第3章 おかえり 275話

ただいまー

台所で皿洗いをする不二子

「おかえりやす」

「おー不二子はんやないか」

え?なんかいつもとちゃう。普通なら透きとおって見えるがそれがない?人間みたいや。

「あのー不二子はんどこ行ってたんや?」

「冥土どす」

和装の不二子が台所に立っていた。後ろ姿だけが見える。

一枚また一枚と、丁寧に皿を洗っていた。

ようしろうが近づく。

なんかどきどきするで……

触ったらわかる。半透明人間のようにすっと手が抜けるからの……

もうあと一歩。

「なに作ってるさかい?不二子はん」

よしろうが不二子を後ろから抱きしめる。

あっ!  

バツーン ババーン ビリビリ

電気が走った。

人間の感触。

やわらかい肌、首筋からかおるほのかな女の臭い。

不二子は抱きしめられたままうつむいていた。

沈黙の数秒。

ふたりは同期して時間をさ迷った。

世界がグルグル回る。

されどこの安ど感。

なんなんだ?

驚きながらもこのままでいたい気分であった。

...........。 

「不二子はん」

「へー」

「人間にもどったんやな」

「そうどすみたいやわ」

「このままずっといてくれ」

「へー」

「そやから帰ってきましたえ……」

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