第5章 妖艶な女性現る 352話
ぼく様には、不二子という妻がいる。 作者である僕は、未来の妻を求めていた。 一目見たときから、気になる女性がいた。 僕から見れば、まだ若い。しかも、相当だ。 僕の恋愛パターンは、一目惚れではない。 実は、美形優先でもない。 ――なに、このひと? そんな First Impression から始まり、 引き込まれるように、観察と観測を重ねながら、 少しずつ深めていく。 なんて周到な艶(えろ)さであることか。 3:25 「不二子はん、今日は雲行き怪しいわ。 ここは晴れてるけど、雨、降り始めてる」 「ほー、狐の嫁入りですえ、よしろうはん」 良い例えも、悪い例えも、同時に混在する。 雨は、まっすぐ落ちるものではない。 質量の軽い雨は、斜めにも降る。 雨雲と晴天の境界で起きる、 決して不思議でもない現象。 ただ人は、それを不思議と捉え、 多くの逸話を残してきた。 僕は、その現象そのものよりも、 狐の嫁入りに遭遇する 時間 や タイミング が、 あまりにも絶妙であることに関心を持つ。 いつかは、別れの日であった。 いつかは、落ち込んでいた青年が、 人生で初めて体験した狐の嫁入りによって、 悩みを忘れた――そんな瞬間もあった。 「その女性の方は、どちらでお知り合いになったんですか」 一廉(ひとかど)の奥方様が、 興味深げに尋ねる。 「仕事先ですよ」 「……そうでござるか。良きに計らえ」 3:42