農業全書巻之二 五穀之類 稲 第一より
稲は五穀の中にて尊き物なり。太陰の精にて水を含んで基徳をさかんにすと云うふて、水によりて成長するゆへ、土地のよしあしをばさのみ云わずして、先水を專にする事也。稲は汚泉に宜しとて、上に流水あるか、又は泉池塘など有りて、水のかけ引き自由にて旱にも絶えず、又洪水などの災いもなく、殊に村里の濁水の流れ来る地を第一とするなり。さて土の色は黄色、又は黒土のねばり気少なく、青黒の小石少々交ざりばらつきて重く、深くして性強く、悪土少しもまじはらず、水をはづして麥を蒔き、木わた其外何にても畠物を作りても溼気の閃きもなく、日向までよくて實りよき高田を上々とは云う也。是より以下よき事の不足なる次第を似て、上中下段々の位をはかり定べし。
最近賢いなと思うAI Claude(クロード)で現代語訳
稲は五穀の中でも最も尊いものである。太陰(月)の精気を受けて水を含み、その基本的な徳を盛んにするといわれており、水によって成長するため、土地の良し悪しをそれほど重視せず、まず水を最重要とするものである。
稲は汚れた泉水にも適するとして、上流に流水があるか、または泉・池・堤などがあって、水の引き入れや排水が自由にでき、干ばつでも水が絶えることがなく、また洪水などの災害もなく、特に村里の濁った水が流れてくる土地を第一とするのである。
さて、土の色は黄色、または黒土で粘り気が少なく、青黒の小石が少々混じってばらついており、重く深くて性質が強く、悪い土が少しも混じらず、水を排して麦を蒔き、木綿その他何でも畑作物を作っても湿気が漂うこともなく、日当たりまで良くて実りの良い高田(水はけの良い田)を上々とするのである。これより以下、良い条件が不足する程度に応じて、上・中・下と段階的に等級を測り定めるべきである。
口語訳
稲は五穀の中でも最も大切な作物である。月の精気を受けて水を含み、その本来の力を発揮するといわれ、水によって育つため、土地の良し悪しよりもまず水の確保を最優先に考えるべきである。
稲は多少汚れた水でも育つので、上流に川があるか、泉や池などの水源があって、水の取り入れや排水が自在にでき、日照りでも水が途切れることなく、洪水の被害も受けない場所が良い。特に、村から流れてくる養分豊富な濁り水が得られる土地を最上とする。
土については、黄色か黒色で、粘り気が少なく、青黒い小石が適度に混じって重みがあり、深くて地力が強く、悪い土が混入していないものが良い。水を抜いて麦を植えたり、綿やその他の畑作物を作った時も、湿気がこもらず日当たりも良くて収穫の多い高い田んぼを最高級とする。
これを基準として、良い条件が欠けている度合いに応じて、上・中・下の等級を決めていくべきである。
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