第12章 燕の巣 592話
「五十年ぶりやて。」
不二子はんは玄関の軒先を見上げた。
燕が巣を作っていた。
「若い頃はよう来てくれてましたのに。」
懐かしそうに目を細める。
「お義父さんが汚れるのを嫌うて、見つけたら壊してしまわはったんです。」
燕は気にもせんように巣材を運んでいた。
不二子はんは小さく笑うた。
「ほんま、久しぶりですわ。」
風が吹き、燕が一羽、空へ舞い上がる。
「今年は、ええことがあるかもしれませんな。」
そう言うて、不二子はんはしばらく空を見ていた。
ほんかいな?とよしろうはんは思っていた。。