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第8章 種を持たない桜 470話

淡い色のソメイヨシノ、されど平均寿命は60年という。。接ぎ木などのクローンだからだ。中には樹齢100年もあるにはあるが、山桜が300年も500年も生きる中で短命な品種。誰かが植えなければ存在できない桜である。しかし花が多く一斉に開花し葉桜にならない。その恩恵故愛されてきた。  「不二子はん、やっと桜が咲きだしたで」 へー 「ええ季節やね」 「日曜日、親父を福祉タクシーに乗せて、桜を見せに行くんや」 「哲男さんどすか。それはよろしいなあ、きっと喜ばはりますえ」 「せやろ。自分で植えた桜やからな。できるだけ長う見せてやりたいんや」 「ええ孝行やね、よしろうはん」 「ああ……まあ、それくらいしかでけへんからな」

第8章 道標 その参 469話

そやから思うねん。 そう言うて、よしろうはんは田んぼに立っていた。 じっと見つめる不二子はんは、静かに語りかけた。 「あんさん、今なに見てはるんすか?」 「おお、不二子はんか。変化を見てる」 「そうやろな。そんな気ぃしましたえ」 「な、みんな動いてるやろ。次から次へと生き物は生まれて、水も動いてるやろ。この土地だって、地球だってな」 「うふふ。うち、知ってるで(笑)」 「やろうな。不二子はんは、なんでも知っとる」 「で、あんさん、今日はなにしはるん?」 「そやな……もう、なるべくしょうもない引っかかりに当たらんように、気ぃつけて生きようかと思てる」 「……引っかかり?」 「そうや。見える災いは、すり抜けよう思てる」 「あんさん、どないしたん(笑)」 「そうなんや。せやけど、ぼく様の時間も、そう長くはないんよ。しょうもない引っかかりに当たって、立ち止まるのはごめんやで。……やるべきことを先にやってまう」 「うふふ。小学生のころの話と、おんなじやな。よしろうはん」 ん? 「なんやったっけ」 「宿題の問いを考えてるとき、後ろから“教えてくれ”て友達に言われたんやろ? せやけど、あんさんはまだ考えてたさかい、“ごめん、答え分かってから教えるわ”て言うたんや」 「ああ、あれか。そうや。 いっしょに考えてもええけど、遅なる。 ひとりで答え探したほうが早い。 ちゃんと答え分かったら、教えたで」 へー  「うふふ。今も昔も、そのままやね(笑)」

第8章 道標 その弐 468話

不二子の語りは続く。  宇宙はな、最初から偏ってるんやて。 うちにはよう分からんけど、どうやらそういうことらしい。 左右対称や思てたら、そうやないらしいのや。 物理の世界に「弱い相互作用」いうのがあって、 それだけが左右対称を破る。 宇宙で、ただひとつ、そういう力があるんやて。 で、宇宙から降ってくる粒子——宇宙線いうやつ——が地球に当たって、ミューオンいう粒子になる。 そのミューオンがな、スピンいう向きに偏りを持っとって、右巻きの分子と左巻きの分子とで、壊れ方がちょっとだけ違うらしいのや。 ちょっとだけ、やで。 ほんの、ちょっと。 でもそのちょっとが、何十億年もかけて積み重なって——。 DNAは右巻きになった。 アミノ酸は左手型だけになった。 うちらの体の中にある、あの螺旋の形は、宇宙の偏りが刻まれたもんかもしれへん。 しし座の方向へ、秒速370kmで飛びながら、 うちらはその偏りを体の中に抱えて生きてる。 宇宙がどこかへ動いてるから、生命がそうなったんやない。 宇宙そのものが、最初から偏っとった。 せやから、生命も偏った。 ……そう考えたらな。 うちらの体は、ただの体やなくて、宇宙の癖みたいなもんを受け継いでるんやね。 なんや、おもしろいな。

第8章 道標 その壱 467話

不二子の語り。  時間いうもんは、止まらへんのやて。 うちにはよう分からんけど、物理いうもんも、絶えず変わり続けてるらしい。 えらい学者さんは「時間なんてない」て言わはるけど、動いてるもんがあるんやさかい、ないわけあらへんやろ——て思う。 そんなん、当たり前やないの。 地球は太陽の周りを秒速30kmで回って、 その太陽系ごと銀河の中心を秒速220kmで回って、 銀河はまた、グレートアトラクターいうところへ向かって、秒速600kmで引っ張られてる。 その全部が、宇宙マイクロ波背景放射いうのを基準にして、秒速552kmで動いてる。 地球かて、自分で回ってる。秒速460m。 つまり—— 止まってるもんなんて、どこにもあらへんのや。 しし座の方向へ、秒速370km。 それが、うちらの速さやて。 そやのに。 そんな速さで飛んでいきながら、 うちらは今日もご飯炊いて、洗濯して、 誰かのことを思うてる。 宇宙はどこにも止まってへんのに、 うちらの暮らしは、なんでこんなに静かなんやろ。 ……なんや、不思議やね。

第8章 おたまじゃくしの大合唱? 466話

田んぼのオタマジャクシ保護区では、鳥類による全滅を防ぐために水中に防鳥ネットが張ってある。お蔭でこの時期でもほぼすべてのオタマジャクシが生きている。そのエリアから他の僕の田んぼへ複数の個体を移動している。家には絶対安全な小さな池がある。そこには狭い面積だがオタマジャクシを管理している。もしもの場合の保護区のひとつ。 「よしろうはん」 不二子がいつもの笑顔で近寄ってきた。 ほう。 よしろうは思う。なんでおなごは笑顔で話しかけるんやろ。ええもんや。 「おお不二子はん。ええとこ来た。これ見てみ」 へー 「ぎょうさんいますな」 「大きい方がニホンアカガエル、小さいのがヒキガエルやで」 へー 「今はかわいらしい」 「この魚が黒メダカ、去年田んぼで生まれた個体や」 「綺麗やなぁ。黒にラメ入ってますえ」 「ブラックダイヤメダカとオロチメダカの合いの子や」 「黒いのにラメ入って、ヒレが長いやろ?」 へー 「ほんまやな。きれいやわ」 「これ田んぼで増やしたら米より儲かりますな(笑)」 めいあん! 「ほんまや。まじやってみよか、不二子はん(笑)」 へー 「環境省からおこられまっせ」 「ええわ、インボイス課税業者をやめよおもたら2年縛りなんやて」 へー 「国はひどい事しますな、個人間販売なのに解除しても消費税2年も払わなあかん。電話してるよしろうはんの声、聞いてましたさかい、よう知ってます」 な へー 「よしろうはん」 ん? 「ここきれいやで、可愛らしいわ」

第8章 よし! 465話

なるべく面倒な事には関わりあいたくない性分や。。 なによ? ぼく様がいちばん面倒って? 言うじゃないか、ふぅーじこちゃん。 へー それでなんやす? 金土日が休みになってた。 へー そんで? 確定申告はその日にする。 へー いつもの事やさかい。 遊びたいんやろ。よしろうはん。 そうや。 落ちないな。。 ほんじゃ今夜のメニュー    煮豆スープ・イン・素揚げ手羽元 材料(1〜2人) スープ 煮豆(塩味) 1カップ 玉ねぎ 1/2 にんにく 1片 水 400〜500ml クミン 小さじ1/2 塩 黒胡椒 手羽元 手羽元 4〜6本 塩 揚げ油 仕上げ シークアーサー 適量 オリーブオイル 黒胡椒 青ねぎ or パセリ 作り方 ①スープ 鍋にオリーブオイル少し。 玉ねぎ(みじん) にんにく(みじん) 弱火でゆっくり炒める。 香りが出たら クミン投入。 香りを油に移す。 水 煮豆(昨日の晩から時々火を入れて既に柔らかい) 入れて 10〜15分煮る。 豆を少し潰すと 自然なとろみ。 塩で味を整える。 ②手羽元 手羽元にしっかり塩。 油 170〜180℃ で 1から2分前後 皮が ばりっとなるまで揚げる。 オリーブオイルでソテーがいちばん!  ③仕上げ 器に 煮豆スープ。 その上に 揚げた手羽元。 ぼく様は煮込みます。コンソメなんか使わないので鶏ガラの出汁必要っす。  ④最後 シークアーサーを絞る オリーブオイル少し 黒胡椒 青ねぎ ぼく様は最後に エルブ ド プロヴァンスはーぶ!!IN   エルブ・ド・プロヴァンス(Herbes de Provence)は、フランス南部プロヴァンス地方の伝統的なハーブミックスです。 主な構成ハーブはタイム、ローズマリー、オレガノ、セイボリー、マジョラムあたりが定番で、ラベンダーが入るものもあります。ラベンダー入りはとくに観光客向けに作られたものが多く、地元では必ずしもスタンダードではないとも言われています。 使い方はシンプルで、肉や魚のグリル、野菜のロースト、ラタトゥイユなどの煮込み料理に使います。オリーブオイルと相性が...

第8章 ぼく様流目玉焼き 464話

目玉焼きは、卵白の固い部分に火を通すのが難儀や。 フライパンにオリーブオイル。ごま油も最高や。 火を入れて、卵ひとつ目投入。 ちょっと間をおいて、卵白が移動しないように、焦がす寸前で二個目投入。 そうすると卵がくっつかない。 そんで、固い卵白をヘラで移動。 そこそこ火が通ったら、卵白をまだ火の通らない卵黄にかぶせる。 移動を繰り返しながら、卵白に火が通ったら出来上がり。 卵黄はまだドロドロに近いわ。 これがうまいんや。 へー 今朝は湯がいた菜の花を卵白で包んで、塩胡椒。 加熱したら美味しくないシーチキンをトッピング。 菜の花味噌汁。菜の花酢味噌。 ぼく様と不二子はんと次男の朝食、出来上がり。 ご飯はマンゲツモチ玄米ごはんやで。

第8章 ご機嫌なぼく様 463話

おはよう不二子はん。 へー おはようさんどす。よしろうはん。 お茶を点てる不二子はん。 まだ寒いどすえ。きょうも田んぼでギターのれんしゅうどすか? そうや。楽しいんでな(笑) 楽しそうでんな。 よしろうはんが笑ってるとうちも喜ばしいで(笑) はいどうぞ。美味しいお茶やで。 おう。抹茶か。ええな。 へー 宇治のお抹茶どす。 やっぱり宇治の茶はなんかちゃうな。きめ細やかで色彩もいい。とろっとしてる。 へー この抹茶は宇治茶でも高級なお抹茶どす。香りがちゃいますえ。   抹茶茶碗はいくつかあったが、今日の茶わんは天目模様。 いつだったか?買った覚えがある。 有名な作家の作品やったわ。。    また資産増やしましたな。よしろうはん。 お、流石不二子はん。 へー 最近買いなさるギターは皆値打ちもんになるものばかり。 大事につかってくださいな。 ふふん。 流石不二子やよう知っとる。 おう。 そうするで。   

第8章 アラビアータと海老 462話

海老の殻で出汁とりなはれ。 えらい本格的やな。 あたりまえや。 むき身は軽う湯掻いて、すぐ引き揚げる。 わかってますで。 トマト煮込んで、焼く。 焼くんか。 そや。 ……なんで? うまいからや。 へー 出汁と塩とハーブとオリーブオイルとニンニク。 次男が食べられんから、自家製ペッパーソースは今日はなしや。 しょうがないな。 しょうがなくないで。 パスタを七分目に湯掻いて、ソースに入れて、茹で汁足しながらアルデンテに。 海老投入。 へー できましたで。 ええ香りや。 そやろ。 自慢しなはれ。 料理上手な不二子はん。

第8章  "It can be only communication"  461話

「伝え合ってるだけのことさ」 へー 「なにがどす?」 「いや。なんとなく考えてたんや」 「きょうは落ちないで」 へー 「落ちいらへん。なんか考えてはるんやな。聞きたいだけや」 うん 「いや、ただ引っかかったんや、この言葉に」 へー 「わからんやないで。よしろうはん毎日お側でみていたら」 ほう、そうか。 へー。 「断定的やけど、投げやりでもない。達観さえ感じますえ。 例えばこんな四字熟語がありますえ—— 不立文字。ふりゅうもんじ。禅語どす。言葉やりとりでは、真実は伝わらない」 ほう。 「近いかもな、不二子はん」 へー 「お見知りおきを、と申しますえ。 やりとりでしかないと知りながら、それでも案さんに覚えていてほしい——」 あ、 「それや不二子はん。さすがやの」 へー

第8章 学生さん 460話

あ、そうやった。ぼく様学生さんなんや。。 ええこと思いついたで。。 「不二子はん ぼく様学生やったわ」 へー 「そうやで」 「割引つかえるな(笑)」 へー 「通学用の定期も学割あるならなんでもつかえまっせ」 「そうやったそうやった、しらべたらめちゃめちゃあるで」   交通系 JR学割(学生・生徒旅客運賃割引制度) 通学定期券 青春18きっぷ(学生活用) 高速バス学割 航空会社スカイメイト フェリー学生割引 通信・IT系 Apple 学割 Microsoft 学生向けライセンス Adobe Creative Cloud 学生版 Amazon Prime Student Spotify Student Apple Music Student YouTube Premium Student GitHub Student Developer Pack Canva Pro(教育版) 映画・娯楽系 映画館 学生料金 カラオケ学割 ボウリング学割 テーマパーク学生パス 水族館・動物園学生料金 美術館・博物館学生割引 飲食・小売系 マクドナルド学割 サブウェイ学割 学生限定セットメニュー アパレル学割(WEGO等) 眼鏡市場 学割 住居・生活系 学生マンション割引 シェアハウス学割 引越し業者学割 自動車教習所学割 ジム学割 クレジット・金融系 学生専用クレジットカード 学生ローン金利優遇 奨学金関連優遇制度 国際系 ISIC(国際学生証) ユーレイルパス学生割引 海外航空会社ユース運賃 院生・研究者系 日本学術振興会特別研究員(DC)優待制度 学会参加費 院生割引 研究者向けジャーナル購読学生価格 大学院生限定美術館年間パス 研究機関図書館外部利用学生枠 芸術・クリエイティブ系 Adobe CC コンプリートプラン学割 映画制作機材レンタル学生料金 劇場学生当日券 楽器店学生割引(島村楽器など) DTMソフト学生版(Ableton / Cubase 等) カメラメーカー学生キャッシュバック エンジニア・理工系 GitHub Student Developer Pack JetBrains 学生ライセンス Autodesk 学生版 MATLAB 学生版...

第8章 花盛り 458話

梅と菜の花と河津桜が、それぞれ勝手に咲いている。 クリスマスローズも水仙も。 みんなバラバラの時間で。不二子も芳朗も此処にいる。 「よしろうはん。春やなぁ」 「そうや。やっと来よった」 しばらく二人で眺めていた。 「ここも後一年やな。来年の今頃は京都で物件探しやで」 「……お父様の植えた桜、見納めどすなぁ」 「見れるて、いつでも」 へー 「そうどすなぁ」 また少し間があった。 「よしろうはん。願いが叶うたで。おめでとうや(笑)」 「ほんまやな。大阪から九州島に撮影に来て潜伏30年。長かったわ。 危うく隔離病棟に永久に閉じ込められるところやったわ(笑)」 へー 「うち、天から観てましたさかい」 そうか。 「大丈夫やで。ぼく様、どこからでも抜け出れる。 絶対出れないという隔離病棟から脱走成功したのは有名な話だよ」 うふふ(笑) 春の光の中で、二人の影が並んでいた。 長い方と、短い方。 案さんって方は。。

第8章 背伸びはせんでええ 457話

不二子談 内なる、立派な目標を定めたら—— 忘れることなく日々、目の前のことをコツコツ続ければええ。 数年後。 十数年後。 あんさんが気ぃついたときには、 もうその高みに立ってる。 その景色、ひとりで眺めてみい。 ええもんやで。  そんでまた、新たな目標を定めるんや。 あんさんにしか辿り着けへん場所へ。 なんどでも、登り始めたらええ。 見かけ倒しは、いずれ消えはる。 残るんは、積み重ねだけや。 望むもんはな、 ちゃんと手に入るようになってますさかい。

第8章 河津桜が咲き誇る 456話

阿蘇の桜は、気が長い。東北と変わらぬほど遅い。 しびれを切らした住人たちが、河津桜を植え始めた。早咲きのその桜は、もう八分咲きのものさえある。濃いピンクの並木が、立野瀬田線をひっそりと彩っている。 梅か桜か、僕にはいつも判断がつかない。 うちの河津桜は、もう散ってしまった。冬のうちに、咲いてしまっていたのだ。あれは本当に河津桜だったのだろうか。色も、記憶よりずっと薄かった気がする。 大地は変わっていく。桜も、虫も、鳥も、黙ってそれに付いていく。 では、我々は。 相変わらず、話し合いばかりだ。遅い。遅すぎる。 「へー」 と、不二子はうなずいた。

第8章 勇気ある冒険者しか生き残れない 455話

千匹のオタマジャクシなど、よく見る光景だ。 観測をつづける。 多くは集団で行動する。 しかし、その中から数十匹が冒険を始める。 やがて二十メートル先の対岸へ到達する。 その頃、群れに留まったオタマジャクシは、 鳥類によって全滅している。  不二子は、 静かな眼差しで、田んぼとよしろうを見つめていた。

第8章 産卵 454話

きっと今朝は暖かいので、残りのカップルガエルが産卵しているに違いない。 今年、後谷の田んぼでは凄まじい産卵が起きている。 初年度は、冬に水を張っても産卵はなかった。 そこで翌年、杉の園の田んぼからアカガエルのおたまじゃくしを入れた。今いるのは、その子孫たちだ。 今ではヒキガエル君さえ選ぶ生息場所になった。 彼らは2kmほど移動できる。 杉の園は浅く水を張っているため、カモ類は少なくなった。 代わりに、タシギが生息している。 カモやカイツブリは、おたまじゃくしを全滅させる。 性質が悪い。 「どっか行け」とロケット花火。 僕は自然愛好家ではない。 統計的に見ている。 ロケット花火の対象は、増えすぎた個体だ。 守るカエル君は、絶滅に近い個体。 ある程度の調整は必要になる。 本来、カエル君が成長できるのは1%未満。 多くは、他の生き物の餌になる。 全体を増やすには、餌が多くなければならない。 悪魔でしょ? ぼく様。 それができる悪魔は、 観念や常識にとらわれ過ぎて何もできていない者と、違う場所に立っている。 なんでも観測するさ。 不二子曰く 「案さんが悪魔ならお天道様も雨は降らせんやろ」 

第8章 あめのあさ 453話

箱根の湯から帰宅した不二子。 また一段と綺麗になった。 人が老けるのは仕方ない。 しかし、身体や心が老けるかどうかは、その人の思い込みの積み重ねで決まる。 「60歳だから何々だ」という決めつけは、老いを加速させる。 ぼく様は、40代と変わらない身体能力と、 40代では到底及ばない思考能力を保っている。 自己メンテの大切さは言うまでもない。 ぼく様は、90歳でも元気な方とよくお話しする。 これはとても大切な観測だ。 彼らはこう言う。 もう今は、先のことを考えないようにしている。 その方が気楽でいい。 言い当てて妙。 ストレスを減らす。 希望を持つ。 まだ夢を抱く。 恋愛さえできる。 そのような心の在り方こそが健康なのだ。 寿命もまた、老いと同じく、受け入れるだけでよい。 不二子はんが131歳にして美貌なのも、 そうして出来た結果なのだろう。 「よしろうはん。あら、うれしい。 でも今日は、なんも出しまへんで(笑)」 そのかわり、はい。 箱根の湯名物、ちもとの御菓子―― 湯もち をどうぞ。 「ふわっとおいしいで。 うちみたいやろ(笑)」

第8章 決戦の火曜日 452話

よしろうはん、今もカタカタとクロちゃんとお話ししている。 相当な知識量をこの半年で学んだようで、これは今後も永遠に続くだろう。  Biosphere lifespan——生物圏の寿命という視座 この考え方で逆算して生物圏寿命を延ばすための策を行えばいい。 理想を言ってもたわごとだ。現実を見て対策するほうが確かである。 「えろー難しい事考えてはりますな」 え? 「難しい事はエンドを決めると逆にわかるやろ?」 へー 「そういうことでっか」 「そうやで」 「目の前の現象を紐解くから物理学だ数式が必要、これそんなんいらんで」  へー 「エネルギー使いすぎるから使わないぼく様の田んぼや、実は二酸化炭素は必要やとかいろいろあるで」 「二酸化炭素はまだしらべなあかんけど、今地球は氷河期であっても可笑しくないねん。実はな」  へー 「で?何の決戦日やんか?」  はぁ? 「内緒や。。」 

第8章 かんちがい 451話

不二子はんの留守中。 田んぼに寝そべり、空を見上げていた。 カラスの群れ。 まあ、以前よりは増えた。 晴天の朝。 思考がどこかで立ち止まると、ぼく様は太陽光に向かって仰向けに寝そべり、しばらく目を閉じる。 網膜に映る赤い景色が、白にほどける頃、目を開ける。 シアンの世界が見える。 美しい九州島の色だ。 ――そうなんか。 「ぼく様は、かんちがいしていたのか」 カラスの群れ。 美しいうめの花。 C3植物の葛の山。 「ここは、相変わらず田舎なんだな」 昔の方が美しいが、五十年前と、さほど変わらない景色が、そこに在った。

第8章 おはよう 450話

大豆がたくさんありまんねん。 そんでもってぼく様がだいず、すきやねん。 朝食は呉汁。ねぎと味噌のみ。出汁がなんもなかったけどおいしいわ。 でもこれって出汁つかうか?  大豆はいつかはまた自分でも作ろうと思うけど、一廉の奥方夫妻が作ってくれるから。。買う。 それに殿方の韓国唐辛子も絶品やねん。 それでペッパーソース作るけど、これがまた旨い。 不二子はんは箱根の湯にご旅行。 作者さんが勤務する会社のグループで箱根に宿がある。 https://sengokuhara-hisanoha.com/   ええな。 ぼく様も行きたいで。