第13章 憎しみの影 603話
アルマーの心に芽生えた憎しみの影。
善良な娘であるアルマーは、その感情が自分の中に生まれたこと自体に深く葛藤していた。
私は何も知らない。
ただ、母と暮らしたことがない。
その頃の記憶もない。
それでも、その人が私を産んでくれた母であることだけは知っていた。
優しい笑顔。
優しい言葉。
静かに微笑む母。
なぜ私は育てられなかったのか。
その理由も、やがて母の口から聞いた。
アルマーは、心が乱れるたび、幼い頃から好きだった水源へ足を運んだ。
澄み切った泉を眺めていると、空白だった現実が、一つひとつ謎を解くように心へ流れ込んでくる。
「私は……深い深淵の縁を、たださまよっていただけだったのですね。」
そう静かにつぶやいた。
聡明なアルマーは、それ以来、心に疑問が生まれるたびに実の母へ相談するようになった。
空白は、一つずつ言葉によって埋められていく。
そして、心に差していた黒い影もまた、少しずつ輪郭を失い、やがて静かに消えていった。
よしろうはんも不二子はんも何も聞かんとただ笑顔で迎えた。