おてもやんのことば研究 208話

不二子、、、朝な朝な勉強しとるけど、やっぱ足元しらなあかんわな。ええこと気づいたなぁ。よろしいよろしい。お茶でも煎れますわ。おう。おおきに。嬉しいで。

 

おてもやん 

一番

原文
おてもやん あんたこの頃 嫁入りしたではないかいな嫁入りしたこつぁしたばってんご亭どんがぐじゃっぺだるけん まぁだ盃ゃせんだった村役 鳶役 肝入りどん あん人たちのおらすけんで後はどうなっと きゃあなろたい川端町つぁん きゃあめぐろぃ春日ぼうぶらどんたちゃ 尻ひっぴゃあで 花盛り花盛りぴーちくぱーちくひばりの子 げんぱくなすびのいがいがどん
 
現代語
おてもやん、あなた最近、結婚したんじゃないの?
結婚はしたけれど、うちの旦那がだらしないもんだから、まだ正式な盃(結婚の儀式)を交わしてないのよ。
村の役人や鳶役(世話役)、肝煎り(仲人)さんたちがいるから、あとはどうにかなるでしょう。
川端町の人たちも、春日ぼうぶら(春日町の若者)たちも、尻を引きずるようにして(夢中になって)花盛りよ。
花盛り、ぴーちくぱーちく(にぎやかに)、ひばりの子みたいに騒いでる。
げんぱくなすびのいがいがどん(若くて青いなすのような、未熟な男の子)たちもね。
 
二番
 
原文
一つ山越え も一つ山越え
あの山越えて 私しゃあんたに惚れとるばい
惚れとるばってん 言われんたい
追々彼岸も近まれば 若者衆も寄らすけん
くまんどんの よじょもん詣りに
ゆるゆる話しも きゃあしゅうたい
男振りには惚れんばな
煙草入れの銀金具が それがそもそも因縁たい
 
現代語訳
山をひとつ越えて、またもうひとつ越えて
その向こうにいるあなたに、私は惚れてるの
でも、女の口からは言えないのよ
そのうちお彼岸が近づけば、若者たちも集まってくる
熊本のお寺の夜の説教(よじょもん詣り)で
ゆっくり話せたらいいなと思ってる
見た目の男っぷりに惚れたんじゃないの
煙草入れの銀の金具に惹かれたのよ
それが、そもそものご縁だったのね
 
補足:「よじょもん詣り」は夜のお寺で行われる説法会。実際は男女の出会いの場でもありました。


三番

原文
一つ世の中 艱難辛苦の荒波越えて
男度胸で おいでなさい
くよくよしたとて しょうがない
何時か目も出る 花も咲く
移り気な浮き世のならいに
取り越し苦労は おやめなさい
悩みなんぞは こちゃ知らぬ
意地と張りの心が それが後生楽たい
 
現代語訳
この世の中は、苦労や困難の荒波ばかり
でも、男らしく度胸を持って進みなさい
くよくよ悩んでも仕方ない
いつか芽が出て、花も咲くから
浮き世は移り気なもの、先の心配はやめて
悩みなんて、私は知らないわ
意地と誇りを持つ心こそが
後の人生を楽にしてくれるのよ
 
締めの「アカチャカベッチャカ…」は囃子詞で、意味はなくリズムを取るためのものです。 
 

熊本を代表する民謡「おてもやん」にまつわる2人女性、イネとチモ

永田イネ(稲)生没年
1865年(慶応元年)2月24日生誕〜1938年(昭和13年)12月16日没(享年74才)
富永登茂(通称チモ)生没年
1855年(安政2年)12月5日生誕〜1935年(昭和10年)1月11日没(享年81才)