第14章 不二子はんの「八天狗の呉汁どす」 635話 まちがえてましたどす。。訂正版
「よしろうはん、今朝は自家製大豆で呉汁を作りますえ」 不二子はんは、前の晩から水に浸しておいた大豆をざるに上げた。 「今日は余計な野菜は入れまへん。ネギだけでよろし。せっかくの自家製大豆どすもの、大豆の味をしっかり楽しみましょ。せやけど、この大豆、綺麗やわ」 「ぼく様が育てたんやけど、なんやったっけ? あ、八天狗という在来種やった」 へー 「それなら、うちに任せてくださいな」 不二子はんは、大豆をすり鉢に入れ、水を少し加えながら丁寧にすりつぶしていく。 「これが呉どす。全部を滑らかにせんでもよろし。少し粒が残るくらいが、おいしいんどすえ」 鍋にだし汁を入れて火にかけ、温まったところへ、すりつぶした大豆を加える。 焦がさないように、ゆっくりとかき混ぜながら、弱火でしっかり火を通す。 大豆に火が通ったら味噌を溶き入れ、最後に刻んだネギを加える。 八天狗の呉汁、出来上がり。 よしろうはんは、ひと口すすった。 「うん、これはうまい。大豆の味が濃いな」 「そやろ。自分で育てた大豆を自分でいただく。贅沢どすなぁ」 よしろうはんは、黙っておかわりを差し出した。 「あら、よしろうはん。大豆の名前は忘れても、おかわりは忘れはらへんのやねぇ(笑)」 Note 八天狗大豆(はってんぐだいず)は、熊本県に伝わる日本古来の「幻の在来種大豆」