第4章 水の音 311話
静かな村に住んでいる。井出に流れる水の音だけが聞こえる。そう言えば今日は休みであった。脳内に芽生えるものはない。今日は物語も休もうか。
考えているのは、先ほどから写真のことだ。撮って写し出された画像は、すでに過去である。その過去の物が現在も続いている。実はそれは非常に面白い。当たり前であったことが理論化されると、その一枚の写真は過去を表し、同時に現在の景色でもある。
二層の位相が同時に存在することが実証されている。さらに、それを見る者の意識という三層目の位相も存在する。言葉をブログに書けば伝達され、さらに複数の位相が成り立つ。
僕はこれを写真化したいのだ。
そんな或る日。
「不二子はん、今日はなんもしたないわ」
「お疲れ様どす。不二子もなんもしたないわ(笑)」
「海行かへんか。きょうは行かへんけど」
添い寝する不二子。
抱き寄せるよしろう。
「ええどすえ。どこでも一緒におりたいでぇ」
「魚は元気か?」
「水温26度。エサは一回。水が減ったら、適温の温水を入れとりますで」
「ほう。大したもんや。おおきにな」
「あのローライのカメラ、いつ修理から帰ってくるどす?」
「来年やて」
「ながいどすな。写真、撮られへんな。よしろうはん」
「ええねん。心配せんと。これは待つ時期や。カメラなしでも、いつも目で記録して検証しとる」
「ほう。信じますえ。不二子は」
ふふ
うふふ
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