第4章 1年戻り 303話

昼前には天気が回復しそうな、或る日。
八朔がたわわに実っている。今年は百個近くできた。無人販売に出してはいるが、最近はとんど売れない。
それでも木には、まだ三十個以上残っていそうだ。

一廉の奥方様がお好きやったな、と思い出し、一緒に千切って差し上げようかと考えとる。
そうすれば木の負担も軽くなり、来年もまたよう実るわ。

「不二子も手伝いますえ。楽しそうどす」

「おお、頼むわ」

「一廉の奥方様に、お茶お願いな。
 こんなにようけ貰ってくれはるなんて、ほんま奇特な方や」

「へえ。うちも一度お逢いしたい思うてましたさかい、おまかせを。
 きっと、ええお友達になれそうな気いします」

「だいじょうぶや。見分けははっきりしてはるけど、優しいお方やで」

「へえ。うちとおなじやな」

ふふん(笑)

「同じや。
 不二子と同位相の人物やで」

「そうやと思てた(笑)」

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