参考文献

「炭素を増やす農業―表土を作る」

 

<地球セミナ130-1 D・モンゴメリー著「土・牛・微生物」第11章>

<風鈴士>

この章ではオハイオ州立大学炭素管理・隔離センターセンター長のラッタン・

ラルに会い、不耕起栽培が炭素をどれほど地下に戻せるかを確認している。実験

圃場では1990年から25年間、化学肥料、堆肥、牛糞を使ってトウモロコシを育

て、生育状況がどのように変化するか調べていた。牛糞を施したトウモロコシは明

らかに優れ、化学肥料を施したものより緑が濃く、三割ほど背が高かった。また、

20年以上にわたって、化学肥料による慣行農法と堆肥による不耕起堆肥農法と

の比較を行い、慣行農法の土壌は薄茶色できめ細かい粘土質で、堆肥を施肥し

た土壌は黒っぽく腐植していて粒が大きく、いかにも肥沃であることを確認でき

た。この実験で堆肥が土壌炭素を大きく増やすことと、新しい土壌が6倍の速さで

形成されることを確認していた。

                                  ラッタンラル
                                           ラッタン・ラル氏
  2019年度、「生物生産、生体・環境」分野で1月16日に日本国際賞を受賞



<炭素を土中へ>

不耕起と合わせ被覆作物を取り入れ、さらにマルチを施す農業は土壌有機物

を明らかに増やすことができる。土壌に有機物(炭素)を取り入れると、それを養分

とする生物や微生物の栄養循環が良くなり土壌全体のバイオマスが豊かになる、

結果として作物の収穫量が増える。

ラッタン・ラルは世界中で環境保全型農業の三原則(土壌のかく乱を最小限に

する、被服作物栽培するかマルチを施す、多様な輪作をする)が実行されると世

界の化石燃料からの二酸化炭素の5~15%を土中に返せると推定している。

ル氏が挙げている農法での全炭素隔離量を計算すると、最低でも毎年4億トン、

楽観的に見積もれば、最大で12億トンの炭素を隔離できる可能性があるとしてい

る。

環境保全型農業による土づくりは化石燃料のCO2排出量削減技術と違い、今

すぐに実行することができ、しかも合理的に農産物を確保することができる。
               
                      炭素循環
                               Wikipediaより画像を引用)

<根菜が高める土壌栄養素>

土壌の炭素隔離の実現可能性についてオハイオ州のデイビット・ブラントの農

場を訪問する。彼は40年間にわたり土つくりの実験を農場規模で実践してきた。

彼は被覆作物革命の第一人者と言われており、960エーカー(800エーカーが

借用)の農場でトウモロコシと大豆を非慣行農法で栽培している。一つの畑で最大

十種類のマメ科植物と大根類を植栽し、これらが成長した後、その場で腐らせて

土壌炭素を増ヤシ、肥沃化を図っている。

彼は炭素が0.5%未満の土地を被覆作物の栽培を取り入れ数十年をかけて

8.5%まで高めることができた。これは近くの自然の森の土壌炭素量6%と比べ、
大きく上回っている。

変化の主役は大根で、植えてからわずか2か月で主根が地下1メートルにまで

伸び、土中深くから栄養素を吸い上げてくれる。冬に大根が腐ると、残った大きな

縦穴が土壌の浸透性をよくして、耕したと同じ状態になる。同時に、腐植によって

土壌可給態リンを増やし、窒素などの栄養素を土壌に還元してくれる。土壌を分

析するとエーカーあたり250ポンドの窒素と同量のカリウム、23ポンドのリンが循

環していることが解る。また、ヒマワリなどは地中深くの亜鉛を地上に運び、ヘアリ

ーベッチとノエンドウはエーカーあたり100~200ポンドの窒素を増やしてくれる。


<農場破産の原因>

ブラントは対照圃場を使って典型的な慣行農法と不耕起農法によるコストを比

較を行い、慣行農法では収益が見込めないことを実証している。

慣行農法ではエーカーあたり農薬や肥料など502ドルの投資に対して収穫は5

00ドルを割り込み、作付面積が大きいほど損失も大きくなる。一方、不耕起農法

ではエーカーあたり320ドルの投資に対して収穫は690ドルとなり370ドルの収

益が出ている。

ブラントの農場では除草剤を半分以下、燃料を五分の一、化学肥料を十分の一

しか使っていないのに、近隣の慣行農家を上回る収穫を上げている。

隣の720エーカーの集約型農場においても燃料代を払う前からエーカーあたり

120ドルの赤字になり、このモデルが投入コストが高く商品価格の低いことによる

農場破産の典型例である。

<成功の鍵は多様性>

ブラントは40年前に400エーカーの農地でトウモロコシの不耕起栽培をスター

トさせ、当初はうまくやっていたが、単一栽培と少ない作物残渣のもとでは地面が

固くなり、数年もすると収量が落ちてきた。1978年から、さまざまな被覆作物の

単一栽培を試し、ヘアリーベッチがとても効果があったので20年間実験を続け

た。1997年エンドウ類とダイコンを試し、土壌のいっそうの改善が見られるように

なった。さらに被覆作物の種類を増やし5種、6種、7種の混植を行ってみた、多種

類の混植が土壌改良を促進することを突き止めた。ブラントの大豆畑の収量はエ

ーカーあたり65ブッシェルに対し、隣接する慣行農法の畑では25ブッシェルであ

った。

ブラントは不耕起栽培を成功させる鍵は被覆作物の多様性にあるとし、特に窒

素固定作用のある被覆作物を植えると、翌年からは窒素肥料を半減できることを

突き止めた。これは費用の削減だけでなく環境汚染を防ぐ効果もあるとしている。

<世界が注目する農場>

ブラントの農場にはいつも被覆作物の話を聞きに多くのお客が訪れる。彼は来

訪者に被覆作物を混作することによって収穫が安定し土壌炭素が年に0.5%ア

ップすることを強調した。フランスの農業大臣ステファヌ・ル・フォルも来訪者の一

人で、彼は世界の土壌有機物を増やすためとしてスローガン「1000分の4」の準

備をしていた。これは土壌炭素を年に0.4%増やすことを目的としており、まさに

ブラントが実践している農法である。2015年パリで開催されたCOPで「1000分

の4」が提案され世界の農法を変える可能性が話し合われた。残念ながら決議案

とはならなかったが、この提案は世界に知れ渡ることになった。

<庭に見る土壌の回復>

土壌の健康を定量化して数字で表すのは簡単ではない。ローテクではあるが

簡便な方法としてオーブンで炭素を焼き尽くし、その重量を図る方法がある。モン

ゴメリーとアンが有機物を加えて作った自宅の庭の健康度をこの方法で調べてみ

た。15年間のマルチングと堆肥によって土壌炭素が劇的に上がっていることが解

った。花壇では9%に近い値、菜園では15%とテラ・プレタに近い値を示した。

土壌炭素は植物を直接養うものではないが、収量には密接に関係している。ラ

ッタン・ラルは土壌有機炭素量がヘクタール当たり1トン増えると、開発途上国で

のコムギ、コメ、トウモロコシの収量が年間2400から3900万トン増加すると試算

している。今後数十年の人口増加に対して年間3100万トンの食糧増産の必要が

あるとされるが、この値はそのほとんどを賄えることを表している。


参考文献

「土 地球最後のナゾ」藤井一至著 光文社出版

「土壌微生物のきほん」横山和成監修 誠文堂新光社出版

   「図解 土壌の基礎知識」藤原俊六郎著 農山漁村文化協会出版

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