第二章 京都大原へ 253話
大原の寂光院へ向かう不二子。
途中大原のフレンチレストラン la buche(ラ ブッシュ/la bûche)に立ち寄る。
貿易港長崎生まれ、大正ハイカラさんの不二子にとってそれはしごく日常であった。
「ああ。儀一郎さまと長崎のグラバー園あたりで夕食をご一緒して楽しかったのを思い出す」
「なつかしかぁ」
「お肉もおいしいわ。このお店もなかなかのもんや」
「よしろうはん、しば漬けすきやったな。大原の女性に教わったとか言ってたな」
「お寺巡りもええけど、うちはこっちが落ち着くわ」
「よしろうはん今頃なにしてるやろか、稲刈りまだある言うてたな」
「もう心は決めたから、そろそろ帰らんとな」
「よしろうはんか、、、変な人。でも儀一郎さんと同じくらい賢いわ、顔は儀一郎さん。うふふ」
デザートは若桃の甘露煮にございます。コーヒーと紅茶。いかが致しましょうか。
紅茶て普通の紅茶か?
はい。大原の無農薬和紅茶で御座います。
そうか。和紅茶いただきとう御座います。
はい。かしこまりました。
時はたち。昼時を過ぎ、それでも不二子は店の中で外を眺めていた。
「ええ時や」
「お寺巡りはやめてよしろうはんの元へかえろうか」
「よしろうはんひとりで、こんな寒い日に稲刈りさせるなんて、うちにはできひんわ」
さあ、帰ろう。
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