第4章 下弦の月 309話

下弦の月。
正しく弓を天へ向け、今まさに放たんとする、その一瞬。
雲は月を隠し、また見せる。
誘われる戦の前に、天は味方か、敵か。

上弦の月。
弓を天に放つなど、在り得ない。
時間とともに、弓は必ず下へ向けられる。
それはまるで、地上へ弓を放つかのような、恐ろしい上弦の月へと変わる。
さらに強く弦を引けば、誰しも恐怖を覚えるだろう。

だが、弓は放たれない。
消え、また満ち、丸くなり、欠ける。
その繰り返しが、途方もない時間、月と地球のあいだで続いてきた。

弓を放つ前に、弦を緩める心を、常に心がけよ。
躱す、離れる、停止。
放てば、互いに消滅する。

世界は、二相構図にあらず。

——国際間情勢と、友人への考察より 

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