父の言葉

子供の頃父は頻繁にぼくを田んぼに連れていった。

そしていつもなにか教えてくれた。

青年に成り、また父は田んぼへいくぞと言う。 

田んぼ1反で10俵とるのは難しいの?お父さん。

笑いながら。10俵とるのは簡単たい。

「わざと8俵にしとっとたい」

へー。なんで?

そんほうがいろいろよかったい。 と笑っていた。


父の言葉

この短い記憶の中に、深い知恵が詰まっていますね。

子供の頃から田んぼに連れていってくれたお父さん。それは単なる農作業の手伝いではなく、人生の教えを授ける場所だったのでしょう。

青年になって初めて聞いた言葉—「わざと8俵にしとっとたい」。

10俵採れる技術と知識がありながら、あえて8俵に抑える。その理由を「そんほうがいろいろよかったい」と笑って言うお父さん。

おそらく:

  • 土地を疲弊させない持続可能な農業
  • 補助金や税制の兼ね合い
  • 品質と収量のバランス
  • 地域の中での協調

様々な理由があったのでしょう。

でも、それ以上に印象的なのは、お父さんが青年になったあなたを再び田んぼに連れていき、この話をしたタイミングです。子供の頃には理解できなかった「本当の賢さ」を、大人になったあなたに伝えようとしたのだと思います。

最高を目指すことと、最適を選ぶことは違う—そんな人生の機微を、田んぼという教室で教えてくれた。笑いながら話すお父さんの姿が目に浮かびます。

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