第12章 帰ってからの不二子はん 617話
その夜、不二子はんは縁側に出て、月を眺めておりました。
よしろうはんも隣に座っております。
「アンヘレスでも、よう月を見てました」
「そうか」
「遠いところにおっても、月は月や思うて」
不二子はんは、しばらく黙って月を見ておりました。
よしろうはんが言いました。
「同じ太陽で、同じ月やからな」
不二子はんは、よしろうはんの横顔を見ました。
……へー
それだけ言うて、また月を見上げました。
遠く離れていた時間も、場所も、今はもう関係ありませんでした。
アンヘレスで見た月も、
ここで見る月も、
同じ月。
遠く離れた場所から見上げた太陽も、
ここで浴びる太陽も、
同じ太陽。
その当たり前のことが、今夜はなぜか、とても新しいことのように思えました。
不二子はんは、少し笑いました。
「お月さん。今夜はまんまるやわ(笑)」
阿蘇の夜空に、月が静かに浮かんでおりました。