第3章 「今夜はな、かぶのあんかけや」 262話

「今夜はな、かぶのあんかけや」

「また女子が好きなとこ、突きはるなぁ」

「皮むかんと煮たら、甘みがどひゃー・じゅわー・どびゅんや」

「どびゅんて……(笑) なんやそれ」

「口に入れたら、舌の奥でとろける感じや」

「……あら。そない言われたら、食べたーなるやんか」

「せやろ。不二子はんの好きな感じや」

うちはそない単純ちゃうで......

「ほな、試してみぃや。きわどいところまで優しく芯残してあるでぇ」

「……ほな、いただこか」

「ほれ、あーん」

沈黙のあと、

「……ん、やらしぃぐらい甘いな、茹で加減最高や」

「せやろ。味醂も砂糖も使わん無農薬の自然の味ほど、えろいやろ(爆)」

「よしろうはん...」

袖を引っ張る不二子。

「なんや?」

「今夜はちょいと煮えたいかも......」

「ええやないか! ええやないか! 煮詰まる夜も」

「きまったでぇ!」 なぜか江戸弁..こぶしを握り締める。

男の料理は実はこれが欲しいんよ! 、どうや!ぼく様の口説きはとどいたで!なんやら調子に乗るよしろうはん。

それ、いっちょあり。こんどは蕪の酢漬けやぁ.....難関?南関あげの巻きずしやぁ....! おいしそー!

二人の笑いが、鍋の湯気にまぎれて消えた。

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