第3章 縁側で 259話

縁側の柱にもたれる不二子。その先には小川が流れている。
霜月でも今日は小雨が降って寒くもなく、暖かくもなく。
「あったけー。あったけー。なんどすか? これが生きてることどすか」
体が芯から暖かい。そんな感触に入り浸っていた。

よしろうはんの軽トラックが家路に着く音。
ぶぶーん、ごろごろ キィー……。

「ただいまやでー不二子はん」
「お帰りやす。いい写真撮れましたどすか?」
「そやな。さっぱりや。今日は雨で光が足らんかった、でもなええとこ見つけたで」
「そうか、そりゃよかった」
「なあ、うちの手さわってみ」
「おう。ちょっと手を洗ってからな」
「そなんええどす。さわってみ?」
「そうか。では」
「ん?」
「どや?」
「いつもより暖かいでぇ」
「そやろ。うちな、人に戻ったんどす」
「?」
「閻魔様に戻してもらいやした」
「ほんまか!そらええ、よかったな不二子はん」
「へー。あなたの妻にしてください」
「!?!?………………ええでぇええでぇ。さいこうや!」
「えぇ……と、どうしてこうしてそうなったん?」
「こうして、あーして、こうなったんや!」
 

いつまでも会話の途切れない二人であった。

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