第3章 おかえりやす 293話
「ただいま」
「おかえりやす。いかがどした?」
「おいしかったで。不二子はんもくればよかったんに」
「そうどすな。ま。早い帰宅でよかったどす」
「?......そうか」
「親父がさ、来年の1月には施設に入るそうや」
「あら、哲男さん。どちらへ」
「今の病院から近いとこが候補らしい」
「親父知ってんの?」
「へー。うち、哲男さんが小さい頃、熊本へ来て、いっしょに遊んでましたさかい」
「あー。それ不二子はんか。親父時々言ってた。えらいべっぴんさんというか、なんかとんでもない人が家に来て遊んでくれたと」
「あらまぁ、とんでもないひと?うふふ」
「そうでもないで、哲男さんは負けん気の強い利発なお子でした」
「それが今ではな。自分もわからんようなっとる」
「それはちゃいますえ」
「なんなん?」
「移動してはるんや」
「なんと!」
「うちには分かるで、哲男さんは今もがいてる。でもその選択はどちらでもええ、その先もある。そのままもある。よしろうさんならわかるえ?」
「そういうことか!」
「そうどすえ」
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