第5章 綴る 343話

不二子には、淡い期待があった。

「お子……でけへんかな」

産まれてきたらええな。
もう無理やろか。

自分のお腹を、そっとさする不二子。

また、川沿いを歩いていた。

からすが、ようけ飛んどる。

少し増えたが、まだ少ないで。
そう、よしろうはんは言うてはった。

そうか。

からすも、増えとんやなぁ。

心の中で、不二子はつぶやく。

よしろうはんのことが、なんとなく分かってきたで。

あんさんは、観測してんのやな。
世の中、すべてを。

へんな人や。

どないしたら、ああなるんやろか。

お子ができたら、大変かもしれへんな……。

「そういうことだ、不二子」

「あら。閻魔様。おひさしゅうごぜーます」

「不二子。そなたは、もう130歳だ。諦めなさい」

「あはあ。淡い期待、してましてん(笑)」

「それならいい。では」

「閻魔様、お聞きしたいことが……」

「なんだろうか」

「よしろうはん、67歳で死ぬこともある言うてますさかい」

「ああ。あいつか」

「心配せんでもええ、不二子」

「というと?」

「……死んでも、生き返る」

「あいつの母親も、そうであっただろ」

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