春の草を刈らないことが、管理である

春になると、カラスノエンドウとクローバーが田んぼの周りを覆う。
普通は刈る。でも僕は、できるかぎり刈らないでいる。
草を刈ると、イネ科雑草がすぐに生えてくる。地際に再生点があるから、刈るたびに強くなる。刈れば刈るほど、草刈りが増える。稲の病害虫の住処も、イネ科の中にある。刈ることで、問題が深くなっていく。
マメ科は逆だ。刈り込みに弱いから、放っておけばだんだん優勢になる。春の圃場周縁はカラスノエンドウの赤紫とクローバーの白で覆われる。美しい。その花にミツバチが来る。テントウムシが来る。防虫と、花の美しさが、同じ場所に同時にある。
そしてカラスノエンドウもクローバーも、夏には自然に枯れる。刈らなくても、消える。枯れた株はそのまま土に還って、根粒菌が固定した窒素を田んぼに返す。
種が落ちることを気にするかもしれないけど、冬季湛水がそれを防ぐ。水の下では発芽できない。夏場には元々付かない種だ。二重に、サイクルが断たれている。
あとは、グランドカバー的な草たちが地面を覆い続けている。草が絶えず地面を覆っていれば、イネ科が入り込む隙がない。
刈らないことが、管理だと思っている。これは理屈が先にあったわけじゃない。田んぼの畔を観測して、そうなった。

 

後記 

以下は、上に書いたことの科学的な裏づけを簡単にまとめたものだ。

イネ科雑草が刈り込みに強い理由 イネ科植物の再生点(メリステム)は地際にある。葉や茎を刈られても、再生点が残るため、すぐに再び伸長する。反復刈り込みはむしろイネ科の競争優位を高める。

マメ科植物の窒素固定 カラスノエンドウやクローバーの根には根粒菌が共生しており、大気中の窒素を固定して土壌に供給する。枯死後に分解されることで、その窒素が緩やかに圃場に還元される。化学肥料に頼らない土づくりの一端を、雑草が担っている。

冬季湛水による種子抑制 種子の発芽には酸素が必要だ(好気的条件)。圃場が冬季に湛水されていると、落下した種子は嫌気的環境に置かれ、発芽が抑制される。カラスノエンドウ・クローバーは冬〜春の一年生または短命多年生であり、夏には結実しない。この二つの条件が重なることで、種の蓄積サイクルが断たれる。

グランドカバーによる競争的排除 植生が地表を絶えず覆っている状態では、光・養分・空間の三つが先占されており、新たな雑草種が侵入するための余地が生まれにくい。これを競争的排除という。刈り込みによって生じる裸地は、この防御を一時的に解除する。


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