坦坦詩 214話
たひらけし ―秋日和に寄す―
秋の日の おだやけき空に
色づく稲穂の 波しづかに揺れ
半月を経ば 刈り入れの時も近し
学びの料も かろうじて安らけく
南瓜の価は 米の三倍にあがりて
世のうつろひ 影ほのかに射す
人の心 操らるる世なれども
川の流れは いにしへと変はらず
虫の音のみ 秋の夜を満たしけり
寄り添ふ情けは いまなくとも
さりながら
かくて過ぐる日を さほどに嘆かず
【平らけし ―秋日和に寄す―】
秋の日の穏やかな空のもと、色づいた稲穂が静かな波のように揺れている。あと半月もすれば、刈り入れの時期も近づくだろう。
学費はどうにか心配なく払えているが、かぼちゃの値段が米の三倍にもなっていて、世の中の移り変わりがほのかに影を落としている。
人の心が操られるような世の中ではあるけれど、川の流れは昔と変わらず、虫の音だけが秋の夜を満たしている。
寄り添ってくれる人の情けは今はないけれども、それでも、こうして過ぎていく日々をそれほど嘆いてはいない。
「たひらけし(平らけし)」は「穏やか」という意味
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