昭和のままの街を歩く

見知らぬ街を歩く。
昭和の佇まい。
閑散とでもなく賑やかでもないが、街はまだ生きている。 

穏やかで心地いい感覚は久しぶりだ。
なんだかいつもあくせく働いてきたように思えた。
 
遠くにラーメン屋が開店しているのが見える。
そこだけ蒸気が見えてなんだか活気を感じる。
覗くと数名の客人が居た。 
 
早いけど美味しそうだからと店の暖簾をくぐり引き戸を開ける。
やはり懐かしい感触。
空気が張り詰めていない。
ゆるさではなく昭和の平常な様。
 
店の店員は穏やかな笑顔で接してくれて、言葉には無駄がない。
かといってなんだろうか、間合いの時間がゆっくりしている。

特製ラーメンを注文。
店主がハイヨとにっこり。
味はここのはうまかばいと、よそから来た客と分かったのだろう、隣のカウンターの大男がそう教えてくれた。
本当に美味しかった。
スープを最後まで飲めるラーメン屋さんはそうはない。

大男は、もう焼酎を飲んでいる。
別に昭和時代は普通であった。
自分は山師だという。
クマ蜂(オオスズメバチ)を捕らんとミツバチがやられる。
今年は二箱やられたばい。
今捕るなら親バチだらけかもな。
蜂ん子を食べたかな。

いい話だ。
山の民の暮らしを聞ける。 
そう思い昔、椎葉や諸塚の取材をしていた時を思い出していた。
 
暫く和やかな人情の情景や流れる会話に私も身をゆだねていた。
肯定するわけでもなく否定するわけでもなく。 

海に行くはずが山に行ってしまった。
そんな或る日。


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