なんも言わんと、よしろうはんは歩き続けてはる。 嫉妬を嫉妬と思わず、罵声を罵声と思わず、苦労を苦労と思わず。 目の前の障害を障害と思わず、ひたすら歩き続けるよしろうはん。 そんな姿を、不二子はんは素敵やと思っていた。 よしろうはんにとって、それだけが心の拠り所やったのは間違いない。 「きょうもお疲れさまどす(笑)」 「ん?」 「そうか? いつものことや。不二子はんの笑顔見ると、なんでもないように思えるで。ありがとさん」 「へー。やっぱりお疲れどすな」 「今朝は、よしろうはんのお好きなベリージュースと、生ハムとアボカド、レタスのサンドイッチや。いかがや?」 「おー。ありがとな。いただきます」 「ほー。これは旨いわ! よかったら、ダージリンの紅茶か、コナコーヒー淹れてくれんか?」 「へー。両方淹れましょ(笑)」