第11章 「続アルマー」 535話
霧の名残が、まだ草の低いところに残っている頃やった。 よしろうはんが言うた。 「不二子はん。先ほどの女子は、だれやったん」 へー 「知りませぬ」 少し間があって、よしろうはんが言うた。 「綺麗な子やったな」 不二子はんは返事をせなんだ。 「……そんな事しか見てなかったんか」 ん? よしろうはんは眉を寄せた。 へー 「お子を宿してはったやろ」 風が、草をなでていった。 よしろうはんは、その風の行く先を見るように言うた。 「そうなんか」 少し遅れて、 「知らなんだ」 不二子はんは遠くを見ていた。 しばらくして、よしろうはんが言うた。 「聖母マリアはんも、あんな感じの方やったんやないか」 へー 「なんで、よしろうはんが知ってはる」 「さあな」 霧の名残が、草の上をゆっくり流れた。 「元気やろか」 その声は、問いとも独り言ともつかなんだ。 不二子はんは少し間を置いて言うた。 「女子は、男みたいに弱うおへんどす」 よしろうはんは何か言いかけて、やめた。 不二子はんは草の先を見ていた。 白い修道服は、もう霧の向こうへ消えていた。