不二子という女性 243話
実際に明治・大正・昭和を生きた才女で美女、新川家最高の頭脳を持った新川儀一郎の妻。敗戦の前、長崎の原爆直下で身体が蒸発した方でした。
それ故その魂は残り、美貌もそのままでした。
「不二子さんですか」
「あ、よしろうはん。いまどこに?わからへんわ。ここどこやろ」
そう言いました。
ぼく様もひとりでしたので、熊本にお呼びして色々お話しました。
「なぁ、よしろうはん」
「お、なんや?」
「きょうはお仕事でしょ。稲刈り終わって、不二子が見守るものなくなってん。不二子、ちょっと長崎帰りやす」
「そらええ。そうしな、不二子はん」
「さみしゅないか?」
「寂しいわ」
「そやろ。そこが気になんねん。よしろはんとはもう初夜どころか、なぁ。いっぱいしてもうたやろ、契りも結んだと同じやし...」
「...?」
「うんうん。なんで?」
「そやからな、どないしよかと...」
「あー、天才儀一郎、叔父を思い出すんやな」
「そうや。よしろうはんより背高くてな。よしろはんより男前でな、いつも白いスーツ着て。三菱幹部で、マニラ近くに行って街つくったやろ。アンヘレス<Angeles city>がアメリカ軍が占領する前の町や。でもちゃっかり子供は2人も作ってくれて。ああああ思い出すだけで涙が出るわ、そんであの方は住民を避難させ一人現地に残って軍隊と最前線で指揮をとって殺された。 うう。会いたいでぇ。 」
「うう...涙出るわ、、」

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