第二巻 第六章 ずっと探しているーー遅いな 三七一話

 

ずっと探している。

本気になれる心の被写体が、いない。
被写界深度が、内側をえぐるほど深い――
そういう ひと

多分もう、脳内にはある。
見えている。
現実だけが、まだ追いついてこない。

いつ出逢うのか。
……遅い。

「また同じこと考えてはる」

不二子が、そう言う。
責めるでもなく、慰めるでもない声で。

「目、合わさんと見てはるな」

そうかもしれない。

此処の時間は、中心から外れている。
振動地から遠い、微かな揺れ。
さざなみになって、空気に溶けていく。

入り江の奥。
川沿い。

光も風も、ただ流れる。
何も変わらない。

「変わらへんのやのうて」

不二子が、川を見たまま言う。

「変わる必要が、まだ無いだけどす」

その言い方が、
少しだけ、胸に残る。

「もう、見えてはるんやろ」

不二子は、こちらを見ない。

「せやのに、
“出逢い”いう形になるまで、
待ってはる」

そうや。
たぶん。

不二子は、それ以上言わない。
それが、余計に正確やった。

焦点は、まだ動かない。
被写体が現れるまで、
この時間も、この場所も、
静止したままや。

寧ろ 変る事を拒絶する。 

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