第12章 時代の姿 595話

田植えの朝。

「よしろうはん。」

不二子はんは縁側でレモン水をひと口飲んだ。

ツバメは交差するように、何度も空を切って飛んでいる。

不二子はんは、その姿を目で追いながら微笑んだ。

「今の六十は、昔の六十やおへんな。」

よしろうはんも空を見上げた。

「そうだな。六十の景色も変わったな。」

しばらく二人は、ツバメの飛ぶ音だけを聞いていた。

不二子はんが静かに言う。

「人は年を重ねるんやのうて、時代を重ねて生きるんや。」

よしろうはんは静かにうなずいた。

「だから、歳を数えるより、今日何を始めるかのほうが大切なんだ。」

ツバメはまた交差しながら、高い空へ消えていった。

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