第4章 米の味 319話

田んぼを、上から見るよしろう。

今年の米の味は、よくないな。
最近、そう思う。少し、痩せた味に変わっている。

理由は分かっている。
十年間の無施肥だ。

十年目にして、うちの田んぼの土壌は、
栄養分を使い果たした。
今年の稲は、はっきりと秋落ちをしている。
それは、事実として確認している。

冬季湛水は、地下水の確保、土壌ミネラルの補充、
そして生物多様性の維持には効果がある。
だが、栄養補給という点では、疑わしい。

十年かけて、ゆっくりと、
土壌の栄養分は底を尽いた――
そう判断した。

藁の分解による栄養流出を防ぐため、
水位は低く保っている。
だが、これは対症療法にすぎない。

根本的な変更が必要だ。
裏作か、あるいは緑肥か。

よしろうはんは、
田んぼを見ながら、そう考えていた。

不二子が、うしろから。

つんつん。

「うん?」

「なに、かんがえとんや?」

かくかくしかじか。

「そうけ……」

「ほな、不二子が、よしろうはんに教えたるで」

「ほう。なんやろ?」

「ケミカルフリーそれだけでええ。

そなたの願いはすでに叶ってますえ。

無ければ足す。

足りるなら、足さない。

――不二子は、そう思うでぇ」

「あ。それか!2年に1回しか堆肥を撒かないという農家が居たわ」 

 

 

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