無農薬稲作メソッド
無農薬稲作の実践:種の多様性と直播きによる「変化させない」アプローチ1. はじめに本レポートでは、筆者が実践する無農薬稲作「環境設定後に変化させず、種の多様性と直播きで育てる」を紹介する。「農法」という言葉を避け、「実践」と称するこの方法は、化学農薬、化学肥料、堆肥を一切使用せず、初期環境設定後に田んぼの状態を変化させないで自然の生態系に委ねる。10年にわたり多品種の稲を交配して育種した種の多様性と、田植えを廃止して直播きを採用することで、病害虫への耐性、倒伏防止、水不足への適応力を強化する。オフシーズンは稲刈り後に水を入れて翌春まで湛水する。年に2回の畔の草刈り以外、中干しや追肥は行わない。本稿では、実践の概要、方法、利点、課題、意義をまとめた。2. 実践の概要本実践の核心は、種の多様性と直播きを基盤に、初期環境設定後に田んぼを変化させないで自然の力に委ねることである。10年間にわたり多品種の稲を交配し、病害虫に強い種を育種した。直播きにより稲の直根が深く発達し、倒伏や水不足への耐性を向上させた。播種前に土壌と水路を整備し、水を導入して適切な水位を設定する。生育期間中は、年に2回の畔の草刈り以外に介入せず、カエル、クモ、微生物が害虫や雑草を管理する。オフシーズンは稲刈り後に水を入れて翌春まで湛水し、土壌と生態系を保全する。化学農薬、化学肥料、堆肥を一切使用せず、種の力と生態系で稲を育成する。フィールドでの観察から生まれたこの実践は、種の多様性、直播き、湛水の利点を最大限に活かす。3. 実践方法実践の流れは以下の通りである。
- 初期環境設定(春季)
播種前に土壌を軽く整えて水路と畔を点検する。化学肥料や堆肥は使用せず、土壌の自然な力を信頼して水導入の準備を行う。 - 種の選定と直播き
10年間の育種で開発した多品種混合の稲を選び、病害虫耐性と直播き適性を重視する。田んぼに直接播種し、水を張って湛水状態を確立する。これにより雑草の発芽を抑制し、直根の発達を促す。 - 生育期間(夏季)
初期設定した環境を変化させないで維持する。自然の水位を保ち、種の多様性と生物多様性が害虫や雑草を抑制する。カエルやクモが害虫を捕食し、稲が雑草と競合する。直根により倒伏や水不足に耐える。年に1~2回の畔の草刈りで水路を確保する。 - 収穫(秋季)
成熟した稲を収穫する。無農薬・無肥料の米は安全で自然な風味を有する。稲わらは田んぼに戻して次季の土壌回復に活用する。 - オフシーズン(冬季~翌春)
稲刈り後に水を入れて翌春まで湛水する。これにより土壌の酸化を防ぎ、微生物や虫が土壌を回復する。必要に応じて2回目の畔の草刈りを行う。
- 病害虫耐性が向上する。種の多様性により、病気や害虫への耐性が強化され、単一品種のリスクが軽減される。
- 倒伏や水不足に耐える。直播きによる直根の発達により、強風や水不足に強い稲が育つ。
- 環境を保全する。化学物質や堆肥を使用せず、土壌や水系の汚染を防止する。冬季湛水により土壌の健康を維持する。
- 安全な米を生産する。無農薬・無肥料の米は、消費者に安全で自然な風味を提供する。
- 労働負担を軽減する。田植えを廃止し、草刈り2回のみで労働負担を最小限に抑える。
- 直播きの技術的難度がある。発芽率や初期生育に課題が生じる場合、均一な播種と初期水位管理を徹底する。
- 収量が変動する。天候や害虫の影響を受けやすいため、さらなる育種や多様性強化で対応する。
- 雑草管理が難しい。湛水で抑制するが、特定の雑草が繁茂する場合があるため、初期水位管理を厳格化する。
- 市場理解が不足する。多品種・直播き米の価値を伝えるため、直売所やSNSでの情報発信を強化する。
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