第11章 水色の菖蒲 527話

その菖蒲は、母が植えたものだ。
色が薄く、艶やかではないなと、当時のよしろうはんは思っていた。

ある日、一廉の奥方様が言うた。

なんて美しい、あるようでない色ですね……と。

それ以来、よしろうはんはこの花を大切にしてきた。
よしろうはんの田んぼには、この菖蒲の花が一か所だけないが、他はすべて植えてある。
今朝は、生き物の多い田んぼへ新しく植え替えた。

うちも好きやさかい。この菖蒲のお花。
本田の菖蒲は見事やな。よしろうはん。

そやな。群生すると、これくらいがくどなくてええわ。

うふ。まるでうちみたいやな(笑)

そうかあ?
不二子はんは艶やかやで。
そやから、不二子はんばかり百人いたらぞっとする。

まあ。そないなもんけ?

そういうもんや。

田んぼに花植える人、うちは初めて見たわ。

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