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🔥 Vintage Soul-Funk Grooves You’ve been Looking for | ep15 | Soul Funk Playlist
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第12章 すてっぷ ばい すてっぷ むーびんぐ あうと 606話
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動かないと道はひらけない。当然だ。 よしろうはん。少し身軽になろうと、踊りのステップや肩と腰の動き、手の使い方をチェックする。Funk & Soulの曲を流しながら鏡の前で身体を動かす。 静かな動きのようでいて、身体の中では少しずつ何かが変わっていく。考えているだけでは進まない。動けば、身体も心も、次の一歩を見つけてくれる。 不二子はんは、湯呑みを両手で包みながら、その背中を見ていた。 へー 「案さん、かなり踊れるやん」 よしろうはんの身体は、音を追いかけない。 音が来る前に、もうそこへいる。 肩がほどけ、腰が流れ、指先まで音楽が通り抜けていく。 若いころに覚えた技やない。 何度も人生をくぐり抜けた身体だけが知っている、余白のリズムや。 不二子はんは、そっと笑う。 「人は動けんようになるんやない。動かんようになるだけなんやで」 踊りは見せるためやない。 心にたまった重みを、一歩ずつ床へ返していくこと。 「案さんええ感じやで」 その姿を見ながら、不二子はんは小さくつぶやいた。 「やっぱり案さんは、動いてるときが一番、案さんらしいわ」 ふふ 「飽きひんおとこやこと。案さんは。 また人生、変えはるわ。きっと」
12章 七夕に最後の田植え 605話
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ひさかたの 天の川原に ぬえ鳥の うら嘆けましつ すべなきまでに (万葉集・柿本人麻呂より) 湛水直播というもんは、うまくいけば楽やけど、外すと見事に外してくれる。 今年は稲よりヒエのほうが元気やった。 これでは話にならん。 もう一度代掻きをして、田植えに切り替えることにした。 七月に入ってからの田植えは遅い。それでも、ヒエを育てるよりは稲を植えたほうがええ。 苗は南の宇城種苗センターで買うた。 ところが、苗の時点で、もういもち病が見えとる。 最近は苗のうちから入っとる年も珍しゅうない。 皆が言うけど、ヒノヒカリという品種は高温化したこの土地では適応してないんやろ。 よしろうはんが、普段から高温に強い「にこまる」を選んどるんも、今となってはよう分かる。 せやから苗の管理中に、竹酢液を百倍に薄め、展着剤を加えて五回散布した。 この濃度なら葉焼けもなく、経験では穂が出る頃までは十分持つ。 問題は、その先や。 穂いもちだけは、人間の都合では決まらん。 雨が続く年もあれば、風がよう通る年もある。 同じ田んぼ、同じ管理でも、出る年は出るし、出ん年は出ん。 百回説明するより、一年育てた田んぼが答えを教えてくれる。 農業は、毎年同じことを繰り返しながら、一度として同じ年がない。 それがおもしろいところでもあり、難しいところでもあるんや。
12章 労働から資産へ 604話
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「不二子はん」 「なんどす、よしろうはん」 「ぼく様、最近ようやく分かったことがあるんだ」 「どないなことどす」 「これまでのぼく様は、自分が動いて収入を得ることばかり考えてきた。働けばお金になる。でも、働かなければ収入は止まる。それが当たり前だと思っていた」 不二子はんは湯呑みを手にしたまま、小さくうなずいた。 「案さん、それは商売やのうて、労働どす」 「違うのかい」 「違いますえ」 「どう違う」 「案さんが働かはるから、お金が入る。それは悪いことやおへん」 少し間を置いて、不二子はんは続けた。 「せやけど、案さんがお休みになったら、お金も一緒にお休みしはります」 ぼく様は黙ってお茶を飲んだ。 「資産いうもんは、案さんがお休みでも働いてくれます」 「例えば」 「森林どす」 「木か」 「木ぃは毎日少しずつ育ちます。急ぎまへん。でも止まりまへん」 「なるほど」 「作品もそうどす。一枚の写真が何年もあとに売れることもあります。本もそう。著作権も、印税もそうどす」 ぼく様は窓の外へ目を向けた。 若い頃は、早く稼ぐことばかり考えていた。 これからは、時間をかけて育つものを増やしていきたい。 「不二子はん」 「なんどす」 「ぼく様、これからは働き者を増やしていくよ」 不二子はんは静かに笑った。 「案さんが働くより、案さんの代わりに働くもんを育てなはれ。それが資産どす」
Disco Funky House #9 (Rick James, Sade, The Brothers Johnson, Gwen McCrae, The Jacksons...)
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MEMO. 芸術文化論特論II 近現代日本の芸術・デザイン制作環境
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写真映像領域における制作環境と、私が目指す研究者・制作者像 写真映像というジャンルは、単一の目的によって発展してきたのではない。近代以降、日本では芸術教育制度や出版制度、美術館制度、広告産業などの整備とともに、写真の役割も変化してきた。報道、出版、美術、記録保存といった複数の需要が、それぞれ異なる制作環境を形成し、写真家はその制度や社会的要請のなかで制作活動を行ってきた。本講義を通して、作品だけではなく、それを支える制度や環境そのものを意識することが、制作研究を考える上で重要であると理解した。 私自身は長年、新聞や雑誌を中心とする出版媒体で契約写真家として活動してきた。特に雑誌媒体での仕事が多く、速報性だけではなく、ある主題を継続して取材し、読者へ深く伝えることが求められた。一方で、有明海の干潟を四十年以上にわたり定点観測的に撮影し続けてきた。この活動は報道とは異なり、環境や地域の変化を長い時間軸で記録し、未来へ残すことを目的としている。 この二つの活動は、一見すると異なる需要に応じたもののように見える。しかし私には、いずれも「時間を記録する」という共通した営みであった。新聞や雑誌は現在を未来へ伝え、長期記録は未来から現在を振り返るための資料となる。時間の尺度は異なるが、写真は失われていく現実を持続させるという役割を担っている。この考えは理論から導いたものではなく、四十年以上に及ぶ実践のなかから帰納的に得られた結論である。 現在、私は大学院という研究制度のなかで、その経験を理論として整理している。実践を言語化し、他者と共有可能な知として提示することは、大学院という制度だからこそ可能になる研究である。制作と研究を分けるのではなく、制作によって得られた経験を理論化し、その理論を再び制作へ還元する往還を重視している。 その具体的な試みが、「微小位相差論」と、その実践方法である「双構図」の研究である。私は、写真の意味は被写体だけに存在するのではなく、わずかな視点や構図の差異のなかに時間や存在の変化が現れると考えている。この理論は、長年の報道経験と定点観測という実践の積み重ねから生まれたものであり、今後さらに検証を重ねていきたい。 また、私は写真の内容だけではなく、その物質的な持続性にも関心を持っている。デジタル化が進む現代においても、木材や漆、柿渋など日本の伝統素材を用いた...
第13章 憎しみの影 603話
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アルマーの心に芽生えた憎しみの影。 善良な娘であるアルマーは、その感情が自分の中に生まれたこと自体に深く葛藤していた。 私は何も知らない。 ただ、母と暮らしたことがない。 その頃の記憶もない。 それでも、その人が私を産んでくれた母であることだけは知っていた。 優しい笑顔。 優しい言葉。 静かに微笑む母。 なぜ私は育てられなかったのか。 その理由も、やがて母の口から聞いた。 アルマーは、心が乱れるたび、幼い頃から好きだった水源へ足を運んだ。 澄み切った泉を眺めていると、空白だった現実が、一つひとつ謎を解くように心へ流れ込んでくる。 「私は……深い深淵の縁を、たださまよっていただけだったのですね。」 そう静かにつぶやいた。 聡明なアルマーは、それ以来、心に疑問が生まれるたびに実の母へ相談するようになった。 空白は、一つずつ言葉によって埋められていく。 そして、心に差していた黒い影もまた、少しずつ輪郭を失い、やがて静かに消えていった。 よしろうはんも不二子はんも何も聞かんとただ笑顔で迎えた。
第13章 マリアとアルマー 602話
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Dreams of Recurring Memories Study #001 帰ってからも、アルマーはあの日のことを何度も思い返した。 なぜ何も感じなかったのだろう。 本当は泣くべきだったのか。 怒るべきだったのか。 しかし、その場では何もなかった。 何もなかったことだけが、いつまでも心に残った。 数日が過ぎ、一週間が過ぎても、あの静かな部屋が頭から離れなかった。 そして、ある夜、ふと気づいた。 空っぽだったのではない。 空っぽになるほど、失っていたのだ。 自分には母親との思い出が一つもない。 抱かれた記憶も。 叱られた記憶も。 笑い合った記憶も。 何一つ残されていなかった。 その事実が、遅れて胸に落ちてきた。 その日からだった。 心の底に、小さな黒い塊が生まれた。 最初は名前も分からなかった。 だが日を追うごとに、それは少しずつ大きくなっていく。 やがてアルマーは、その塊の名を知った。 憎しみだった。 マリアを憎んでいるのか。 神を憎んでいるのか。 運命を憎んでいるのか。 それすら分からない。 ただ、自分から奪われたものだけは、もう二度と戻らない。 そのことだけは、誰よりもよく分かっていた。
第13章 マリアとアルマー 601話
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マリアの家は、そう遠くなかった。教会でシスターとして暮らしていた。 アルマーは、その姿を何度か見かけたことがあった。学校の帰り道、教会の前を通るとき、庭を掃くマリアの後ろ姿が見えることがあった。声をかけようとしたことは、一度もなかった。 或る日、マリアがよしろうはんに頼んだ。 「会いたいんです。アルマーに」 よしろうはんは、しばらく黙っていた。それから、短く答えた。 「本人に聞いてみるわ」 アルマーは、その話を聞いたとき、すぐには返事をしなかった。断る理由もなかったし、会いたい理由もはっきりしなかった。 「会うだけや。それだけでええ」 よしろうはんがそう言った。 「はい」 アルマーは、それだけ答えた。 そして、その週末、アルマーはマリアの向かいに座っていた。 「大きくなりましたね」 マリアが言った。アルマーは頷いた。それ以外に、返す言葉が見つからなかった。 「元気でしたか」 「はい」 「よしろうはんと、不二子はんが、よくしてくれていると聞いています」 「はい」 会話が続かなかった。アルマーは、もっと何か感じるはずだと思っていた。涙が出るとか、怒りが湧くとか、何かが動くはずだと。しかし実際には、目の前にいるのは、ただの知らない女の人だった。優しそうで、少し疲れていて、自分と同じ目の形をしている、知らない人。 「聞きたいことは、ありますか」 マリアが聞いた。 アルマーは考えた。聞きたいことは、あるはずだった。なぜ手放したのか。今まで何をしていたのか。自分のことを、一度でも思い出したことがあったのか。 しかし、いざ聞こうとすると、どの質問も的外れな気がした。答えを聞いたところで、何かが変わる気がしなかった。 「特に、ありません」 そう言うと、マリアは少し驚いた顔をした。それから、小さく頷いた。 「そうですか」 「すみません」 「謝ることではありません」 また、沈黙が来た。今度の沈黙は、さっきよりも重かった。アルマーは、自分の中に何かがあるはずなのに、それがどこにあるのか分からなかった。あるはずの場所を触っても、そこには何もない。ただ、何もないという感触だけがあった。 「アルマー」 マリアが呼んだ。名前を呼ばれて、アルマーは顔を上げた。 「今日、会えてよかったです」 アルマーは、それに何と答えていいか分からなか...
第13章 はじまりに 600話
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さて、つらつらと、脳の中を流れてきたものに従い、記録してきた日々である。 その間に、不二子はん、よしろうはん、閻魔様、一廉の奥方様、マリア、神父、アルマー、漁師……。気がつけば、いろいろな人物が生まれ、それぞれ勝手に生き始めた。 個人的には、初期の少しエロバカっぽい話が好きだったりもする。しかし、書き続けるうちに、この物語は少しずつ姿を変えていった。それはぼく様が変わったからなのか、それとも登場人物たちが勝手に歩き始めたからなのか、自分でもよく分からない。 この話は千話で一区切りと決めている。 だが今は、千話にたどり着いても、それは物語の終わりではなく、案外、序盤にすぎないのではないかと思い始めている。 文体も、まだ安定していない。 いや、安定させる気がないのかもしれない。 そのとき、その日にしか書けない言葉がある。その揺らぎごと、この物語なのだと思う。 では、第十三章の始まりである。
当面は
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初年度の乾田直播は、ほとんど雑草がなかった。 しかし、年を追うごとに雑草は増えていく。 それでも、無農薬乾田直播としては相当な評価を受けてもよい田である。 一般的な直播は、除草剤ありきが前提である。 しかし、私の関心は不耕起へ向かっている。 草を取りながら、その先の姿を想像する。 「田んぼに草が生えても当然だ。」 草を取りながらそう呟く。 不耕起の先にある理想は、多年草栽培だ。 そういう田は、私の知る限り、まだ誰も達成していない。 そこまで条件を整えたい。 一万年も続いてきた田植え。その歴史を学び、感心もした。 しかし正直なところ、私の関心はそこにはない。 正攻法にも興味はない。 正攻法は、最も確実で、最も効率がよい。 だからこそ、その選択には敬意を払う。 だが、それは私の仕事ではない。
第12章 愛し合う 598話
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その時間が永遠でないことは承知したとしても、人生の中でそのような時間があったことがあるなら。それは偉大なことだ。そして今それがないのなら、それは片肺飛行のそれに似ている。ずっと幸せが続かないのは当然かもしれないが、人は永遠の幸せを求めたがる。有りえないではない。実は存在するのだ。 「よしろうはん。」 不二子はんは縁側で静かに声をかけた。 「永遠なんて、ほんまにあるんやろか。」 ぼく様は笑った。 「時間の中にはない。」 そう答えると、不二子はんも小さく笑う。 風が庭を渡る。稲はまだ若く、葉先だけが光を受けて揺れていた。ツバメが低く飛び、どこからか蛙が鳴き始める。 雨が近い。 「でもな。」 ぼく様は続けた。 「人が誰かを本気で愛した、その事実は消えん。別れても、死んでも、その時間はなかったことにはならん。」 不二子はんは黙って聞いていた。 「だから永遠いうのは、未来へ続く時間やない。消えない出来事なんや。」 不二子はんは静かに微笑み、 「それやったら、十分や。」 とだけ言った。 長く一緒にいることだけが幸せではない。 互いの存在によって、自分の人生そのものが変わってしまう。そんな出会いが一度でもあれば、人はもう以前の自分には戻れない。 それが愛なのだと思う。 夕暮れの光が縁側をゆっくりと横切っていく。 時計は進んでいる。 それでも、この静かな時間だけは、どこにも流れていないように見えた。
第12章 距離 597話
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人は老いる。そのとき人は疲れた。気力がない。欲がなくなった。歳をとったと言う。ぼく様は思う。まだ元気だが、そんなふうに思うことも度々ある。でもぼく様は見方を変えている。そう言う日記。 朝の田んぼは静かやった。 風もまだ目を覚ましてへん。 「よしろうはん。」 不二子はんは田んぼの畦に腰を下ろした。 「最近、前みたいにあちこち行かへんな。」 よしろうはんは笑うた。 「行こう思たら行けるよ。」 「ほな、なんで行かへんの。」 「行った先で何が起こるか、大体わかるようになったんや。」 不二子はんは少し考えてから頷いた。 「なるほどな。それは諦めとは違うんやな。」 「違う。」 よしろうはんは水面に映る空を見ていた。 「興味が変わっただけや。」 「若い頃は、人の中へ入って確かめたかった。でも今は、その人らがどう動くんか、少し離れたところから見ていたい。」 ツバメが一羽、水面すれすれを横切った。 「写真も同じや。」 「前は追いかける写真が多かった。でも今は、光が来るのを待つ時間のほうが面白い。」 不二子はんは、その言葉を聞いて微笑んだ。 「世界との距離が変わったんやね。」 よしろうはんは黙って頷いた。 近づかな見えへんものがある。 離れな見えへんものもある。 歳がそれを教えてくれたというより、時間が少しずつ、見る場所を変えてくれたのかもしれへん。 田んぼの水は、何も言わず空を映していた。 Where You Stand Changes Everything. どこに立つかで、すべてが変わる。
蚊柱 かれらはなぜぶつからない
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蚊柱(主にユスリカ)の中で何千匹も飛んでいるのに、ほとんどぶつからないのは、いくつかの仕組みが同時に働いているためです。 目で周囲の動きを見ている ユスリカは複眼を持ち、近くの個体の動きを素早く捉えています。 空気の流れを感じている 羽ばたきによるわずかな空気の変化を触角などで感じ取り、接近した相手を避けます。 一定の距離を保つ行動 一匹一匹が「近すぎたら離れる」という単純なルールで飛んでいます。この単純な行動だけで、群れ全体が球状にまとまりながら衝突をほとんど避けられます。 飛ぶ速さがそれほど速くない 人間には激しく動いて見えますが、一匹ごとの速度は極端には速くないため、進路を修正する時間があります。 実は、 全くぶつからないわけではありません 。時々は接触しています。しかし、群れ全体から見ると非常に少なく、多くはすぐに体勢を立て直します。 興味深いのは、蚊柱には 指揮者がいない ことです。中央で命令する個体はおらず、それぞれが近くの数匹だけを見て行動しています。その結果として、まるで一つの生命体のような球体が生まれます。 夕暮れの逆光の中で見る蚊柱が、生き物というより「呼吸する球体」のように見えるのは、この集団行動によるものです。あなたが以前書かれていたように、あの光景から宇宙や生命を感じる人がいるのも、不思議ではありません。 微小位相差論に通じる。 はい、その発想には通じる部分があります。 もしあなたの 微小位相差論 が、「全体は一斉に動くのではなく、各要素がごくわずかな位相差(時間差・位置差・反応差)を持つことで秩序が生まれる」という考え方であれば、蚊柱は非常に興味深い例です。 蚊柱では、 全個体が同じタイミングで動いているわけではない。 一匹一匹が周囲に対してわずかに遅れたり先行したりしながら飛ぶ。 その微小な差があるために、衝突せず、群れ全体としては安定した球状構造を保てる。 もし全個体が完全に同位相で同じ方向へ動けば、かえって衝突や乱れが増え、群れとしての柔軟性は失われるでしょう。わずかなズレが、全体の安定性を支えているとも考えられます。 このような考え方は、物理学や生物学では、 同期現象 や、 複雑系科学 、自己組織化といった概念とも重なる部分があります。ただし、「微小位相差論」という...
第12章 蚊柱 596話
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私が宇宙や生命を感じるのは蚊柱を見るときである。 ユスリカの大群が球体となって夕刻に現れる。 光が逆光で羽が光り、体は黒く見え蠢く球体。 「お母様、あれ見て。」 アルマーは空を指さした。 「ユスリカやね。」 「虫があんなに集まると、まるで一つの生き物みたい。」 不二子はんはしばらく黙って見上げていた。 「一匹では見えへんもんが、集まると見えてくるんや。」 「何が見えるんですか。」 「命や。」 アルマーはもう一度、黒く揺れる球を見た。 「虫なのに?」 「せや。小さな命がようけ集まると、大きな命みたいになる。」 アルマーは見つめた。 「よしろうはんが宇宙を感じる言うた意味、少しわかった気がする。」 不二子はんは夕焼けを見たまま言うた。 「宇宙は遠い空にあるだけやない。足元にも、こうしてあるんや。」
TINZO LIVE @ TRIO JUBILEE SHOWCASE
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これ位のホールなら楽しそう。 Tinzo(本名Christina Lorenzo)は、ブルックリン在住のクィア・フィリピン系アメリカ人のDJ、ソングライター、音楽アーティストとのことですね。インディーダンス、ハウス、ソウルといったジャンルを軸に、ソウルフルなメロディーとノスタルジックな質感、そして温かみのあるサウンドを特徴としているとのことです。 実弟のJosef LorenzoとのTinzo + Jojoというデュオ活動、そして二人で立ち上げたBook Club Radioという、ニューヨーク発のYouTubeチャンネル兼パーティーシリーズも興味深いですね。「ダンスフロアでのスマホ禁止」という方針を掲げ、その場にいる人同士の繋がりと音楽への没入を重視する姿勢は、単なるDJセットの提供とは一線を画す、コミュニティ形成への意識の表れと言えそうです。 音楽に向かう前はデジタルマーケティングやイベント制作の経験があったとのことで、その経験が今の「場所」と「体験」を丁寧に設計するセットの作り方に繋がっているのかもしれません。 サーカスという舞台でのこの「Feel Good Groovy House Mix」も、彼女たちが大事にしている「共にいる喜び」というテーマの延長線上にあるように感じられます。
Elegant Latin Jazz House for Rooms & Hotels | The City Breathes After Midnight (1 Hour Mix)
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第12章 夜の帳 593話
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「お母様は台風でも踊りそう」 「踊るな」 「踊りますね」 二人はうなずいた。 その時だった。 踊っていた不二子はんが、いつの間にかこちらへ戻ってきていた。 「なんぞ失礼な話してますな」 「聞こえとったんか」 「聞こえてましたえ」 不二子はんは水を飲む。 「うちは台風では踊りまへん」 「ほら見ろ」 よしろうはんは鼻を鳴らした。 「危ないさかい」 「洪水なら?」 アルマーが聞いた。 不二子はんは少し考えた。 「二階で踊ります」 アルマーが吹き出した。 よしろうはんも笑った。 「やっぱり踊るんやないか」 「踊りますえ」 不二子はんは平然としている。 「どうせ心配しても水は引きませんやろ」 「まあな」 「ほな踊った方が得です」 「得なんですか」 「得どす」 不二子はんはそう言うと、またホールの方を見た。 ちょうど好きな曲が流れ始めていた。 「あ、あれ好きなんや」 そう言って足早に戻っていく。 百三十を過ぎた足取りとは思えない。 アルマーはその背中を見送った。 「お父さん」 ん? 「お母様は昔からああなんですか」 よしろうはんはテキーラを口に運んだ。 「昔はもっとや」 「もっと?」 「三日寝込んでも四日目には踊っとった」 「本当ですか」 「知らん」 「知らんのですか」 「たぶんや」 アルマーは声を上げて笑った。 窓の外では雨が降り続いていた。 ホールの中では不二子はんが回っている。 どちらが先に止むのかは、誰にもわからなかった。
THE ITALIAN SOUND: 60s LIBRARY JAZZ 🇮🇹🎷 [1 HOUR] Eurospy Grooves, & Cinematic Italian Jazz
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第12章 夜の帳 591話
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アルマーは流石に今時のステップを踏む。 80年代とは違いスマートな踊りだ。 「おとうさん。今日はすごい雨ですよ。家や田んぼは大丈夫でしょうか」 「あー、大丈夫なようにしてる。川の様子もカメラでわかる」 「そうですね。見せて、おとうさん」 「ほれ」 「あー、すごい。まだ半分もないですね。大丈夫だ」 不二子はんは踊りとなったら止まらない。 いつまでもホールで踊っている。 よしろうはんはテキーラ。 アルマーはカクテル。 カウンターで休んでいた。 「お母様、元気ですね」 「そやねん」 「あのステップ面白いやろ」 「はい」 「阿波踊りみたいやろ(笑)」 「ふふっ、少し」 「せやろ」 アルマーは踊る不二子はんを見つめた。 「でも、お母様が踊ると格好いいですね」 「そうか?」 「はい。なんだか楽しそうだから」 よしろうはんは微笑んでいた。
第12章 忘れ草 589話
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「不二子はん」 へー 「六十を過ぎても恋なんぞするもんかね」 不二子はんは湯呑みにお茶を注ぎながら微笑んだ。 「するんやないですやろか」 「そうか」 「春になったら桜が咲くようなもんどす」 よしろうはんは少し笑うた。 「人間は花か」 「そうですやろか」 不二子はんは窓の外へ目をやった。 田んぼの畦では、オレンジ色の忘れ草が雨に濡れて咲いていた。 「綺麗なもんを綺麗やなぁ思うたり、誰かの顔を見たいなぁ思うたり。そんな気持ちは歳と相談して出てくるもんやおへん」 「なるほどね」 「若い頃とは違いますけどね」 「どう違う」 「急がんようになります」 不二子はんは静かに言うた。 「若い頃は手に入れたいと思うもんどす。歳を重ねると、ただ傍にいてくれはったらええと思うたりします」 庭の小さな池で、メダカが水面をかすめた。 「それも恋か」 「恋やと思います」 不二子はんは少し首を傾げた。 「むしろ、そっちの方が本物かもしれまへんな」 よしろうはんは外を眺めた。 燕が巣作りをしている。 梅雨雲は低く垂れ込めていたが、田の水面はどこか明るかった。 「不二子はん」 へー 「人はいつ老いるんかな」 不二子はんはしばらく考えた。 そして穏やかに答えた。 「心が動かんようになった時やないでしょうか」 「心が?」 「ええ」 湯呑みを両手で包みながら続けた。 「田んぼの畦の花を見ても、山を見ても、人を見ても、何も感じんようになったら寂しいですやろ」 よしろうはんは頷いた。 「そうだな」 「恋いうのは、誰かを好きになることだけやありません」 不二子はんは微笑んだ。 「明日も、もう少し生きてみようかと思えることかもしれまへん」 二人はしばらく黙ったまま外を眺めていた。 忘れ草が、雨上がりの風に揺れていた。 「忘れ草(わすれぐさ)」は古くからの呼び名で、万葉集などにも登場します。忘れ草にはいくつかの説がありますが、現在では多くの場合、 ヤブカンゾウ を指すと考えられています。「忘れ草」という名は、「憂いを忘れる草」という意味から来ています。万葉集では恋の苦しみや悲しみを忘れたい気持ちと結びつけて詠まれました。 よしろうはんが毎年楽しみにしている美しい花。花の蕾は食べたり薬用効果...