竹酢液によるいもち病防除 ― 観察と理論の統合

 

竹酢液によるいもち病防除 ― 観察と理論の統合

竹酢液100倍希釈・展着剤入りの散布は、いもち菌(Pyricularia oryzae)の胞子に対して、接触後30秒程度で発芽管の伸長を阻害する可能性がある。これは殺菌ではなく発芽無効化であり、感染成立そのものを防ぐ作用として理論的に整合する。

雨の合間での散布が有効なのは、湿潤状態の葉面で竹酢液の拡散が均一になり、胞子との接触機会が増えるためと推測される。仮に30秒でも作用するなら、その後雨で流されても感染は成立しない。

ただし降雨中は新たな胞子の飛来も続くため、翌日の晴天時に再散布することで感染の窓を二段階で閉じるのが確実である。

問題の本質はパッシブセーフティーとアクティブセーフティーの両立にある。

多くの栽培者は雨天を理由に何もしない。しかし、いもち病は待ってくれない。雨の合間に介入するアクティブセーフティーと、翌日確認するパッシブセーフティーの両方が必要なのは、苗箱という環境が本質的に不自然だからである。

自然栽培はしばしばここで誤解される。

自然に任せるという姿勢は、自然環境では成立する。しかし苗箱は自然ではない。高密度播種、過湿、制限された根域という人工環境である。

不自然な環境を作りながら自然に任せるのは、自然農法ではなく放任である。

苗箱を使う以上、その不自然さに対して積極的に介入する責任がある。竹酢液の適切な使用はその一形態であり、農薬に頼らない選択肢として実地の観察に裏打ちされた有効な手段たりうる。