CASA BLANCA 流域浄化農業構想

 

新川芳朗 構想ノート 水系浄化農業システム——山から海へ

2026年6月

一 構想の核心

山から平地、干拓地、そして有明海へと続く同一水系を、段階的な生物的浄化システムとして設計する。各地点の田んぼが水路の一部として機能し、余剰養分を吸収・分解しながら下流へ渡す。農業と環境工学が一体となったシステムの構築が目標だ。

二 問題意識

干拓地帯の農業用水は長年の施肥が蓄積した富栄養化状態にある。この水がそのまま有明海へ流入し続けることで、海の環境劣化が進む。農業が海を汚染するという矛盾を、農業自身が解決できないか。

三 システムの構造

山の田んぼ 清澄な水を受ける。地力のみに依存した無施肥・無農薬の基本形。水系の起点として最も純粋な実験条件。

平地の田んぼ 中間的な養分濃度の水を受ける。VA菌根菌・温湯消毒・木酢液・深水除草という低環境負荷の体系を適用。養分を部分的に吸収しながら下流へ渡す。

干拓地の田んぼ 富栄養化した水を最終的に受ける。飽和状態の養分を稲が吸収・固定することで無施肥でも生産が成立する。浄化された水を有明海へ流す。天明新川沿いが候補地として有望。

四 技術的な根拠

現在CASA BLANCAの実験田(1町)で確認されていること。

VA菌根菌接種により発根が促進され根が深くなる。初期生育が加速し、稲と雑草の間に12cmの高低差が生まれた。満水管理により雑草が窒息・藻に負けて死滅。除草剤不要の体系が成立した。

木酢液100倍・展着剤併用・動力噴霧機による1反あたり50〜100リットル散布で、ひどいいもち病でも1回散布で収束する。20倍は局所対応、10倍は葉焼けが出る。

10年間の自家採種・無選抜の多様性種子集団は、単一品種圃場と異なり病気がほとんど発生しない。遺伝的多様性そのものが防御機能を持つ。

温湯消毒と木酢液は設備投資なしで実施できる。ネパール人農家にも即座に伝達・応用可能な技術として確認済み。

五 多年生稲との接続

天明新川沿いでの多年生稲の可能性を研究中。毎年の耕起・田植えが不要な多年生稲は、水処理システムとして継続的に機能させるのに適している。根が永続的に張り続けることで養分吸収も安定する。

六 現在の実績と今後

実験田1町で直播・無農薬・無化学肥料・VAM接種の体系を実験中。生産圃場5町で田植え・有機肥料微量・低環境負荷・生産重視の体系をすでに運用している。直播の収量が田植えに及ばないことが現時点での最大の課題。養分不足が主因と見ている。VA菌根菌がこの課題に効いている兆候が今季の観察で出ている。秋の収量比較が次の検証点。

七 目標

無農薬圃場の拡大。水系全体を生物的ろ過システムとして設計・実証する。大きな圃場で成功しなければ意味がない。この体系が成立すれば、有明海への養分流入を農業システムとして削減できる。

八 思想的な背景

選抜しない。自然の応答を見る。大きな圃場で確かめる。プランターで仮説を立て、圃場全体で実証する。完成していない技術は伝えない。この姿勢がCASA BLANCAの農業研究の基本にある。

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