田んぼで 庭で 部屋で アトリエで
休みの日は、環境を変えながら、一日中ギターの練習をしている。 やはり田んぼは気持ちがいいが、音そのものはアトリエや庭のほうが良い。部屋はどうにもぱっとしない。 朝と昼は田んぼへ行き、夕方は落ち着いて庭へ戻る。手製の長椅子に腰掛け、ゆっくり弾くのが日課だ。 庭の椅子は、固い柿の木で組んだ構造に、表面は薄板を張ったもの。座り心地がよいだけでなく、スピーカーの振動にも共鳴して、まるで楽器のようでもある。 門出橋の右手にあった桜が伐採されていた。太い胴の部分をいただいた。 父が植えた桜だと話すと、気さくに譲ってくれた。 ふと、ギターのルシアーの映像を見た記憶を思い出す。著名なギタリストが、有名なルシアーに製作を依頼するという動画だった。 スペインの田舎に工房を構える、世界的に知られたルシアー。彼はこう言って、一本の木を持ってきた。 「この板で、君のギターを作るよ」 それは、厚さ8センチほどの、古びたまな板のような木だった。埃をかぶったその板で、ギターを作るという。 その光景が、今の桜と重なる。 よく見ると、不思議な木目をしている。年輪が黒い。 五年以上は乾燥させたい。 チェーンソーで表皮を落とした。これで乾燥は進むはずだ。刃を新品に替えたときに、板取りをしようと思う。 いつか旅に出るとき、この木を持っていき、ルシアーにギターとして仕立ててもらう。その日まで、しっかり乾燥させて保存したい。 そんなことを考えていた昼間。 のんきなものだ。 でも、夢があっていい。