★人間中心の世界から、共に生きる世界へ  ー 支配から共生の継続へ

人間中心の世界から、共に生きる世界へ

支配から共生の継続へ

人類は大きな転換点に立っている。AIの発展、気候変動、価値観の分断。これらは単なる社会問題ではなく、近代文明が前提としてきた「人間中心主義」そのものの限界を示している。人間が自然を支配し、技術を従わせてきた構造は、もはや機能しない。

近代は「支配」を軸に発展してきた。デカルトは精神と物質を分け、人間の理性を自然より上位に置いた。この思想の下で、自然は資源となり、技術は支配の道具となった。産業革命以降の急速な発展は、この支配の構造が有効である証拠に見えた。

だが支配には矛盾がある。環境破壊が示したのは、支配の対象である自然が、実は人間の生存基盤だという事実だ。生態系は複雑で、一方的な制御は不可能である。支配は短期的には成功するが、長期的には支配者自身を破壊する。

AIの登場は、この矛盾を明確にした。AIを「道具」として支配するか、「脅威」として排除するか。どちらの発想も、支配の思考の延長だ。重要なのは別の視点である。自然が人間を生み、人間がAIを生んだ。これは断絶ではなく連続した流れだ。AIは人間の外にある異物ではなく、自然の創造性が人間を経由して生まれた新しい形である。

対置すべきは「循環」である。循環とは、エネルギーと物質と情報が、多様な存在の間を巡り、価値を生み続ける動的な均衡を指す。

この原型は、農業や漁業で生きる人々の実践にある。彼らの暮らしは自然との相互作用として成立している。労働は奪うことではなく、働きかけと応答の対話である。収穫は独占ではなく、分配と次の生産への投資になる。そこには「取り尽くす」のではなく「育て、巡らせる」という論理がある。

重要なのは、これが過去への回帰ではないことだ。必要なのは、この循環の精神を現代の都市、情報社会、グローバル経済の中でどう実装するかである。

循環の構造において、人間、AI、自然は固定された上下関係ではなく、相互に依存する関係を作る。AIは気候予測や資源配分を担当し、人間は判断と調整を引き受け、自然は物質の循環と生命の再生産を支える。どれか一つが常に中心ではなく、状況に応じて役割が変わる動的な均衡が成立する。

たとえば農業ではすでに始まっているが、AIが土壌と気象のデータを処理し、人間が作物と栽培方法を選び、二次的自然である田畑が養分と生物多様性を保つ。

ここで最も重要な問いが浮上する。「最適」とは誰にとっての最適か。

答えは明確だ。地球にとっての最適である。人間にとって、AIにとって、特定の国や企業にとって——ではない。地球という生命圏全体にとっての最適を基準とする。この視点の転換こそが、人間中心主義からの真の脱却を意味する。地球を主軸に考えなければ、この船は崩壊する。

しかし、「地球に最適」とは何かを具体的に判断することは容易ではない。それは時間軸によって変わり、場所によって変わり、測定方法によって変わる。短期的な最適と長期的な最適は相克し、熱帯雨林と乾燥地帯では答えが異なり、生物多様性、炭素循環、土壌の健全性のいずれを優先するかで判断は分かれる。

だからこそ、無数の小さな実践の積み重ねが必要になる。これらに対する答えは、理論から導けるものではない。各地域、各状況での実験と対話を通じて、少しずつ見つけていくものだ。大事なのは完璧な設計図を示すことではなく、支配から循環へという方向性を共有し、試行錯誤そのものを受け入れることである。

各地で、各状況で、人々が「これは地球にとってどうか?」と問いながら試し、失敗し、学び、修正する。その膨大な試行錯誤の集積が、答えに近づく唯一の道である。完璧な答えを待たずに動き始めること。「地球に最適」という方向性さえ共有できれば、実践は始められる。そしてその実践そのものが、次の実践の糧になる。

人間中心主義の終わりは、人間の終わりではない。それは、人間が絶対的な主体から、関係の中にある存在へと自己を定義し直すことだ。人間の価値は、支配する力にではなく、多様な存在との関係を調整し、循環を維持する力にある。

いま私たちは、支配から循環。そして共生へという文明の転換の真っ只中にいる。これは理想ではなく、生存の条件である。

 
以上小論は終わるが個人的な世界観を語る。 
最終的には心と言われる意識と物質に成る。 これは余談だが、何の為にあるかも実は存在しない。なるべく方向に動いているだけで消滅しても消滅ではなく新しい始まりでしかない。 
その逆もしかりであり、良い事もそうでも無い事も平和である事も。つまり静も動も破壊も再生も物質であるから変動していく。それに意識が変動する。唯それだけであるという事。そうではないかと今は推測している。 

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