第11章 はひふへほ 526話
不二子はんは言うてはった。
「田んぼはな、見てる人間にしか、わからへんことがあるさかい」
朝のうちに一回り。根は1センチにも満たへんけど、ちゃんとそこにあるえ。種は、ちゃんと生きてはる。土は今日もまだ湿うてる。
よしろうはんが帰ってきて、イワシを焼く。魚醤に漬けといたで。ジュウ、いう音がして、ええ匂いがするえ。卵かけご飯と一緒に食べなはれ。
問題あらへん。ふじこはん。
へー
そりゃよかったで。
それだけで、ご飯がおいしいやろ。
安心して食べるよしろうはん。
見てきたから、食べられる。知らへん人間には、この味はわからんやろ——不二子はんは、そない思うてはった。
そんなよしろうはんのことが好きやった。うちはずっと見守ってきたさかい。
よしろうはんは相も変わらず、朝と夕には植物のお世話をしてはった。
不二子も安心してよしろうはんのお世話をしてはった。