<仮説>微小位相差理論:写真家の視点から見た存在と運動

 

微小位相差理論:写真家の視点から見た存在と運動

新川芳朗
2025年11月


要旨

 連続撮影された写真の「ずれ」—それは単なる時間経過ではなく、同じ場所の異なる位相として存在している。

微小位相差理論:写真家の視点から見た存在と運動

新川芳朗 2025年11月

要旨

本論文は、40年間の写真実践から導き出された、存在と運動に関する統一的理解を提示する。中心概念「微小位相差」は、すべての存在が同一の場に微妙なずれを持って重層的に存在するという概念である。

幼い頃、私は知っていた。宇宙の果てには宇宙があり、宇宙の中には宇宙がある。そのまた宇宙の中にも宇宙があると。それは星を見上げる少年の直感だった。今や写真を通じて、それは私の概念となった。

1. 写真家の発見

写真を撮るという行為は、時間を切り取ることだと言われる。しかし40年間レンズを通して世界を見続けた結果、私が気づいたのは逆説的な事実だった。写真は時間を切り取っているのではなく、時間の厚みを露わにしている

連続撮影した2枚の写真を並べると、それらは「別の瞬間」であると同時に「同じ場所の異なる位相」として現れる。雲の位置、光の角度、波の形状—これらは単に時間が経過したのではなく、微妙にずれながら同時に存在しているように感じられる。

この体験的認識から、一つの問いが生まれた: 世界は本当に「別々の瞬間」に分割されているのか、それとも重層的に存在しているのか?

この「ずれ」を私は微小位相差と名付けた。

2. 基本原理

 エネルギーの保存

宇宙のエネルギーは創造時から最大値として存在し、増減しない。

増減しているように見えるのは、私たちが部分的な過程を観察しているからである。ある場所でエネルギーが現れれば、別の場所でエネルギーが別の形態に転換している。宇宙全体としては、常に同じエネルギー総量が異なる位相的配分として存在しているだけだ。

(例として地球での水のサイクル 雨→海→蒸気→雨など。数億年単位ではほぼ一定。)

3. 時間の再解釈

時間には幅がある。現在も過去も未来も、微小にずれて重層的に存在している。

私たちは時間を直線として理解している。過去から現在へ、現在から未来へと流れる矢印として。しかし写真を撮り続ける中で気づいたのは、過去も未来も「今ここ」に重なっているということだ。

連続撮影した写真を見る。一枚目の雲の位置は「過去」、三枚目の雲の位置は「未来」。しかし、それらを同時に見ているとき、過去も未来も現在と同じ場に存在している。分離しているのではなく、微小な位相差で重なり合っている。

これが時間の本質である。 過去は消えていない。未来はまだ来ていないのではない。すべてが異なる位相で、今この瞬間に重層的に存在している。ただ、人間の意識が物質的な脳という制約の中で、それを「流れ」として認識しているだけだ。

時間に幅があるということは、「今」が点ではないということだ。今この瞬間の中に、わずかな過去とわずかな未来が含まれている。それらは分離されておらず、微小位相差によって結びついている。

4. エントロピーと視点

エントロピー増大の法則は、観察者の視野の狭さから生じる見かけの方向性である。

マクロレベルでは、エネルギーは集中から拡散へと移行するように見える。しかしこれは狭い視点から生じる見かけの方向性である。宇宙全体としては方向性は存在せず、完全な無秩序状態である。

5. 生命と運動

「微小位相差」そのものが、生きるという運動エネルギーの源泉である。

完全な同一性は静止を意味し、完全な分離は相互作用の不在を意味する。微小な差異のみが運動を可能にする。

宇宙の本質は運動にある。動く星、動く銀河、膨張する時空。静止は存在しない。すべては過程である。この運動性こそが、神という人格化された概念ではなく、「生のエネルギー」として理解されるべき根源的実在である。

6. 日常性

微小位相差は日常に存在している。

朝起きること、歩くこと、考えること。すべてが微小位相差の運動である。写真を撮ることも、構図を決め、シャッターを切り、現像することも、位相の選択と定着である。

理論と生活は分離されない。思考も感覚も、すべて動く宇宙の一部である。

7. 結論

40年間、毎日世界を見続けた結果として、この理論がある。それは実験室ではなく、海辺で、山で、街で、発見されたものだ。

科学的検証は未来に委ねられる。しかし、世界を見る一つの統合的視座として、また写真という媒体が持つ哲学的可能性の探求として、本理論を提示する。

微小位相差理論は、時間・存在・運動の理解を再構築し、人間が世界をどのように見るかを問い直すための一つの道標となるだろう。

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