ジャンボタニシを活用した深水管理実現法 8年の実践記録
ジャンボタニシを活用した深水管理実現法 8年の実践記録 新川芳朗 環境共生農業 CASA BLANCA 熊本県阿蘇地域 概要 田植え後一ヶ月間の深水管理は稲の生育にとって理想的な環境であるが、ジャンボタニシの食害リスクがその維持を困難にする。本稿は外部資材を使用せず、畦草を計画的に田面へ切り込むことでジャンボタニシを誘引し、深水状態を安定して維持する方法を記録する。熊本県阿蘇地域での8年間の実践に基づく。 深水管理の意義と障害 田植え後の深水管理は稲の分げつと根張りを促し、雑草抑制効果も高い。理想的な水管理として知られるが、ジャンボタニシが生息する田では食害リスクから浅水や落水を選択せざるを得ない場面が生じる。防除のための妥協が稲の生育環境を損なうという矛盾が生まれる。 設計の原理 ジャンボタニシは軟化した植物質を好んで食べる。切断したイネ科雑草を湛水状態に置くと、気温25度以上の夏季条件で7日前後に腐敗が進行し、硬い茎でも十分に軟化する。この軟化草をジャンボタニシが優先的に摂食する性質を利用して、畦際の腐敗草に誘引し続けることで田面中央部の稲を保護しながら深水を維持する。 実践の手順 田植え前からマメ科植物が結実するまで畦草を刈らずに温存する。これが田植え後一ヶ月以上の誘引餌量を確保する条件になる。当初は頻繁に草刈りを行っていたが、餌となる草量が不足して稲への被害が生じた経験から温存という判断に至った。 田植え後、刈り払い機を用いて畦から約1mの範囲の草を田側に倒し込むように刈る。刃の向きと進行方向を調整することで、刈る動作と田面に入れる動作が一工程で完結する。この切り込みを餌が切れないよう継続することで、ジャンボタニシを畦際の腐敬草に誘導し続ける。 観察結果 8年間の実践において稲への顕著な食害は発生していない。深水管理を田植え後一ヶ月間安定して維持できており、稲の生育は良好である。ジャンボタニシの個体は腐敗植物質の安定供給により急速に巨大化するが、個体密度の急激な増加は観察されていない。 考察 本方法の核心は防除と理想的水管理が同時に成立する点にある。通常は相反する条件として扱われるジャンボタニシ対策と深水管理を、生態系内の資源循環によって両立させている。畦草の温存は管理すべき対象ではなく防除資源の備蓄として機能し、草刈りをしないこ...