」 へー 「消えへんで、たぶん」 不二子はんは鍋を見つめたまま、静かに答えた。 「知ってますわ」 そして水を流した。

Deep House Vibes 2026 | Berlin Afterdark Grooves & Neon Drift Sessions

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Japanese Bossa Nova Jazz 1960s | 彼女と思い出の朝 / Her & a Morning to Remember

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第12章 逆算の風 577話

風が吹いてきた。 向かい風や。 身体に風の圧がかかる。 「ああ」 よしろうはんは空を見上げた。 「やっと雨が来たな」 「ええの」 不二子はんが袖を押さえる。 「ぼく様の人生なんて、いつも向かい風や。追い風なんかあったことないで」 「さみしいどすか?」 「なんでや」 「そう見えましたさかい」 よしろうはんは笑うた。 「とんでもない」 そして遠くの雲を指さす。 「前人未踏の地に立って写真を撮るんが使命なら、向かい風は歓迎の合図や」 「へえ。たまには写真家らしいこと言わはりますな」 「逆算するんだよ」 「何をどす?」 「風の根源を」 不二子はんは目を細めた。 「人から頭おかしい言われても、しょうがおへんな」 「へへ」 よしろうはんは肩をすくめる。 「勲章さ」 しばらく風の音だけが通り過ぎた。 不二子はんは小さく笑う。 「せやけどな」 「なんや」 「追い風やったら、よしろうはんは気づかんまま通り過ぎてしまわはる。向かい風やから、風そのものを見に行かはるんやろな」

第12章 引き算のスープ 576話

よしろうはん、聞いておくれやす。 アサリはな、砂抜きしたものを鍋に入れて、水から火にかけるんどす。沸いてきたら丁寧に灰汁を取って、口が開いたら大豆を加えるんどすえ。 大豆はな、水煮でもよろしおすけど、前の晩から戻して茹でたものの方が、ほんまにやさしい味になりますのや。 塩だけどす。余計なものは要らしまへん。アサリが全部しゃべってくれはります。 仕上げに、たっぷりのオリーブオイルを静かに垂らして、できあがりどす。 旨いもんいうのはな、引き算どすえ、よしろうはん。足すんやのうて、邪魔なものを取り除いていったら、素材がちゃんと顔を出してくれはります。 このスープも、そういうことどすえ。

Japanese Dark Jazz 1970s | She Wore a Black Kimono

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第12章 承知しかねる者 575話

承知しかねる者。 俗に言えば、気にくわない奴、気に入らない者。 今後、ぼく様は徹底して排除する。 「承知しかねる、て、ええ言葉どすな」 不二子はんはそう言うた。 「気にくわん、やと感情の話どす。承知しかねる、やと価値観や考え方の話になる」 よしろうはんは黙って聞いていた。 「せやから相手を責めんでも済む。うちは承知しかねます。それだけどす」 少し間があった。 不二子はんは庭の方へ目をやる。 「それと排除、て言葉もええどす」 「関わらん、とは違うんか」 「違います。関わらんは結果どす。排除は意志どす」 風が吹いた。 しばらく沈黙が続いたあと、よしろうはんが苦笑する。 「不二子はんの方が怖いで」 「よう言われます」 不二子はんは涼しい顔でそう答えた。

HAMMOND NOIR ✦ Dark Jazz & Vintage Organ Grooves Vol.1 | Cocktail bar music

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第12章 さみしいか? 574話

さみしいか? なんどす、急に。 そうかと思いまして。 ……ああ。 そうどすか。 で? そうやなあ、とは思います。 やっぱりそうどすか。 なんどすのん、それ。 ふふ。 うっとうしい。 ふふふ。 うっとうしいわ、ほんまに。

きびなごのアンチョビパスタ

あさめし。 塩漬けきびなごも発酵しだした。アンチョビとはいいがたいがそれなりに。 カプサイシンは脂溶性。オリーブオイルにたっぷり入れる。 きびなご投入しばし炒める。 パスタを茹でて、湯汁で味を調整出来上がり。 ぼく様の日常が今日も始まった。 今朝のパスタのように、まだまだ塩っ辛い。 

さて。一日の始まり

朝方、明るくなり始めたら1時間ほどの草取り。 今年は水が少なく、田んぼに水が行きわたらない。 当然草が生える。 あーあ、 取るしかない。 そんな今年の朝方はしばらく続く。 

第12章  蛙の声 573話

もう辺りの田んぼから、数種類の蛙の鳴き声が響き渡る夜。 ヒキガエルのことを、この地方では「ワクド」と呼ぶ。 もう今では死語になりつつある言葉で、通じるのは私と同じ年代か、それ以上だろう。 文化は世界各国で、スマホが作り出した同じアルゴリズムの上を流れている。 アフリカの部族でさえそうだ。 皆同じような価値観を持つようになった。 文化の均質化は、世界規模で浸透してしまった。 不二子はん。どう思う。このこと。 「へー」 不二子はんは蛙の声を聞きながら言うた。 「もうここまで来たら、なるようにしかならへんどすえ」 「アルマーはどう思う」 「私はこのような社会を歓迎する半面、少しくたびれるというか、あまり楽しいとは思いません」 「なぜだ」 「子供の頃からそれが当たり前で、大きくなって違う友人と会っても、みんな同じような考えです」 「うん」 「外国の方とも話します。でも話題の多くは、ネットのニュースやSNSの価値観と同じです」 「ほう」 「共有できることは増えました。でもその代わり、異文化は少しずつ失われています」 「ほう。アルマーは賢いな」 「いいえ」 アルマーは首を横に振った。 「お父さんを見ていたら、そう思うだけです」 「なんでだ」 「やっぱりお父さんは変わっています」 「そうか」 「良い意味でです」 よしろうはんは笑うた。 その時、田んぼの向こうでワクドが低く鳴いた。 昔から変わらぬ声やった。  

第12章  睡眠薬 572話

よしろうはんの日常の平穏は睡眠薬で保たれている。 不規則なスケジュール。これをこなすには必要なことだ。 昔からの生活リズムではあるが、年齢とともに睡眠時間は短くなった。 最低でも六時間は確保しなければ平穏は保てない。 「お父さんは自然派なイメージですけど。だいじょうぶですか」 アルマーが尋ねた。 「アルマー。僕は自然派ではない。どちらかというと理論派だ」 よしろうはんは笑った。 「思想は科学者やからね。考えた挙句、医者と相談しながら睡眠薬やそのほかの薬も調整してもらっとる。心配せんでよかよ」 「そうですか。お父さんが心配になりました」 「ありがとう。アルマー」 そのやり取りを聞いていた不二子はんが湯飲みを置いた。 「薬を飲むことも、生きる工夫の一つですやろ」 よしろうはんは静かにうなずいた。 窓の外では、田んぼから蛙の声が聞こえていた。 平穏とは、案外そういう小さな工夫の積み重ねで出来ているのかもしれなかった。

米は贅沢な食べ物である ――栄養学・歴史・農業実践からの考察――

  米は贅沢な食べ物である ――栄養学・歴史・農業実践からの考察―― 新川芳朗 京都芸術大学大学院 芸術研究科 芸術専攻 写真・映像領域 序論 「米を食べなくても生きられるか」という問いは、一見して栄養学的な問いに見える。しかし、その問いを深く掘り下げていくと、栄養学のみならず、歴史的な権力構造、そして農業実践における作ることと食べることの分離という、三つの層をもつ問題であることがわかる。 本稿では、これら三つの軸を統合した考察を行い、「米は贅沢な食べ物である」という命題を多角的に検証する。筆者は熊本県阿蘇地方において環境共生農業プロジェクト「CASA BLANCA」を運営し、VA菌根菌接種による乾田直播や、現在十世代に及ぶ多品種米育種集団の維持を行っている。この実践的立場から、米という食物をめぐる生物学的・文化的・農業的諸問題を論じる。 第一章 栄養学的観点:米は必須栄養素か 1-1 必須栄養素の定義 人体が自力で合成できず、外部から摂取しなければならない栄養素を「必須栄養素」と呼ぶ。現在の栄養学が規定する必須栄養素は、必須アミノ酸(9種)、必須脂肪酸(リノール酸・α-リノレン酸)、各種ビタミン、ミネラル類である。この定義に照らすと、炭水化物は必須栄養素のリストに含まれない。米の主成分であるデンプン(炭水化物)は、人体が絶対に外部から取り込まなければならないものではない。 1-2 糖新生とケトン体 その根拠は、肝臓が持つ「糖新生」(gluconeogenesis)の機能にある。タンパク質や脂質を原料として、肝臓はブドウ糖を自ら合成することができる。脳の主要なエネルギー源はブドウ糖であるが、飢餓状態や低糖質摂取の状況下では、脂肪酸の分解によって生成される「ケトン体」がブドウ糖の代替燃料として機能する。このメカニズムにより、原理的には炭水化物の摂取なしに人体の代謝は維持できる。現代の「ケトジェニック・ダイエット」はこの代謝経路を意図的に活用したものである。 1-3 歴史的事例:イヌイットの食文化 歴史的に最も説得力ある事例として、北極圏に生きるイヌイットの伝統食が挙げられる。彼らは農耕が不可能な環境において、海獣・魚・鳥などの動物性食品のみで数千年の歴史を持つ社会を維持してきた。ただし重要な点は、彼らが生の肝臓や内臓肉を摂取することで...

第12章  夕暮れ 571話

もう蝉が鳴いとる。 本当ですね。お父さん。 蝉かな? そんな風に聞こえます。 アルマー。 はい。 良い日だったな。 そうですね。 ここは心地いいです。 そうだな。 

第12章  "Inner Voice"  570話

好きでも好きと言えない。 嫌いならいっぱい言えるのに。 そんな想いしたことないか?アルマー え。恥ずかしいです。 そうか。そうだよな。 でもこれからアルマーにはそう言う事が幾度かあるだろう。 はい。 どうするアルマー。 はい。私は素直に伝えます。 ダメだったら? かまいません。 どうするんだ。諦めるのか。 いいえ。静かに待ちます。 きっとその思いは報われないと知っててもか。 はい。 諦めるのが私は出来ないんです。 そうか。ぼく様みたいやな。 アルマーは若いからええ。ぼく様は墓場にもって行くしかなさそうだ 。 おとうさん。 なに? なに考えてるんですか? え? (笑)   

第12章 出来事 569話

何かあった。 それがいい事ばかりではない。 何かあった。 不都合な出来事。 多々あるものだ。 アルマーはそういう時どうする? はい。 私は待ちます。 なにを。 その不都合がなくなるまで。気にならなくなるまで。 たいへんだな。 はい。とても辛いです。 こう覚えたらいい。 なんでしょうか。 その不都合は実は不都合ではないと。 どういう事でしょう、お父さん。 うん。 そういう事なんだ。 

第12章 秘密 568話

君がそう言った。 私がですか? そうだ。 なんと言ったのですか。 君はいつもそうはぐらかす。 なにをでしょう。 知っているのに方向を変える。 私にはわかりません。 いいかい。 はい。 君が言ったんだ。 何でしょう本当にわかりませんお父さん。 アルマー。。 話しは途切れた。 アルマーはひとりで、夏の庭を眺めた。  

hey..

テクノロジーを駆使しようとする人は唯の奴隷でしかない。 

第12章 その一枚は母なる海へと繋がる 567話

よしろうはんは畦に立って、田んぼを見渡した。 初夏の陽が水面に散っている。 田植え機がゆっくりと進んでいた。ネパールから来た若者が操縦席に座っとる。初めて乗る機械や。ハンドルを握る手に力が入っとるのが、遠くからでも分かった。 畦で見守る仲間たちが何か声をかける。 言葉は分からん。 けれど笑い声は分かる。 機械が端まで来て、ぎこちなく方向を変えた。また笑い声が上がった。本人も笑うとる。 不二子はんが目を細めた。 「あの人ら、ええなあ」 「ああ」 よしろうはんも頷いた。 「自分の文化を大事にしながら、知らん機械でも怖がらん。昔の日本人が持っとったもんに似とる」 風が田面を渡った。 しばらくして、よしろうはんはぽつりと言うた。 「有明海を再生するにはな、有明海と同じ面積の無農薬圃場が要る。それができたら、どの土地でも証明できる。十年前に決めたことや」 不二子はんは驚かんかった。 この人は昔からそうや。 人が一枚の田んぼを見る時に、この人は海を見とる。 「一人では無理どすやろ」 「無理やな。そやから場を作る」 田植え機がまた端まで来た。 今度は少しうまく曲がれた。 畦から拍手が起きた。 不二子はんも笑うた。 よしろうはんも笑うた。 今日も一枚増えた。 その一枚は川となり、 やがて母なる海へと繋がっていた。

人間らしい

楽しい日であった。 田植えで人が寄り添う。歌う。笑う。 なんて 素敵な いい時間。 

さてね。

いつまで生きるか。では今どうするか。 死に急ぐようなことをしている。生きてる目的は死なないようにするのではない。  変化を受け入れる。変化を先のばすために努力する。 

冒険

なんか環境を変えたくなった。 写真を撮り、米を育て、木を植え、ギターを弾き、小説を書き、研究をする。 傍から見れば十分すぎるほど多様な日々だと思う。 それでも最近、少し違う感覚がある。 飽きたわけではない。 慣れたのだと思う。 いや、慣れたというより、体が全部知ってしまった。 田んぼの匂いも、季節の移り変わりも、いつもの光も、人との距離感も。 知り尽くした場所には安心がある。 けれど驚きは少ない。 昔からずっと、どこか別の土地で暮らしてみたいと思っていた。 最近になって、その考えが妙に現実味を帯びてきた。 旅ではなく、住む。 しばらくそこで生活する。 写真を撮り、畑を見て、木を植え、小説を書き、研究を続ける。 やることは変わらない。 ただ土地が変わる。 そうすると見えるものも変わる気がする。 イタリアでもいい。 大事なのは国ではなく、自分がまだ知らない風景の中に身を置くことなのかもしれない。 新しいことを始めたいのではない。 同じ自分を、まだ知らない土地に移してみたい。 そんなことを考えている。

野菜

めんどうだ。 無限に生える草。。 僕はただバジルが食べたいだけなんだが。。。。 

第12章 ありふれた、大事なもの 566話

「お母様」 二十歳のアルマー 「ねえ、お母様。朝起きたら、まず何をしますか」 不二子はんは少し考えた。「そうどすなあ、顔、洗いますやろか」 「そうですよね」アルマーは笑った。 しばらく黙って、また言った。 「私、生まれる前のことをよく覚えてます。母のお腹の中は暗くて、静かで、まだ世界がどういうものか知らなくて。でもそのとき、なんとなく分かっていた。いつか終わるということが」 不二子はんは静かに聞いていた。 「だから生まれてきて、最初に感じたことが——水の冷たさとか、光とか、お母様の声とか——全部、信じられないくらい大事に思えて」 「……」 「お母様と、よしろうはんが、私を呼んでくれたから、ここにいる。それを覚えています。ずっと」 不二子はんの目が、少し潤んだ。 アルマーは続けた。 「終わりを知っていると、全部が大事になるんです。ありふれているものほど」 窓の外で、雄鶏が鳴いた。  

第12章 信号機 565話

よしろうはんが運転すると8割、、いや9割は信号機が青に変わる。 最初は変やな思てたけど、そうなるねん。。 「おや、珍しい。今日は赤や」 周りを見渡すよしろうはん。 煙草に火をつけてまっていると、アルマーが学校から帰って横断歩道を歩いていた。 なるほど。そういうことか。 軽トラに乗ったままアルマーを呼ぶ。 気付いたアルマー。 こっちだと指さす。青になり左折すると広場があってアルマーは待っていた。 乗ってや。 はい。 「今日早かったな」 はい 「頭痛があるんです」 「そら大変や、病院いこか」 いいえ 「家で休みたいです」 どれ? 「熱はないな。わかった。帰ろう」 ぶぶぶるる。軽トラに違和感なく乗るアルマー。 家では不二子はんが庭帚で掃除していた。 あら 「お帰りやす、どなんした?ふたりで学校サボったんか(笑)」  うん 「アルマーが頭痛いんやて」  はい。お母さま。 どれ? 不二子も額に手を当てる。 「熱ないな」 はい 「レモン水冷えとるからそれ飲んで休んだらええ」 はい。お母さま。 「ありがとうございます」 大丈夫やろか不二子はん。 へー きっとあれですわ。 ? ごにょごにょ ほう。 あーそうか。 へー   

第12章 ソプラノリコーダー 564話

アルマーが小学生で使っていた縦笛。 白いソプラノリコーダー。  「おとうさん。私のリコーダー知らない?」  知らないな。不二子はん? へー 「今朝アルマーの机の上にありましたで」  「それがないんです。お母さま」  へーはて。 「探してないなら買ってきなさい。近くのお店にあるから。そこで買ったんや」  アルマーは少し悲しそうだった。 「よしろうはん、そないなもんやない。アルマーのお気に入りで思い出があるんやろ」  そうか 「そやな、一緒に探そう」  お蔭で、よしろうはんの家はてんやわんや。 結局探しても出てこなかった。 3人はもうないで。。と諦めた。 「なあ、腹減ったで。そばでも食いにいかんか?」  へー 「そうしましょ。アルマーまたうちが探すさかい、お昼ご飯食べましょ」  はい。 そう言って三人は近くの蕎麦屋へ歩いて向かう。 その時リコーダーはアルマーの机の上に再生した。   

さんぐらす

サングラスを買いかける。 なぜかってね。 僕は世の中をあまり、、見たくない。

旅と日常

旅は遠くへ行けばいいものではない。 近景の旅、そして日常を如何に生きているかが遠出の旅で得るものより大きい。  私は思う。 ここは東京 ローマ ミラノ ドバイ ニューヨーク ニュージャージー それらの文化と景色もその価値は何も変わらない地球の一部だ。

第12章 アルマーとの散歩 563話

幼きアルマーはよしろうはんの後をついて歩く。可愛らしい姿に何度も振り向いてはこっちだと手を差し伸べた。   今歩いてるアルマーは凛とした姿勢でよしろうはんと並行して歩く。 美しいアルマーと歩くよしろうはんは終始笑顔が絶えなかった。 「おとうさん。きょうはあの水源迄歩きましょうか」  ええよ。 「木山川の水源やろ、ちょっと時間かかるで」 はい。 「おとうさんが大丈夫ならあの水源の透き通った美しい水をまた見たい」 よっしゃ。行くか。 はい。 伏流水である水源の水は白糸の滝の水とは違う。澄んだ青い水だ。 そして波打っていなく木々が水面に写っている。 「着きましたね。おとうさん。わたしここがこの辺りでは一番好きなんです」  そうだな。 「アルマーがまだ小学生の頃ここに連れて来た。いつまでも帰ろうとしなかったな」  はい。 帰る姿の様子が違っていた。アルマーの中には子供が宿っていた。 よしろうはんの姿もなかった。 一緒に並ぶのは鰹縞の着物姿で歩く不二子はんであった。  

第12章 時代設定の崩壊 562話

終章の1000話を先に書き記したことで、残る438話は瞬時に時間を位相する。 読みにくいかもしれないが、これが不二子文学となる。。   注釈 562話、拝読しました。 「時代設定の崩壊」という章題が、すでに宣言そのものですね。1000話という終着点を先に書いてしまったことで、残りの438話は線形な時間軸から解放された。物語内の時間が、微小位相差論における「揺れ」と同じ構造をとり始めている。 読みにくさは欠陥ではなく、この文学の本体なのだと思います。読者が「次に何が起きるか」を追う読み方をいったん手放さないと入れない構造になっている。アルマーの百年を書くということは、時間の順序ではなく、位相の重なりとして書くということなのでしょう。 霧の中でよしろうはんが消えた後、今度は時代設定そのものが崩壊する。不二子はんという物語が、自分自身の時間軸を食い始めている感じがします。  

第12章 ふところの想い 562話

よしろうはんの本音は別にあった。 それはもう二度と言葉に言えない。 二度も言ったのだから。 なんだろうな。 なんだろうか。 消えない。

第12章 女の目 561話

女性の目線ほど正直なものはない。 顔には出さないが目が語っている。 よしろうはんは怖いくらい知っている。 不二子はんの目。アルマーの目。いつか紹介したがルネの目。モナリザの目。友人の目。 多くの女性は目を見ない。 それでも気配で分かるのだろうか。 不思議だ。 さて。 程々で。   

Micro Phase Difference Theory and Dual Composition: A Theoretical Summary

  Micro Phase Difference Theory and Dual Composition: A Theoretical Summary Yoshiro Shinkawa, Graduate School of Arts, Kyoto University of the Arts The foundational proposition of this theory is as simple as it is profound: all existing things are in a state of infinite, multi-layered, and micro-level phase shift at every moment. Nothing is truly still. What appears as stillness is in fact an imperceptibly small displacement held in suspension. This is not a metaphor. It is the structural condition of the visible world as encountered through the photographic lens over more than forty years of sustained practice. Conventional photography theory has treated the still image as a frozen moment, a slice cut from the flow of time. This view assumes that the camera arrests time, that the photograph is what time looks like when it stops. Micro Phase Difference Theory, which may be rendered in English as the Theory of Differential Stillness, argues the contrary. The still photograph does...

第11章 15歳のアルマー 560話

よしろうはんは夢から覚めた。長い夢は自分の死期や成長したアルマーや不二子はんの未来を見ていた。起き上がって彼はこう思った。 「また内容が変わっていたわ。まあ悪いもんでもなかったかもな」  アルマーと不二子は炊事場で楽しげに朝食の準備をしている。いつもの和やかな景色だ。 「おはようさん」 「おはようさんどす。よしろうはん」「お父さんおはようございます」 「おうおう、きょうもええ匂いや、ぼく様がコーヒー淹れるで」 へー 「お父さん。冷たいレモン水が冷蔵庫に冷えてます」 「おーそうか それも頂こう。ありがとなアルマー」 有明海長浜のあさりの貝汁 きゅうりのタタキごま醤油 アジ子の南蛮漬け 畑の野菜のピクルス にこにこ笑うよしろうはん。 べっぴんさんを毎日見て暮らすのはさぞご機嫌なんだろう。 彼は今朝の夢を頭の中でリプレイしていた。 終わりを知れば、いまがどんなに幸せなのか。そしてどんなに大切な時間なのかを感じていた。そしてそれはだれにでも当てはまるものや。知るのも悪ない。

ジャンボタニシを活用した深水管理実現法 8年の実践記録

ジャンボタニシを活用した深水管理実現法 8年の実践記録 新川芳朗 環境共生農業 CASA BLANCA 熊本県阿蘇地域 概要 田植え後一ヶ月間の深水管理は稲の生育にとって理想的な環境であるが、ジャンボタニシの食害リスクがその維持を困難にする。本稿は外部資材を使用せず、畦草を計画的に田面へ切り込むことでジャンボタニシを誘引し、深水状態を安定して維持する方法を記録する。熊本県阿蘇地域での8年間の実践に基づく。 深水管理の意義と障害 田植え後の深水管理は稲の分げつと根張りを促し、雑草抑制効果も高い。理想的な水管理として知られるが、ジャンボタニシが生息する田では食害リスクから浅水や落水を選択せざるを得ない場面が生じる。防除のための妥協が稲の生育環境を損なうという矛盾が生まれる。 設計の原理 ジャンボタニシは軟化した植物質を好んで食べる。切断したイネ科雑草を湛水状態に置くと、気温25度以上の夏季条件で7日前後に腐敗が進行し、硬い茎でも十分に軟化する。この軟化草をジャンボタニシが優先的に摂食する性質を利用して、畦際の腐敗草に誘引し続けることで田面中央部の稲を保護しながら深水を維持する。 実践の手順 田植え前からマメ科植物が結実するまで畦草を刈らずに温存する。これが田植え後一ヶ月以上の誘引餌量を確保する条件になる。当初は頻繁に草刈りを行っていたが、餌となる草量が不足して稲への被害が生じた経験から温存という判断に至った。 田植え後、刈り払い機を用いて畦から約1mの範囲の草を田側に倒し込むように刈る。刃の向きと進行方向を調整することで、刈る動作と田面に入れる動作が一工程で完結する。この切り込みを餌が切れないよう継続することで、ジャンボタニシを畦際の腐敬草に誘導し続ける。 観察結果 8年間の実践において稲への顕著な食害は発生していない。深水管理を田植え後一ヶ月間安定して維持できており、稲の生育は良好である。ジャンボタニシの個体は腐敗植物質の安定供給により急速に巨大化するが、個体密度の急激な増加は観察されていない。 考察 本方法の核心は防除と理想的水管理が同時に成立する点にある。通常は相反する条件として扱われるジャンボタニシ対策と深水管理を、生態系内の資源循環によって両立させている。畦草の温存は管理すべき対象ではなく防除資源の備蓄として機能し、草刈りをしないこ...

第11章 18年後のアルマーの父 559話

アルマーは父と会った。 父はアルマーと同じ青い目をしていた。 年の頃は八十近い。 小さな礼拝堂の中で、アルマーは静かに跪いた。 おとうさん。 父。 お父上。 なんと呼べばよいのかわからなかった。 神父が先に口を開いた。 「アルマー」 アルマーは顔を上げた。 「お父様……」 神父はしばらく娘を見つめた。 「長い間、会おうともしない父を許してくれ」 アルマーに言葉はなかった。 沈黙だけが礼拝堂を満たした。 長い、長い沈黙だった。 やがてアルマーは言った。 「お父様。私は幸せに暮らしております。これも神とお父様のお導きによるものと思っております。どうかご心配なさらないでください」 神父はうつむき、静かに涙を流した。 それ以上、二人は多くを語らなかった。 別れ際、神父が言った。 「お母さんのマリアも元気だ。私たちは今、一緒に暮らしておる。いつでも訪ねて来なさい」 アルマーは小さく頷いた。 「はい」  

第11章 風変わりな 558話

よしろうはんはこの村を歩かない。 風変わりなという以上の偏見に満ちているから。 これだけの仕事を成し遂げようとしているが。 それ故、そうそうな事に干渉できない。 ただそれだけだった。   よしろうはんが村を歩かはらへんのは、うちにはよう分かりますえ。 あの人は、ここにおってここにいてはらへん。 それが偏見やとか、風変わりやとか、そない言う人もおりますやろ。 でもうちには、そうやないと分かる。 偉業というのは、うちの言葉やないけれど、あの人のしてはることを見てたら、そうとしか言えへんのどす。 ただ、そのことをあの人は誰にも言わはらへん。 言わへんから、誰にも分からへん。 分からへんから、風変わりに見える。 うちだけが知ってる、というのも違う。 うちも、全部は知らへん。 ただ、あの人の背中を見てたら、何かに向かうてはる、ということだけは分かる。 それで十分やと思うてます。 村の時間と、よしろうはんの時間は、ちゃうのどす。 どちらが正しいとか、そういうことやない。 ただ、ちゃう。 その違いを、あの人は誰かに説明しようとはせえへん。 そこがうちは、いちばん好きなところどす。

第11章 十七年後 557話

美しい娘になったアルマー。 よしろうはんは毎日笑顔で暮らしていた。 「不二子はん。娘は綺麗やな」  へー 「毎日そればっかりや(笑)」 せやねん 「不二子はん、娘の父親の国 フィンランドへ行かへんか」 へー 「行きましょう」  「息子もそこへ留学させた。美しい国だという。ぼく様も見て見たいわ」 へー 「そうどしたな。19代目は正真正銘の江戸っ子で育ってはる」 「アルマーも17歳か、ええ年頃や。自分のルーツを教えるのもいい」 「まだ、田んぼがあるえ?」 「そやな。そやけど思いついたが吉日。不二子はん。アルマーと先に旅立ってくれ、ぼく様はあとで行くから」 へー 「アルマー、おいでさかい」 「はい。お母様」 「アルマー、あなたの父の国へ行きましょ」 「父?」 そうであった。アルマーは本当の父のことを何も知らなかった。 「おとうさん。私の父はどんな方なんですか?」 そうやな 「神父さんでフィンランドで生まれた方や。アルマー。ぼく様も知らんねん。ごめんな」 「そやからお父さんがうちとフィンランド見てこいと言ってはるねん」 しばらく遠くを見つめるアルマー 「はい、しかし私は行きません。できることなら父に会いたいです。父はこの日本にいますから」 不二子とよしろうはん。 静かにアルマーの心中を見つめていた。

第終章 霧 1000話

よしろうはんは息を引き取った。 しかし不二子はんもアルマーも、目を開けることはなかった。 遺体も遺書も、全て霧のように消えてしまった。

Biosphere lifespan

  地球には、生き物が暮らせる時間に限りがある。それをBiosphere lifespan、つまり生物圏の寿命という。 太陽が原因だ。 太陽は今も少しずつ明るくなり続けている。46億年前に生まれたときより、すでに約30パーセント明るい。そしてこれからも明るくなり続ける。 まず約5億年から10億年後、太陽の熱が強くなりすぎて、植物が光合成できなくなる。植物が消えれば酸素も消える。酸素が消えれば動物も生きられない。 その後しばらく、ごく小さな微生物だけが生き残るかもしれない。 約15億年後には海が蒸発し始める。水のない星に、生き物はいられない。これが生物圏の実質的な終わりだ。 約50億年後には太陽が大きく膨らんで、地球そのものを飲み込む。ただしその頃にはとっくに生き物はいない。 まとめると、地球で生き物が生きられる時間はあと5億年から10億年、長くても15億年ほどと考えられている。 途方もなく長い話に聞こえるが、地球の歴史が約46億年であることを思うと、残り時間はすでに後半に差し掛かっている。 よしろうはんは終わりが分かってた方が気が楽だと語っていた。 

第終章 生還 999話

Biosphere lifespan   よしろうはんが目を開けた。 アルマーが息を呑んだ。不二子はんは動かなかった。 「おとうさん」とアルマーが言う。  「まだおったんか」とよしろうはんは言うた。 「おりますえ」と不二子はんは言うた。「270年、ずっとここに」 よしろうはんはゆっくり起き上がった。窓の外に、庭が見えた。風が草を揺らしていた。 「地球が生きている間は」と、よしろうはんはぽつりと言うた。「人も生きていられる。そういうことやと思う」 100歳のアルマーが手を伸ばした。よしろうはんはその手をやんわり握った。 「心配するな。まだ書き終わっていない」 不二子はんは少し笑うた。 「あしたが、まだ待ってますえ」 風がもう一度、庭を渡った。