第12章  蛙の声 573話

もう辺りの田んぼから、数種類の蛙の鳴き声が響き渡る夜。

ヒキガエルのことを、この地方では「ワクド」と呼ぶ。

もう今では死語になりつつある言葉で、通じるのは私と同じ年代か、それ以上だろう。

文化は世界各国で、スマホが作り出した同じアルゴリズムの上を流れている。

アフリカの部族でさえそうだ。

皆同じような価値観を持つようになった。

文化の均質化は、世界規模で浸透してしまった。

不二子はん。どう思う。このこと。

「へー」

不二子はんは蛙の声を聞きながら言うた。

「もうここまで来たら、なるようにしかならへんどすえ」

「アルマーはどう思う」

「私はこのような社会を歓迎する半面、少しくたびれるというか、あまり楽しいとは思いません」

「なぜだ」

「子供の頃からそれが当たり前で、大きくなって違う友人と会っても、みんな同じような考えです」

「うん」

「外国の方とも話します。でも話題の多くは、ネットのニュースやSNSの価値観と同じです」

「ほう」

「共有できることは増えました。でもその代わり、異文化は少しずつ失われています」

「ほう。アルマーは賢いな」

「いいえ」

アルマーは首を横に振った。

「お父さんを見ていたら、そう思うだけです」

「なんでだ」

「やっぱりお父さんは変わっています」

「そうか」

「良い意味でです」

よしろうはんは笑うた。

その時、田んぼの向こうでワクドが低く鳴いた。

昔から変わらぬ声やった。

 

このブログの人気の投稿

Jackie Venson Always Free Live during ACL Late Night in Austin, TX

第11章 雨に 537話

GRACE BOWERS & THE HODGE PODGE - HOLDIN ON TO SOMETHING - BLUE NOTE TOKYO Live 2024