第8章 オートフォーカスの原理から 447話
不二子はんは言いました。
世界は、ひとつに見えてるけど、
ほんまは少しずつズレて重なっている。
カメラの位相差測距(いそうさそっきょ)みたいに、
光がちょっとズレると、像は二重になる。
でも――
ズレがあるから、
どっちに動けばいいか分かる。
ズレは間違いやなくて、道しるべ。
未来も、死後も、消えるんやない。
今とは位相が合っていないだけ。
そして、不二子はんは言うた。
「合わせるんやない。静かにするんどす。」
なぜなら――
ズレはとても小さいから。
心がざわついていると、
その微小な差は見えへん。
水面も、触れば波立つ。
放っておけば、自然に整う。
観測する窓(測距点)が静まったとき、
ぴたりと合う層が見えてくる。
せやけど、
完全に合焦せんでもええ。
少し揺れていても、
少しぼけていても、
ちゃんと見えている。
無理に合わせにいかんでええ。
世界はいつも、ほんの少しズレている。
そのズレごと、生きていけばええ。
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