第4章 Betta splendens(ベタ・スプレンデンス) 310話
「不二子はん、魚、ええの買うてきたで」
「へえ。今晩は、なんのお魚食べはりますの? 見せてみ」
「ほれ、これや」
「……?」
「これ一匹? それに、メダカみたいな小さな魚?」
「そうや。これが旨いんよ」
「冗談、わかってますえ。これ、なんのお魚どす?」
通称 ベタ
正式名 Betta splendens(ベタ・スプレンデンス)
分類:
- スズキ目
- キノボリウオ亜目
- オスフロネムス科
- ベタ属
一般に「ベタ」や「闘魚」と呼ばれる観賞魚で、
タイやマレーシアなど東南アジア原産の淡水魚。
「そうなんやな。熱帯魚どすか」
「なんかな、この村に“熱帯魚”て暖簾の出てる魚屋があるんよ。
行くたび閉まっててな。今日はたまたま店主が隣の家におられて、やっと買えたんや。
建設会社の息子が熱帯魚好きで、親父さんが応援してるらしい。
奥から綺麗な娘さんが出てきてな、『あ、門出の方ですよね』言われて、
ここが昔ラーメン屋やった時の女将やって気づいたんよ。
旨いラーメン屋で、よう通ったわ」
「不二子も見てみたい。その熱帯魚屋さん」
「ええで。アロワナとか、爬虫類みたいな魚もおってな。
意外と広うて、ぎょうさんおるから驚くで」
「へえ。ほな、今から行こか? よしろうはん」
「そういう性格、ぼく様は好きやで(笑)」
「ほな、行こ」
そのまま二人は、熱帯魚屋へ向かった。
ジェラシック・パークよりも、
実際に泳ぐ怪獣の様な魚の姿が二人を夢中にさせた。
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