第七章 あめめ 三八八話
妙に暖かい朝。外は雨。
アカガエルの産卵があるかと期待していたが、まだ鳴く気配はない。
ぼく様が未だ生かされているのは、どうも多くの生命を守っているからだそうだ――と、不二子が閻魔様から聞いたという。
また閻魔の話かと苦笑する。
ぼく様は他人様の評価を評価しない人間だった。良いも悪いも。
あー。そんなことより、ケミカルフリーの土壌を、どうやって広げるかだ。
「不二子はん、どうも甲佐の圃場が良くないらしいで」
「良くないとわ?」
昨日、出勤の途中、たばこを買いに普段行かないヒライの弁当屋で、懐かしい甲佐圃場の農家さんに声をかけられた。
「最近見ないが、どうした?」
院に行っていることやら、四の五の説明をする。
今年は甲佐の圃場が管理されておらず、草も切られていないらしい。困っている、という話だった。
状況は読めた。
それより心配なのは、ぼく様が五年を費やして作ったケミカルフリーの田んぼだ。
会社の存続さえ、頭をよぎる。
「そうなんですね。今度見に行ってきます。申し訳ございません」
ぼく様の行くところは栄え、去ると衰退する。
これは、よくあるパターンだった。
ぼく様と付き合うと〇×▽、別れると一様にその女性の運気が開眼する。
……これも同じ構図なのか?
ほんとの話だ。
ぼく様の不思議なオーラなのか。
「なに寝言いってますえ?」
不二子が言う。
「よしろうはんの寝言はリアルやでぇ。なんでも分かってまいますぇ」
へーへー。
分かったところで、最近、大したことはしてないわ。
そう、つぶやく。
「不二子はん、近いうち甲佐へ行ってくるわ。呼んでる気がする」
「へー。うちも行きたいでぇ」
「よっしゃ。一緒に行くで」
※ここ滅茶勘違いされるので補足、 〇×▽(よかったりわるかったりそうでもなかったりの意)
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