おかず
ぼく様は、坂本商店の敦子さんと話すのが好きだ。
「ねえ、今晩はなにつくるの?」
にこにこ出迎える敦子さん。
さすがは元デパートのエレベーターガールだ。
「今日はね、手羽元をさっと湯がいて取り出してね。
お酢1、醤油1、砂糖は好みで。
ゆで卵と一緒に煮込むの。15分くらいかな。
薬味は生姜と大蒜。」
「へえ、おいしそう。じゃ、やってみよ。」
——1時間後。
「どう、味は?」
「おいしいね。あっさりしてる。」
「そうなんだ。水、入れちゃった。大蒜なかったから、ごま油入れたよ。」
「うーん、それでも美味しい。」
「ちょっと待って。」
「?」
「ほら、大蒜あげる。」
「いいんすか?」
敦子さんは、笑うだけだ。やさしい。
「はい、どうぞ。」
「なんでもできるのね。」
「ああ、ありがとうございます。もう少し煮込むね。」
「そうね。」
——少しして。
「おいしかったわよ。」
照れ笑い。
「そうなんだよね。
だからセブンイレブンに寄らずに、ぼく様はここに来るんだ。」