第7章 ぶらっくぼっくす 四三一話
よしろうは気付いていた。不二子はんはここに居ると。 ぼく様が見えへんだけなんやな。 でも良かったわ。不二子はんがここに居てくれて。 涙ぐむ不二子はん。 「ごめんな。よしろうはん。うちばかり見えてもうて」 せめて会話でも出来たらええが。。よしろうは呟く。 せや! その手があったわ。それくらい閻魔様も許してくれるやろ。 懇願する不二子。 また不二子か。「今度はどうした」閻魔は言う。 へー 「せめてうちの声だけでもよしろうはんに聞こえるように出来ませんやろか」 うーむ。 「よかろう。そやけどこれが最後じゃ。見えるようにするには方法は他にもあるが、頼るでない。よいか不二子」 へー でも。。消えた閻魔。 あーどうしたものか。。途方に暮れた不二子。 「なぁ、よしろうはんどないしたもんやろか?案さん不二子の姿が見えへんらしいわ」 ?声がこだまする。 「不二子か?声が聞こえるで、どこに居る」 あ、聞こえてはる。 へー 「ここでっせ」 「おお、不二子の声や」 「わけあって姿を見せられんのや」 どんなわけ? 「まあええ、ここに座りな不二子はん」 椅子がひとりでに動く。 湯のみがひとりでに持ち上がる。 「嗚呼、ふじこはんやったんやな」 へー 「そうどす」 よしろうはんにもお茶を淹れ差し出す不二子。 「粗茶ではありまへん、美味しい和紅茶やで」 湯呑が宙を舞い、ことんとよしろうはんの前に置かれた。 「ありがとうな。不二子」 久しい会話はいつまでもつづく。 紅茶の湯気が、見えぬ誰かの頬をかすめた時。 ん? なにげに輪郭が見えるで?なんやろか。 よしろうはんの観測はどんなときでも計測していた。