第7章 可視光のトリック 四三七話

人の可視光域は 約380〜750 nmしか見えないが、

不二子の体は740nm800nmの赤外域の反射をしていたのではないか?

きっとそうやとよしろうは考えた。 


「不二子はんはな、人の目には映らへん」

「人が見とる光は、だいたい380から750ナノメートルや」

「その範囲では、不二子はんの身体は空気とおんなじ応答をしよる。
分極が揃うて、散乱も反射も起こさん」

「せやから、そこに立っとっても、光は素通りや。
居るのに、居らんように見える」

不二子が静かに微笑む。

「けどな、750ナノを越えたあたり――近赤外の領分になると、話が変わる」

「位相が、ほんのわずか、ずれるんや」

「そのずれが光を返す。
わしらの目には届かんけど、確かに反射は起こっとる」

鏡を見る。

「しかも分光特性の裾がな、可視の端にわずかにかかっとる」

「光の強さや角度次第では、
鏡の中にだけ、気配みたいな像がにじむことがある」

みつめる不二子。

「透明なんやない」

「境界におるだけや」

「ひとつの位相差――
それが、不二子はんの在りかたや」

よしろうはん

ん?

「おおきにな、原因つきとめてくれはって。

そやけどどうしたらええん?」 

うーん。。 


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