第8章 道標 その壱 467話

不二子の語り。 

時間いうもんは、止まらへんのやて。

うちにはよう分からんけど、物理いうもんも、絶えず変わり続けてるらしい。
えらい学者さんは「時間なんてない」て言わはるけど、動いてるもんがあるんやさかい、ないわけあらへんやろ——て思う。
そんなん、当たり前やないの。

地球は太陽の周りを秒速30kmで回って、
その太陽系ごと銀河の中心を秒速220kmで回って、
銀河はまた、グレートアトラクターいうところへ向かって、秒速600kmで引っ張られてる。

その全部が、宇宙マイクロ波背景放射いうのを基準にして、秒速552kmで動いてる。
地球かて、自分で回ってる。秒速460m。

つまり——
止まってるもんなんて、どこにもあらへんのや。

しし座の方向へ、秒速370km。
それが、うちらの速さやて。

そやのに。

そんな速さで飛んでいきながら、
うちらは今日もご飯炊いて、洗濯して、
誰かのことを思うてる。

宇宙はどこにも止まってへんのに、
うちらの暮らしは、なんでこんなに静かなんやろ。

……なんや、不思議やね。

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