第8章 道標 その参 469話

そやから思うねん。

そう言うて、よしろうはんは田んぼに立っていた。
じっと見つめる不二子はんは、静かに語りかけた。

「あんさん、今なに見てはるんすか?」

「おお、不二子はんか。変化を見てる」

「そうやろな。そんな気ぃしましたえ」

「な、みんな動いてるやろ。次から次へと生き物は生まれて、水も動いてるやろ。この土地だって、地球だってな」

「うふふ。うち、知ってるで(笑)」

「やろうな。不二子はんは、なんでも知っとる」

「で、あんさん、今日はなにしはるん?」

「そやな……もう、なるべくしょうもない引っかかりに当たらんように、気ぃつけて生きようかと思てる」

「……引っかかり?」

「そうや。見える災いは、すり抜けよう思てる」

「あんさん、どないしたん(笑)」

「そうなんや。せやけど、ぼく様の時間も、そう長くはないんよ。しょうもない引っかかりに当たって、立ち止まるのはごめんやで。……やるべきことを先にやってまう」

「うふふ。小学生のころの話と、おんなじやな。よしろうはん」

ん?

「なんやったっけ」

「宿題の問いを考えてるとき、後ろから“教えてくれ”て友達に言われたんやろ?
せやけど、あんさんはまだ考えてたさかい、“ごめん、答え分かってから教えるわ”て言うたんや」

「ああ、あれか。そうや。
いっしょに考えてもええけど、遅なる。
ひとりで答え探したほうが早い。
ちゃんと答え分かったら、教えたで」

へー 

「うふふ。今も昔も、そのままやね(笑)」

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