第11章 養子のアルマーか? 540話

夜中の零時に目が覚めた。

よしろうはんは、しばらく天井を見ておった。

昨日うまくいかなんだことが、暗い中で少しずつ整理されていく。違う方法を考える。それでもあかんかったら、また別の道を探せばええ。待ってもええ。止まってもええ。それでもあかんかったら、離れたらええだけや。

留まることだけは、せん。

そこまで考えた頃には、だいたい眠れる。

朝になっても、霧は低いところに残っておった。

よしろうはんが縁側に腰かけておると、不二子はんが茶を持ってきた。

「飲んでおくれやす」

「おう」

しばらく、二人とも黙っていた。

鳥の声だけが、遠くで鳴いている。

よしろうはんが湯飲みを持ったまま言うた。

「マリアはん、綺麗やったな。腹の子の名前はなんだ?」

不二子はんは、朝露で曇ったガラスに指で書いた。アルマー、と。

「ほう、ええ名や。alma——魂、」

少しして、よしろうはんがまた言うた。

「養子にもらおか」

不二子はんは湯飲みを持ったまま、よしろうはんの顔を見た。

「……本気どすか」

「さあな」

不二子はんはまた霧の方を見た。

そして小さく息を吐いた。

「よしろうはんは、冗談みたいに言うて、ほんまにやってしまわはるさかい、困りますえ」

よしろうはんは苦笑い。

霧が草の上をゆっくり流れていく。

その白さは、どこから来てどこへ行くのか、誰にもわからへん。

しばらくして、よしろうはんが言うた。

「アルマーは、元気やろか」

不二子はんは霧を見たまま答えた。

「元気どすえ」

「なんでわかる」

不二子はんはよしろうはんに、あかんべー。


ただ、不二子はとても嬉しそうにも見えた。

霧がゆっくり薄れていく。

苗の先の丸いつゆが、朝日に光っていた。

 

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