第七章  床話 三八四話

夜。

よしろうと不二子は、布団に入った。

不二子が言う。

「よしろうはん」

「なんや」

「うち、覚えてないときの自分、覚えてます」

「......ほう」

「不思議な感じやった」

「どんなや」

「よしろうはんのこと、知らんはずやのに、知ってる感じがしてました」

よしろうは天井を見た。

「身体が覚えてたんやな」

「へー」

しばらく沈黙。

「よしろうはん?」

「なんや」

「うち、二人いたんどすえ」

「どういうことなんか...」

「覚えてる不二子と、覚えてない不二子」

「今は、両方います」

よしろうは不二子の方を向いた。

月明りの中で、不二子の輪郭が見える。

よしろうは不二子の手を握った。

拒絶していない。 

「不二子は不二子やで」

「......へー」

不二子の手が、よしろうの手を握り返した。

「おおきに」

外は雨なのか風なのか。

音が嵐の様だった。

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